【TRINITY No.46連動企画】世界に愛される江戸小紋を! 廣瀬染工場四代目・廣瀬雄一氏インタビュー PART.4

控え目だけれど繊細な文様が象徴する日本の粋

もともとは武士の裃がルーツとなって、今日まで受け継がれてきた江戸小紋。遠目にはまるで無地のように見える生地が、近くで見ると驚くほど繊細な文様で染められているのが分かります。それこそが、決して派手さないが謙虚さや粋といった日本人の美意識を刺激する高い技術が凝縮された江戸小紋の魅力です。

「日本脱出!」がテーマのTRINITY No.46では、各国駐日大使や叶姉妹、LiLiCoさん、海外で活躍する日本人の方々をご紹介しました。その企画のなかで廣瀬雄一さんのインタビューもご紹介しています。「伝統」の魅力をいかに海外で広めるか、日本と海外の違いは?……誌面でご紹介しきれなかったお話を、WEBでご紹介します!

お話をうかがって実感したのは、廣瀬さんの江戸小紋に対する情熱とまっすぐな気持ち。江戸小紋の魅力はもちろんですが、廣瀬さんのような方が今後海外で活躍してくれたら、日本人として本当に誇らしいこと。伝統は、ある面では、固執や先入観が足かせになってしまいますが、「守るべきこと」と「変化すべきこと」のバランス感覚が素晴らしい廣瀬さんならば、確実に世界を切り拓いていくはずです。

―鮮やかで優しい色合いが江戸小紋の特長ですが、色はどのように決定するのですか。
江戸小紋の一つの色味を決定するまでの過程では、何十種類もの色を掛け合わせてつくられています。江戸小紋は、一見淡いシンプルな色あいですが、実はその色は複雑な色の組み合わせで出来ています。それにその時の温度や湿度からも大きな影響を受けるので、それらの条件をクリアして、やっと商品が出来上がります。品質を一定にすることを考えると、本当ならば色のブレを抑えるためには、あまり多くの種類の色を混ぜ合わせない方が良いのかも知れません。でも、うちの商品はたくさんの染料を混ぜ合わせてつくりあげます。うなぎ屋が代々大事にしている秘伝のタレのように、長年培ってきた技術の積み重ねがあるからです。絵の具用の筆を洗うバケツの水が、最後には真っ黒になってしまうように、普通ならば多くの色要素を混ぜれば混ぜるほど、色はどんどん黒くなってしまうんです。でもうちでは、そのようにならない技術で色をつくりあげています。

―江戸小紋を製作する上で苦労している点はありますか。
江戸小紋の繊細さは最新の注意を払って作業をしています。例えば鮫小紋などの細かいドット柄の型紙は、その紋様を1mmの狂いもなく、ひとつずつ彫ってつくられたものです。そして、塗の際には、それを重ね、糊でマスキングして行います。あまりにも繊細な作業ですが、1mmだって狂うことができません。紋様が一個ずれてしまうと、その部分の柄が繋がらなくなってしまうからです。その作業は熟練した技術を必要とするので、大変緊張する作業です。

PART.5につづく

 

▼小紋廣瀬HP
http://www.komonhirose.co.jp/

▼廣瀬雄一さんブログ
http://hyuichi.exblog.jp/

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