神仏絵師のよろづ話:第一話「千本の手が無い?千手観音様の謎?」

はじめまして。神仏絵師の昌克です。観音様、明王様などの日本の神仏や、天使様を描いております。ここでは、私が絵を描きながら学んだり、感じたこと、神仏の姿に隠されたメッセージなどを書いて参ります。
第一話は、観音様の中でも最も人気の高い「千手観音様」のお話です。
みなさんもどこかで千手観音様の仏像や絵を見たことがあると思うんですが、多くの方が思ったであろう、その時の疑問。

「千手なのに、手が千本ない……」

現実問題として、仏像や仏画にするには、この千本の手は、かなりのハードルになったと思われます。でも、実際につくられたり描かれたりすることはありました。その苦労には、頭が下がりますね。

じゃあどうやって、千本の手をつくらず(描かず)に「千手」を表現したのか。
多くの千手観音様の場合、まず、胸の前で合掌をしている二本の手。さらに左右二十本ずつで、合計四十本の手があります。これが、千手観音様の典型的なパターンです。
そして、この四十本がポイントなのです。この四十本の一本が二十五の世界を救うとされています。つまり「25×40=1,000」となるのです。納得できました?(笑)

幸い、私はパソコンで絵を描いております。先達の皆様よりも苦労少なく、「千本手の千手観音様」を描くことができました。

ところが、この千手観音様には、更に別なお姿がございます。それが「十一面千手千眼観音」です。
千の手はもちろん、その手のすべてに眼がついておられるのです。しかも、十一のお顔がございます。まさに全ての人をもれることなく救済しようとする観音様の大慈悲を表していると言えるのではないでしょうか。

私がこの「千手観音様」を描いていたとき、やはり千本の手をいかに表現するかということに腐心しました。どうしても、千本の手を描かなければならなかったのです。それが「千手観音様」の大前提であると感じて疑いませんでした。一説には、千本の手は、観音様のオーラを表現したのでは?と言われていますが、結果として私の描いた千手観音様は、まさに千本の手が、オーラのように観音様を取り巻いております。

 

だからといって、千本の手がない「千手観音様」は、間違いだというのではありません。千本の手があろうと無かろうと、千手観音様の大慈悲には変わりありません。
もし、どこかの「千手観音様」にお参りする機会があったら、今回のお話を思い出してくださいね。
その時代、時代で、たくさんの仏師や、仏画師が、精魂込めて作ってきた千手観音様を是非、隅から隅まで、じっくりご覧ください。実際、四十本の手でも大変な苦労ですよ。

 

【速報!】
11/4(日)「タネヲマクヒトタチ」(東京)のイベントで、この千手観音様を使った巾90cmのタペストリーを展示します。シャメもオッケー!どうぞ記念写真を撮ってください。
イベントの詳細は、こちら!
http://www1.parkcity.ne.jp/am/tanewomakuhitotachi/