一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.156「デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり」

精神を病んだ天才ピアニストと支えた妻
ふたりの心躍るドキュメンタリー

デイヴィッド・ヘルフゴットというピアニストのことを知ったのは96年の「シャイン」という映画でだった。

幼少から天才と言われたが、23歳で成功を収めた直後に精神を患い11年もの間精神病院で過ごす。
その後、ワインバーでピアニストとして働くが、1986年、39歳の時にコンサートピアニストとして劇的なカムバックを遂げる。
映画はアカデミー賞も獲り大ヒットしたが、正直その後の彼のことは知らず、死んだと思っていた。
しかし、本作を観て驚いた。
まだ68歳(現在71歳)だったのだ。
そして、今も元気にコンサートツアーを続けていたのだ。
「シャイン」では知ることもなかった、デイヴィッド復活に影にあった妻、ギリアンの支え。
本作は、デイヴィッドとギリアンの日々を追った貴重なドキュメンタリーである。

 

神みたいなデイヴィッドの笑顔に癒される
笑顔には笑顔しかないんだ!

観ながら、笑顔になってしまった。
そして幸せな気持ちになった。
デイヴィッドは画面に猫背気味にニコニコと登場し、誰彼となく全く知らない人に握手を求め、「名前は? 僕はデイヴィッド」と名乗り、ハグしたりキスしたり寄りかかったり、まるで幼児みたいなのだ。
これは統合失調感情障害で入院後、常に誰かに触らずにいられなくなったらしいのだが、ふつう、こういうことは出来ない。
しかし、皆彼の垣根なしの接触に笑顔で答える。
なんか、そういうのを見せられるのって、すごく気持ちが癒されるのだ。
皆、受け入れてくれる、優しい人ばかりなんだ、と思わされるとこがある。
そして、いつもニコニコ笑顔のデイヴィッドが、太陽みたいに、天使みたいに、神みたいに見えてくるのだ。
こちらも笑顔にならざるを得ない。

笑顔には笑顔しかないんだ、と思う。

 

幸せになる秘訣は感謝することよ
占星術師ギリアンの納得の教え

デイヴィッドは1984年にギリアンと知り合ったそうだが、ギリアンはなんと、デイヴィッドより16歳も年上。

しかも、彼女は占星術師という。
劇中にも、ギリアンが自身の精神の調節を図るシーンなどが出てきて興味深い。
デイヴィッドとの運命的な出会いも前もって分かっていたらしい。
彼女が発する数々の言葉がまた素晴らしい。
「幸せに生きようと思ったら感謝することよ。人生で最も大切なことは感謝するということなの」
お洒落で美人のギリアンは母のようにデイヴィッドに接する。
服を着せたり、食事の用意をしたり、たしなめたり、促したり、まんま母親。
でも、それが二人の結婚の世界なのだ。
いろんな夫婦がいて、それぞれの形がある。
ふたりが幸せであればいいのだ。

映画はデイヴィッドのコンサートの様子も撮影している。
演奏になると別人のように珠玉の音を紡ぎだし、天才的な演奏を見せてくれる。
合間に客席に笑いかけたり、オケに笑いかけたりするが。
そして、演奏終了後ステージに駆け寄ってきた人たちと握手握手、ハグハグ、キスキスの長い時間。長い長い賞賛と笑顔と愛の拍手が続く。

 

心躍らせてくれる人に出会う幸せ
勇気を持てば世界は開かれる

ギリアンは「毎日彼を見るだけで心が躍るの」と言う。
毎朝、夫の顔を見て心躍る妻がどれだけいるだろうか?
そういう意味でも奇跡的な夫婦である。
自分の心を躍らせてくれる人が、一人でもいたら素晴らしいな、と思う。
そしてその人に会えるのなら。
今んとこ、私の心を躍らせてくれる人はいない。
ならば、私が誰かの心を躍らせる人になれたらと思うが、日々努力である。

デイヴィッドの今の輝きは苦しみとギリアンの愛があったからこそ。
それを思うと「勇気を持てば世界は開かれるんだ」と言う彼の言葉がより胸に響く。

生きていくには、勇気が必要だ。
笑顔も。
それを教えてくれる素敵な夫婦の映画である。

 

監督・脚本 コジマ・ランゲ
撮影 ユトゥ・フロイント
出演 デイヴィッド・ヘルフゴット ギリアン・ヘルフゴット
※100分

※5月5日(土)~大阪・第七藝術劇場にてロードショー
ⒸUteFreund

 

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