打小人~スリッパで憎い相手を追い払い、悪縁を切る

「打小人」とは、この小人を避けるための儀式であり、日本風にいうと悪縁切りともいえるかもしれません。なんとなく、雰囲気的に「丑の刻参り」のような「呪い」をイメージしてしまうかもしれませんが、公式には、身の回りにいる邪魔な人が、ビジネスや恋愛に寄りつかないようにするという意味合いが強いということになっています。
打小人~スリッパで憎い相手を追い払い、悪縁を切る

【悪縁を叩くスリッパ】

「スリッパ」を使って、「憎い相手を近づけないようにする、悪い縁を切る」、そんな方法があるのをご存じでしょうか?

身近な道具であるスリッパを使うというあたりで、手軽なおまじないを想像するかもしれませんが、こちらはれっきとした「プロが何人もいる」手法なのです。

 

【香港に伝わる打小人】

とはいうものの、日本の風習ではなく、「香港で盛んに行われているもの」です。この手法は「打小人(ダーシウヤン)」と呼ばれています。

「小人」とは、文字通り背が小さい人というわけではなく、自分に害を与えるい影響を及ぼす人、さらに嫌いな相手、因縁のある相手など……。簡単にいってしまえば、なんらかの形で「不利益をもたらす相手」を総てひっくるめて「小人」と呼んでいるのです。

「打小人」とは、この小人を避けるための儀式であり、日本風にいうと悪縁切りともいえるかもしれません。なんとなく、雰囲気的に「丑の刻参り」のような「呪い」をイメージしてしまうかもしれませんが、公式には、身の回りにいる邪魔な人が、ビジネスや恋愛に寄りつかないようにするという意味合いが強いということになっています。

ただし、この理由はある程度表向きのものであり、打小人の元になった道教の術では、「打」という文字がつくと、基本的に「攻撃的な意味合い」を持ちますので、純粋に憎い相手に害を与えたりするというような使い方も可能ではあるのでしょう。

 

【道ばたで行われる儀式】

このように紹介してくると、ちょっと怖そうなものに思えるかもしれませんが、打小人は密室ではなく、「鵝頚橋」という橋の下に集まったおばあさんたちによって、周りに多くの人がいたり、横を車が通り抜けていくような路上で行われるのです。

このおばあさんたちは「拝神婆(バイサンポー)」と呼ばれており、この「橋の下がもっとも呪術を行うのに適している」ということで、どんどんとこの場所に集まってきた結果、「日常と異界が融合したような不可思議な空間」が生まれています。

基本的に儀式内容に大きな差はないのですが、それでも拝神婆の中には、年季や腕の違いも存在しているようで、人気がある人は、一日中スリッパを叩いて、術を行っているのだそうです。

 

【激しくスリッパでお札を叩く!】

では、どのように「打小人」が行われるのかを紹介しましょう。

依頼をすると、おばあさんが自分が信仰している神様に祈りを捧げます。これは、個人によって違うようですが、民間の呪術者に人気のある「聖天大聖孫悟空」をはじめとして、三国志で有名な関羽を神格化した「関帝聖君」や、日本でもお馴染みの観音様や龍など、基本的に複数の神様が祀られているようです。

祈りが終わったならば、対象となる相手の名前をお札に書きます。この札には「男性の絵と、女性の絵」が描かれており、相手の性別によって使い分けます。名前を書いたら、いよいよ、「打小人」がはじまります。拝神婆がおもむろにスリッパを取り出して、「札をばしばしと叩く」のです。このスリッパは基本的には市販品ですが、かなり強く叩くために、裏面を補強していることが多いのだそうです。

まさに「打」を象徴するようなスリッパ叩きですが、これは「札がボロボロになるまで行う」ので、だいたい30発程度は全力でスリッパで叩かれることになります。ボロボロになった札は、最終的には燃やしてしまいます。これで、悪縁を絶ちきるわけですが、このあとは拝神婆によって、若干儀式が異なるようです。

依頼者の名前を書いた別の札で身体を撫でてからそれを燃やすというものや、小人の反対である「貴人」、すなわち「良縁をもたらす人を招いてくれる札」で身体を撫でてから、それを燃やすもの、紙で出来た虎に豚肉の脂身を食べさせて、人の悪口がいえないようにするなどがあります。

 

【神意にかなうまで何度でも繰り返す】

最後は共通しており、道教の寺院でも神意を確かめるために使われる、「半月状の木で作られた道具」を使って、打小人が効果を現したかどうかを確かめます。この道具を投げて、両方とも表だったり、裏だったら儀式を再度やり直しとなります。「片方が表、片方が裏になった場合は、神意にかなった」ということになり、無事に打小人が終了となります。

スリッパで叩くというのが、どこから来たのかは謎ですが、民間に伝わるディープな呪術を間近で体験できる打小人。料金は人によって変わるようですが「1000~3000円」という、リーズナブルなものですので、シルバーウィークに香港旅行を考えているという方は、鵝頚橋まで足を伸ばしてみてはいかがでしょう?

ちなみに、通常は鵝頚橋には数人しか拝神婆はいないようですが、年に一度、「啓蟄」の日だけは、香港全土から拝神婆が集まってきて、数十人という数になるだけでなく、鵝頚橋に限らず、あちらこちらでスリッパの音が聞こえるようになるといいますので、来年の啓蟄のタイミングを狙って旅行に行ってみるのも面白いかもしれません。

 

It cuts the evil destiny in footwear.
Mysterious ritual transmitted to Hong Kong.