地上411メートル直径2.2センチのワイヤーを渡る
神に愛された男の崇高な偉業に狂喜する
別に高所恐怖症じゃないと思うんだけど、祖谷のかづら橋を渡った時は自分でも驚くほど腰が引けて、渡るのにえらく勇気がいった。たぶん、下を見ちゃったらダメなんだと思う。
で、この映画! いや、下はものすごい一級のCGで精巧に作られてるんですよ!! しかも私は本作をIMAX3Dの劇場で観たもんだから、もう死にそうな気分になりました!!
手に汗握るは、足は踏ん張って痺れるは、肩は凝るは、頭まで痛くなってしまったほど。見終わってグッタリ。でも緩急で気持ちは妙にスッキリ! グッタリの体も心地良い疲れに変わっているのを感じた。
極度の緊張は生きる気力がでるし、たまには必要なのを実感した。だからホラーやお化け屋敷って人気があるのね。
さて、本作は今は無きワールド・トレード・センターの間にワイヤーを繋ぎ、地上411メートルの高さ(地上110階)を42.67メートル歩行した、という実在のパフォーマー、フィリップ・プティの偉業を映画化したもの。
映画はプティの幼少時から描き、彼が1974年に出来た当時世界最高層だったツインタワービルに挑むまでをテンポ良く、また御伽噺のように楽しく、また細部はリアルに活写する。
主演のジョセフ・ゴードン=レヴィットはプティに特訓を受け、もちろんワイヤー・ウォークは出来るようになった。ただし、2メートルの高さに張った9メートルの長さだけど。それだけでもすごい!!
で、あとはプロのパフォーマーと顔を入れ替えて合成処理したり、ジョセフが歩くワイヤーを幅15センチの鉄骨にして後でデジタル処理したりして、脅威のワイヤー・パフォーマンスを魅せてくれる。素晴らしい! さすが、CG、VFXならまかせとけっ!のロバート・ゼメキス監督だ。
もうやめてくれ! 何度も叫びそうになる
恐るべし映像にクラクラっしっぱなし!
やはり、見所はその前代未聞のトレード・センターの空中歩行だろう。
綿密な計画の上、ゲリラ的に決行されるわけだが、足を怪我したり、寝不足だったり、仲間割れがあったりと最悪の状態での当日。もうこちらもハラハラしどおし。下を見れば完璧な70年代のニューヨークの街。怖ろしいほどの再現で、ううっ心臓に悪いのなんの。
そして、渡ったはいいが、なんと、警察がやってきて「早く戻れ!」とか「やめろ!」とか「逮捕する」とか両方のビルから叫んで、これにプティは抵抗して戻りかけたのに、またワイヤーを渡って真ん中に行き、そこでお辞儀したり、ワイヤーに横たわったり、バランス棒を背負ったりと、とんでもないことをし出すのだ。
もう「やめれー!!」「やめんか!!」と思わず叫びそうになった(笑)。しかも、IMAX3Dって映像が半端なくすごいんですよ!! まるで目の前10センチのところで演技してるような超リアル近すぎっ映像。3D映画特有の画面の暗さもなくて、超クリア! 鳥まで飛んできてプティに怒ったりして、もうクラクラした。
私たちは神の子なのだから
神の愛を受けたら偉業も可能だ!!
でも、プティはここで崇高な気持ちになるんだけど、私は強く思ったことがある。
「ああ、この人は神に愛されている人だ」
「今すごく神の愛を一身に受けている」と。
神の域に行ったのではないかな、とも思った。
きっと、そうだと思う。でも、私たちは神の子なのだから、こんなことももちろんできちゃうのだ。プティじゃなくても、ほんとは出来るのだ(やろうとは思わないけどハハ)。
とても、スピリチュアル的な意味で思うところのある映画だった。映像もパフォーマンスもすごいのだが、ちょっと天国を見れたような気分になるところが素晴らしい一作である。是非IMAXシアターで!
あ、村上春樹の「東京奇譚集」の中の「日々移動する腎臓のかたちをした石」はヒロインがワイヤー・パフォーマーで、ちょうど映画を観た時に読んでいて不思議な気持ちになった。シンクロニシティだね。
■監督・脚本 ロバート・ゼメキス
■脚本 クリストファー・ブラウン
■原作 フィリップ・プティ「マン・オン・ワイヤー」
■出演 ジョセフ・ゴードン=レヴィット ベン・キングズレー シャルロット・ルボン クレマン・シボニー ベン・シュワルツ
■123分
●1月23日(土)~全国ロードショー