中村うさぎさんコラム「どうせ一度の人生・・・なのか?」 part.16 信じる? 信じない? HONKOWA作家、伊藤三巳華さんの幽霊談①

幼い頃から霊を見続けてきた伊藤三巳華さんと、今まで霊を一回も見たことがない中村うさぎさん。果たしてうさぎさんは、霊を信じるのか? また、霊に対してどのような概念を置くのか?

私は霊を視たことがないので他人が霊を視た話を聞いてもいまいちピンと来ないのであるが、だからといってまったく信じていないわけでもない。
「まぁ、いるかもしれないし、いないかもしれないねぇ」というきわめて煮え切らないスタンスであり、したがって人が霊を視た話を聞くのは結構好きだ。
だって自分が体験したことないからワクワクするじゃん?

そんなわけで今回、漫画家の伊藤三巳華さんとお会いしてお喋りさせていただいた。

伊藤三巳華さんは「HONKOWA-ほんとにあった怖い話-」などに連載してらっしゃる方で、幼い頃から霊が視える能力を持っていたという方。
「HONKOWA」では「スピ☆散歩」というパワースポット巡りの漫画を描いてらして、その作品中でも三巳華さんがいろんなモノを視ていて面白いので、ぜひご一読ください。

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さてさて、そんな「自分は視たことないけど、視た人の話は大好き」な私としては、やはり一番に知りたいのが「霊ってどんなふうに視えるの?」ということ。

普通の人と変わらない姿で見えるという話も聞くけど、それじゃ交差点で霊とすれ違っても気づかないじゃん。
まぁ、「リング」の貞子みたいに髪を顔の前まで垂らしててくれたら、さすがの私でも「むむっ? この人はいったい……」と違和感抱くけどさ。

この疑問をぶつけたところ、三巳華さんは、
「そうですねぇ。事故のあった踏切で私が視た霊は上半身がなかったので、霊だってことがわかりましたけど」

なんと! それは確かに人間じゃない! そんだけわかりやすく出て来てくれたら、さすがの私も「これは霊だ!」と納得するんだけどな。

「あとは視界の隅にぼんやり視えたりとか……子どもの頃は『これは夢なんだわ』って自分に言い聞かせてました」

伊藤三巳華さん

あ、それはわかる。
こんな霊能力皆無の私でも、入眠時とか起きる直前とか、つまり寝てるんだか目覚めてるんだか曖昧な状態の時に、なんか変な物を視た(ような気がした)経験はある。
で、それらはすべて私の中で「夢だった」ことになっている。

一度なんか、肩に誰が触れたような感触があってハッと目を醒ました瞬間、さっと身を起こす(つまりさっきまでは私のほうに身を屈めていた)人影が視えた気がした。
でも、その人の姿があまりにも変だったし、すぐに消えてしまったので、「やっぱ夢だよな」と思った次第である。

どんなふうに変だったかというと、なんか顔が包帯みたいなもので覆われていて、さっと身を起こした際に棺の中のミイラみたいに胸の前で腕をクロスさせたので、私は「ああ、ミイラなのね」などと普通に思い(←思うなよ!)、そして次の瞬間にはっきり目覚めてキョロキョロしたけどもういなかった、と。

ね、どう考えても夢以外の何ものでもないでしょ?

百歩譲ってあれが霊の類だったとしても、なんでエジプトのミイラが私のベッドにやってきたのか意味不明。

でもね、全然怖くはなかったんだよ。
姿こそミイラっぽかったけど、頭の後ろが金色に光ってて、なんか仏像みたいにも見えたし。
あ、金色に光ってたのは後光じゃなくて髪飾りだったのかな。
もう憶えてないや。
でもまぁ、身体に触れた感じもすごく優しくて、とても遠慮がちな印象だったので、感じ悪くはなかったです。

あ、「金色」で思い出したよ。
もっと幼い頃、部屋の隅に巨大な金色の何かが立っていて、すっごく怖かったの憶えてる。
「何か」って言ったのは、それが明らかに人の姿ではなく、二本足で立ってはいるんだが頭部はキツネみたいだったの。
長い耳が二本あってね。
そうか、私は当時から動物霊に……なんてね、あはは!

で、私は「それ」が怖くてワンワン泣いてるんだけど、両親には見えないみたいで、母親が私を抱いて「具合悪いの?」って訊いてるの。
そんでもって父親が「うるさい!」とか怒ってるのね。
そんな幼い日の記憶はありますが、あれも夢だったんだと考えてます、今は。

中村うさぎさん

三巳華さんは子どもの頃からいろんな霊が視えたんだけど、それを口にして「変な子」と思われたくなかったので、「夢だ」と信じ込もうとしていたそうだ。

その気持ちは今でもあるみたいで、自分の視た霊の話をしながら「あ! なんか私、変な話してますよね!」と何度か言い、隣の編集者さんから「ていうか、変な話をするためにここに来てるんですから!」とツッコまれてたのが面白かった。
いい人だね、三巳華さん。
霊能力を振りかざして偉そうなこと言う人じゃなくて本当によかった。

こうして三巳華さんの幽霊談は次回も続きます!
乞うご期待!

伊藤三巳華さん 情報

“踏切”の霊の話が収録されている書籍『怪眼』:
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=12797

『スピ☆散歩 ぶらりパワスポ霊感旅』①~④:
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=14083

 

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