高齢者が抱える「性」と「死」をとらえた話題作『みんなで一緒に暮らしたら』

若い頃からの友人5人で、75歳から共同生活を始めた主人公ジャンヌ達。
本作のテーマの二本柱のうち、一つは老人の性。「目を逸らさないで。老人にだって性欲はあるのよ。天使じゃないんだから」。ジャンヌのこの言葉が印象的な本作は、老人達の性が全編を通じて流れる河のように描かれる。

「自分にまだ性的魅力を感じるか?」と問い掛ける老人。
自分が男として使い物にならなくなったと焦る様子。生の残り時間の短さを、性で感じて足掻く様子は、人によっては「いい歳をして、もう諦めなさい」と一笑に付されるものかもしれない。

しかし彼らの真摯な訴えと、ナチュラルに性を楽しもうとする様子は、観る側の固定観念を少し和らげてくれる。本当は死ぬ間際までこれが自然なのかもしれない、と。

そして、もう一つの柱になっているのが「理想的な人生のエンディング」。死を覚悟しているある登場人物が、自分の人生のエンディングに向けて、お葬式や自分の死後について考え、準備して行く。それはラストに明かされる見事な回答だ。見る人誰もが「こんなのもいいな」と感じるかもしれない、素敵なシーンなので是非観てほしい。「死」は常に悲劇的に語られがちなものだったが、もっと楽しく、素敵なものとして終えたいという風潮が昨今は見られる。
その理想形のような場面である。

それにしても、段々記憶が混濁してきている様子など、物悲しいところもあるものの、世代が違う家族に看取られるのではなく友人同士で看取るということは、介護役にさえ恵まれれば、案外いいものなのかな、と目が開くような気持ちにさせられる。お互いに対する理解が深く、更にどこか子供に還ったような、無邪気さを明るく感じられる場面もある。

決して暗いばかりではない、でも無理に明るくするでもない、観る人によって多様な見方ができるで味わい深い作品だ。

 

11月3日(土)、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
配給:セテラ・インターナショナル/スターサンズ
コピーライト:© LES PRODUCTIONS CINEMATOGRAPHIQUES DE LA BUTTE MONTMARTRE / ROMMEL FILM / MANNY FILMS / STUDIO 37 / HOME RUN PICTURES
http://www.cetera.co.jp/minna/

監督:ステファン・ロブラン
撮影:ドミニク・コラン
音楽:ジャン=フィリップ・ヴェルダン
編集:パトリック・ヴィルフェルト
出演:ジェーン・フォンダ『帰郷』『ジュリア』
ジェラルディン・チャップリン『トーク・トゥー・ハー』『チャーリー』
ダニエル・ブリュール『グッバイ・レーニン!』『ラヴェンダーの咲く庭で』
ピエール・リシャール『幸せはシャンソニア劇場から』
クロード・リッシュ『ブッシュ・ド・ノエル』
ギイ・ブドス『ミーシャ/ホロコーストと白い狼』
原題:Et si on vivait tous ensemble?
2011年/フランス・ドイツ/仏語/96分/ヴィスタ/ドルビーデジタル
字幕:古田由紀子