人間に必須のタンパク質が狂った時、なにが起こる?

私たち人間が、人間であるために必須ともいえる「脳」。そんな重要な部分を致命的に破壊するものが、私たちの身体を構成する必須の物質であるたんぱく質から産まれるというのは、とても不思議なものです。
人間に必須のタンパク質が狂った時、なにが起こる?

【人間に必須の栄養素であるタンパク質】

「タンパク質」というのは、人間にとって「必須の栄養素」です。筋肉や皮膚はもちろん、臓器や血液なども構成するタンパク質は、生存のためはもちろん、健康的に美しく生きるためにも、どうしても必要なもの。筋力トレーニングをしている人ならば、「タンパク質を効率的に取るために、プロテインを摂取する」というのはすでに常識となっています。

 

【たんぱく質の種類は100億以上!】

そんなタンパク質は、「身体の15%を構成」しており、その種類はなんと「100億種類以上」にも及びます。代表的なタンパク質としては、皮膚などを構成する「コラーゲン」、毛や爪などを構成する「ケラチン」、酸素を含んで血液中を移動する「ヘモグロビン」などがあります。ちなみに、コラーゲンやケラチンは「構造タンパク質」、ヘモグロビンは「機能タンパク質」となり、大きく分けると100億のタンパク質はこの2種類に分類されるのです。

このように多様なタンパク質が作り出されるためには、「アミノ酸」が必要となります。アミノ酸の種類や数、配列によって「タンパク質の構造が決定される」のです。アミノ酸が一定の法則で配列されることで、必ずひとつの形態をたもったタンパク質が決まるというのは、「アンフィンゼンのドグマ」と呼ばれ、「生化学の根本原理」とされていました。

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【生化学の根本原理が覆った】

この根本原理は1950年に確立されたものですが、1980年代初頭にその原理を覆すものが発見されました。それが「プリオンタンパク質」。このタンパク質は、230個のアミノ酸から構成されるものであり、「すべての人が体内に持っているもの」です。脳や脊髄などの神経系に多く存在しているものの、どのような役割を持っているのかは定かではありません。このタンパク質がアミノ酸の配列はそのままで、構造変化を起こすことがあります。これは、アンフィンゼンのドグマでは考えられなかったことであり、反例となるとして話題になりました。

 

【プリオンが変異することで恐ろしい病気をもたらす】

プリオンタンパク質が変異すると「異常型プリオンタンパク質」になります。こちらは、感染性を持つものであり、この物質が脳内に蓄積することで「プリオン病」が引き起こされてしまうのです。プリオン病とは「クロイツフェルト・ヤコブ病」「ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群」などの総称であり、それぞれ細かい症状は異なっています。

ここまで読んでくると、プリオンとクロイツフェルト・ヤコブ病に聞き覚えがあることがわかるでしょう。アメリカ産の牛が罹患したことで一躍話題となった「狂牛病」を引き起こすのが異常型プリオンタンパク質なのです。こちらは、前述したように感染性を持つことから、人にも罹患し、実際に人間版の狂牛病といえるクロイツフェルト・ヤコブ病で亡くなった人も出ています。

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【未だに治療法が確立されていないプリオン病】

ウィルスや細菌とは違って、異常型プリオンタンパク質は、元々体内にあるもので、本来は無害であり、なおかつ何らかの形で生体を維持する為に活用しているプリオンタンパク質が、変異したものですので、それによって引き起こされるプリオン病は、「治療法や治療薬が確立していない」のが現状です。

 

【植物の記憶と関わり合うプリオン】

そんなプリオンタンパク質に関連して、新しい研究が最近発表されました。植物が持つ「LD」と呼ばれるタンパク質は、プリオンタンパク質と同じように異常型に変わることが可能であり、このタンパク質は「周囲の環境を感知するだけでなく、それらを記憶している」可能性が高いということが、アメリカの科学雑誌『PNAS』で発表されたのです。人間とは違った形ですが、「植物にも感情や記憶がある」というのは古くから言われてきたことですので、それが科学的に証明されつつあるわけですが、異常型に変異するタンパク質が記憶と関わりがあるという点は、人間と共通しているというのが興味深いポイントです。

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【脳を破壊するプリオン病】

前述したようにプリオンタンパク質は、脳や神経系などに多くあることがわかっているものの、その役割ははっきりとわかっていません。しかしながら、植物のLDと同じような役割をするとするならば、「人間の記憶と深く結びついている」と考えるのが妥当といえるでしょう。実際に、異常型プリオンタンパク質による疾患は、アルツハイマー病などの脳に関する病気との関連性が研究されています。

私たち人間が、人間であるために必須ともいえる「脳」。そんな重要な部分を致命的に破壊するものが、私たちの身体を構成する必須の物質であるたんぱく質から産まれるというのは、とても不思議なものです。なぜ、私たちの身体はそのようは不合理な作りになっているのか、まだまだ人体の神秘は解き明かされていないということなのでしょう。

【参考サイト】
Luminidependens (LD) is an Arabidopsis protein with prion behavior(PNAS)
http://www.pnas.org/content/early/2016/04/20/1604478113

The mystery of the prion.
Protein is mad.

 

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