世界中の誰とでもつながってしまう!「スモールワールド」の現実とは?

「スモールワールド現象」とは?

「自分の知人の、そのまた知人の、さらに知人の……、と辿っていけば、あらゆる人に行き着くことができる――」というのは、理屈のうえでは分かることでしょう。

例えば、学校や仕事上での見知らぬ人であれば、たぶん1人2人の知人を介せばつながるはずです。でも、ものすごく遠い地域に住んでいる、まったくのあかの他人の場合はどうかというと――、おそらく何十あるいは何百もの段階を経ないとたどり着けないのではないか、と思えますよね。

そんな、「世の中で人が実際にどのようにつながっているか」を検証するための実験を、社会心理学者のスタンリー・ミルグラムという人が1960年代に行っています。彼は、アメリカ中西部に住む数十人をランダムに抽出し、はるか東海岸の友人宅に宛てた手紙を渡しました。そして、「心当たりのありそうな知人に手紙を次々に転送しながら、この人のところへ届けてほしい」と依頼したのです。

その結果、それらの手紙は5~6段階の転送を経て、目的の友人のもとに到達したそうです。何と、あの大きなアメリカ大陸で、見知らぬ人との関係が、たったその程度の人数を介しただけでピタッとつながってしまうというわけです。

この研究は、「6次の隔たり」とか「スモールワールド現象」と呼ばれ、マーケティングなどの分野ではけっこう有名なものです。日本の社会学者も、九州-北海道間で同じような実験を行い、これも6段階ほどでつながったといいます。

SNSがもたらした人と人の結び付きの変化

人と人の結び付きがそんなにも近いなんて、ちょっと信じがたい気もしますが、でも計算してみると決してあり得ない話ではないのです。

仮に、1人が50人とつながっているとしてみると――
その50人から先につながっている人数は、「50人×50人=2500人」になります。
次にその2500人から先につながっている人数は、その50倍で12万5000人にもなります。
さらに次の段階では約625万人、次が3億人超。そして次の6段階目には100億人を超えて、何と全世界の人口をゆうにカバーできてしまうことになるのです……。

これは決して、机上の計算とか数字のマジックではなくて、現実にそうなのです。
こちらもよく知られた話かもしれませんが、2011年にフェイスブック社が、7億人に上る全ユーザーの友達関係のつながり方を分析しました。
いわば、前述の「スモールワールド現象」の実験の現代版です。

その結果は、世界のフェイスブック・ユーザー同士のすべての組み合わせのうち、99%以上は間に4人の友達を介せばつながり、さらに92%が3人を介せばつながることが分かったそうです。かつての1960年代の実験よりも、人と人の結び付きは一段と「近付いている」わけですね。

この世界の本当の姿とは?

世界中には想像もおよばないほど多数の人々が生きていて、そのほとんどは自分にとって全く見ず知らずの人たちばかりでしょう。でも、そう見えるのは、うわべだけの一次的な姿にすぎないのです。実際には、「たった3~4人を経由しただけで、誰とでもピタッとつながってしまう」というのが、私たちがいるこの世界の本当の形なのです。
何だか目が覚めるくらい、ものすごいことですよね。

地球上の人々の結合の緊密さを、甘く見ることはできません。
もし一人ひとりが、ごく身近なつながりの中に、「支え合い」や「受容」や「愛」のエネルギーを惜しむことなく流したならば――。
その波及と増幅が、世界をどれほど劇的に変えていくのか、ジョン・レノンじゃないですけど「想像してごらん」……。

それはまったく夢物語なんかじゃない。現実の数字の上でも、世界の構造上でも――。
あとはまさしく、私たちの「気持ちの問題」だけなのでしょう。