寝不足での運転は飲酒運転と同じ!?

実は世界ではこれまでに疲労による睡眠不足が原因で招いた大惨事がいくつかあります。 有名なところでは、1997年のアメリカ・スリーマイル島原発事故です。

先ごろの8月16日、池袋で医師の運転する車が男女5人をはねた事故がありました。アルコールも薬物も検出されず、居眠り運転だろうと言われていましたが、どうも癲癇(てんかん)だったのではないかと疑われているようです。

こういう自動車事故があるとぼくが思い出すのは、2012年に起きた関越道・陸援隊のバス事故です。記憶にある人も多いですよね。7名が死亡、39名が重軽傷という本当に痛ましい事故でした。事故の直接の原因はバスの運転手は睡眠時無呼吸症候群であり、運転中に眠ってしまっていたということでした。

2つの事故に共通していることは、
「運転者が明瞭な意識のある状態でなかったこと」
「人を死に至らしめる大きな事故になったこと」
ということです。

 

居眠りがもたらす大惨事!

実は世界ではこれまでに疲労による睡眠不足が原因で招いた大惨事がいくつかあります。

有名なところでは、1997年のアメリカ・スリーマイル島原発事故です。夜中にアクシデントが発生し、オペレーターの人為的ミスが重なった結果、メルトダウンを招いたとされています。

他には1989年にアラスカ沖で起きたエクソン・バルディーズ号原油流出座礁事故も有名です。操舵を任されていた航海士が極度の睡眠不足で、警報に気がつかなかったことが原因とされています。こちらもやはり夜中に事故が発生しています。

この事故はぼくも記憶にあって、真っ黒な重油まみれになった鳥がテレビに映し出されたのを覚えています。

大惨事とまではいかないですが、2年前にドイツの銀行員が、パソコンでの送金作業中に62.4ユーロ(約8,000円)の送金額のはずが、キーボードに指を置いたまま一瞬居眠りをしてしまい、誤って222,222,222.22ユーロ(約287億円)と入力してしまったというミスがありました。

送金前にミスが判明し送金処理はされなかったそうですが、監督責任のある上司の女性が解雇処分を受け、裁判沙汰にまでなりました。

はじめに挙げた自動車事故も含め、いずれにも共通して言えることは、機械を扱う人間が正常な意識・思考ができなくなっており、その結果機械を制御できなくなったということですね。

 

寝不足運転=飲酒運転!?

1997年に「nature」に発表された研究では、人が十分に覚醒して作業を行うことが可能なのは起床後12〜13時間が限界であり、起床後15時間以上では酒気帯び運転と同じ程度の作業能率になり、起床後17時間を過ぎると酒酔い運転と同じ作業能率まで低下することが示されています。

ちなみに、酒酔い運転は違反点数35点、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金という、大変に重い罪です。

日本では飲酒運転には厳しい目を持って罰則を設定していますが、居眠り運転に対してはどうでしょうか?居眠り運転とまではいかなくても、運転中、こくっ、こくっ、と意識が一瞬なくなってヒヤッとしたことのある方は多いのではないでしょうか?

正常な意識状態を維持できていないという点においては飲酒運転も寝不足運転も同じですが、寝不足運転には罰則はないので自主的に規制をかけるしかありません。

 

Mid adult man yawning while driving a car

 

居眠り運転を予防するために

先ごろニュース番組で、ドライブリズムマスター」という、運転中の疲労度や眠気を検知して警告する運転補助機器が取り上げられていました。導入しているある運送会社では、警告を発すると最寄りのサービスエリアなどに入り、休憩を取って体操をするように義務付けられています。そして、ちゃんと休憩・体操をとっているかなどをモニターで監視するという仕組みを取っていました。

しかしなにはともあれ大事なのは、自分で覚醒状態をコントロールすることです。ぼくは仕事で地方まで運転することがあるので、その時にやっていることは、

1.長距離運転をする前日は十分な睡眠をとる
2.眠気がきたらサービスエリアなどに入って15分の仮眠をとる
3.温かくなると眠くなるので窓を開けるなどして車内温度を下げる
4.好きな音楽やラジオなどを音量高めで聴く
5.コーヒーやガムなどを用意する

などでしょうか。とくに眠気を吹き飛ばすには2の短時間仮眠は効果絶大です。ぜひこれはやっていただきたい。仮眠分も考慮してぼくは時間に余裕を持って出発しています。

 

日本は世界1、2を争う睡眠不足の国です。

NHK文化放送研究所の5年ごとの国民生活時間調査では、戦後日本人の平均睡眠は年々減り続けています。夫婦共働きが増え、小さな子供もスマホを持つ時代になり、残念ながらこのままだと日本人の睡眠事情はますます悪くなっていくとぼくは予想しています。

それにともなって「ドライブリズムマスター」のように、意識レベルが低くなっている(睡眠不足に限らず、飲酒・癲癇なども含め)ことを検知・警告する運転補助機器を車や電車、船などに取り付けることが今後デフォルトになっていくかもしれないですね。

ぼくはセミナーで睡眠がもたらす心身への影響、睡眠不足がもたらす美容への悪影響というお話をしていますが、睡眠不足はそもそも大変な惨事を招く可能性のある恐いものだという認識をまずは持っていただきたいなあと思っています。

 

前回の記事:睡眠問題国;日本~睡眠教育を必須に!