Czary Mary ポーランド~魔法と神秘の満ちた国より~ vol.2

科学と理論を優先するヨーロッパにあって、未だに多くのポーランド人は霊や術を信じています。都会では多くの人が占い師を頼り、地方には「術使い」と呼ばれる能力者が数多く活躍するこの国の、スピリチュアルなレポート&こぼれ話をどうぞ!

ポーランド・パワースポットレポート02

家に関するジンクス

日に日に暖かく感じられるようになってきました。春です。新しい学校、職場、そして新生活をスタートさせる方が多い季節ですね。それに伴い引越しをされる方も多いと思います。引越しといえば、日本ではカレンダーを見て「大安」に当たればラッキーと考える人がいる一方、 ポーランドでは、新居への移動は水曜日か金曜日が良いとされています。

さらにそれが満月の日に当たると新居での富まで約束してくれるというではありませんか! ということは、最高級の縁起を担ぐとなると、引越し日和は1年に数えるほど。

そしてこの日に引越しができた人は、幸せを保証されているに違いない!……と喜びそうですが、そう簡単には問屋が卸さない模様。

今回はポーランドの「家」にまつわる縁起や不思議をどうぞ!昔のスラブの民にとって、家というのは四方を外の世界から守ってくれる境界線の役割を果たしていました。何から守ってくれるのかといえば、悪い霊。

この霊の力を非常に恐れていたようです。新居に入る時にも、当然霊祓いをしていました。家に入る前に、黒い鶏、黒豚、黒犬、黒猫(猫が一番効き目があるとか)などを先に家のなかに放すと、その生き物が外に出る時に家のなかにいた悪い霊を連れて出てくれるというのですが、このご時世、さすがに農村部ですら黒豚を新居に放つ勇気を持つ人はなかなかいないそうです。
また、悪い霊が家に寄り憑かないように、玄関先に白樺、オーク、杜松の枝を置いておくのも効き目があるといわれています。現在でも、家のジンクスで重要視されているのは「敷居」です。ポーランド人にとって、敷居は神聖なもので、集合住宅に住んでいる人の間でも新居に入る前は、頭を下げたり、なかには敷居に接吻する人もいるとか。

新婚夫婦が新居に入る時に2人が手をつないで同時に敷居をまたぐのが良いとされていますが、この時に新郎がつまずくと、夫婦間の不和が暗示されるといわれていました。さらに、ポーランド人は敷居を挟んで歓迎や別れの挨拶をすることを忌み嫌います。お年寄りのみならず、若い人たちも気をつけています。この習慣が身体に染み込んでいない外国人が敷居を挟んで手を差し出すと、皆例外なく相手を敷居の内側に引っ張り込んだ後に挨拶をします。

また、敷居を後ろ向きでまたいだり、忘れ物を取りに帰るのも良くないといわれているのですが、忘れっぽい人なんてどうするんでしょ、と聞いてみると、その場合は再び家から出る前に、椅子に腰をかけてからまた外出すれば厄祓いができるとか。忘れっぽい私は、玄関先で義父に捕まり椅子まで連れて行かれたことも、一度じゃありません。『お義父さん、私急いでいるんですが……』と心のなかで何度叫んだことか。

家にいるのは悪い霊だけではありません。ポーランドでも、100年ほど前まではどの家にも小人のような存在がいると信じられていました。大抵の小人は赤か灰色の服と帽子をかぶっていて、ベッドの角、部屋の片隅、かまどの向こう側に住んでいるといわれていました。心根の良い小人の場合は、夜の間に家の掃除をしたりバターをつくったり、果ては畑の世話までしてくれるので、その代わりに人間は彼らの好物だといわれているチーズ、牛乳、蜂蜜を小人たちに用意していたそうです。

夜は小人たちが家の回りもうろつくので、日が沈んだ後、窓やドアから食器を洗った後の汚い水などを外に捨ててはいけないといわれていました。もちろん小人のなかにも、根性の曲がったのがいたそうで、そういう小人が家に住んでいるのが分かると、人々は呪文などを用いてこの小人を追い出していたそうです。皆さんの新居に、心根の良い小人がいますように!
窓ガラスの向こうには、天使、悪霊、そして死んだ人の魂が視えると信じられていました

小人用の秤とティーポット(?)。ひまわりの種がこんなに大きく見えます

 


挨拶をするなら、ドアの向こうに入ってからにしましょう このような台所にかまどの後ろなどには小人がいるとか

 

馬の蹄鉄は家に幸福を約束してくれるといわれています。壁もしくはドアにUの字に打ち付けると幸運が逃げず、Uの字を逆さまにすると幸運が逃げず、Uの字を逆さまにすると不幸を追い祓い幸運を呼び込むそう