世界のNEWS !「ガブリエーレ・アモルト司祭」の訃報より。時代に求められているエクソシストとはどんな存在?〜3ヶ月待ちのカリスマも〜

中世のようにすべてを悪魔のせいにするわけでもなく、20世紀のようにすべてを迷信にするのでもなく、本当に人を癒し助けることのできる「霊的でありながら、現実的なアプローチ」を今後も続けていって欲しいものです。

【悪魔を払うエクソシスト】

「エクソシスト」という言葉をご存じでしょうか? Trinity読者の皆様ならば、耳にしたことぐらいはあるかもしれません。1973年に公開された映画『エクソシスト』によって一般に広く知られ、現在では小説や映画、アニメなどさまざまな作品に登場していますが彼らは架空の存在ではありません。

エクソシストとは、「エクソシスム」を行う人のこと。エクソシスムは「誓い、厳命」を意味するギリシャ語ですが、キリスト教の宗派であるカトリックでは、「悪魔に取り憑かれた人から、悪魔を追い出して正常な状態に戻す」という意味で使われています。要するに、エクソシストは「悪魔払いを行う神父」ということになります。

ちなみに、19世紀に「エクソシストという階級」があったそうですが、20世紀においてはそのような役職は公的には認められておらず、悪魔払いをしてもいいという任命を受けた司祭のことを「エクソシスト」というようです。近代化と共に、悪魔が迷信的な存在と考えられたために、このようなシステムになったのでしょうが、21世紀に入ってから、「悪魔払いを求める人々は増え続けて」います。

そのために、「2007年」に、先代のローマ教皇である「ベネディクト16世」は「全ての司教区に少なくとも1名はエクソシストを配置する」と宣言しました。彼はかなりエクソシスムに重きを置いていたようで就任早々に「エクソシストの養成講座をヴァチカンに開設」しています。

 

【16万件以上の悪魔払いをしたエクソシストの第一人者】

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このように、カトリックの総本山であるヴァチカンですら、21世紀になってからは、積極的にエクソシストを育成しているわけですが、21世紀に入る前からエクソシストの第一人者として知られていたのが「ガブリエーレ・アモルト司祭」。彼は1990年にヴァチカンの「主任エクソシスト」に就任し、それと前後して「国際エクソシスト協会」を設立した人物。

アモルト司祭は、「1925年」にイタリア北部で生まれ、第二次世界大戦中は「パルチザンとして銃を手にして戦った」という経験を持っています。戦後は聖職者の道へと進みましたが、1986年にローマ司教代理からの命令で、当時のエクソシストの第一人者である「カンディド・アマンティーニ」司祭の元で修行を積むことになりました。

まさに、世界を代表するエクソシストだったアモルト司祭ですが、今年の9月に「91歳で天に召されました」。エクソシストの修行を開始してから「30年あまりで16万件以上の悪魔払いを行った」というアモルト司祭ですが、悪魔に立ち向かう唯一の武器は「篤い信仰心」であり、「超能力やオカルトなどは一切必要ない」という立場を貫きました。彼の功績とお人柄もあるのか、彼の訃報はニュースとなって世界で流れたのです。

 

【カリスマエクソシストを輩出する国際エクソシスト協会】

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ちなみに、彼が設立した「国際エクソシスト協会」は、「2014年に行われた聖職者会議によって、ローマ法王庁がその定款を許可」しました。つまり、実質的に「ヴァチカンの公認」となったわけです。そのためなのか、それとも世界で悪魔が増え続けているためなのかはわかりませんが、2014年の時点で所属しているエクソシストが200人程度だったものが、現在では「300人を越える規模」となっているのだそうです。

先代のローマ教皇、そして現在の教皇である「フランシスコ」もエクソシスムには比較的肯定的です。また、世界的に悪魔払いが求められているということもあり、国際エクソシスト協会は引っ張りだことなっています。さらに、人気エクソシストも誕生しており、中には「面会できるまで三ヶ月待ち」というケースも存在しています。

 

【高まる需要とエクソシストの未来】

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このように紹介してくると、まるでヴァチカンがオカルト主義に走っているように思えるかもしれませんが、前述したエクソシストの養成講座では、神学や儀礼といったものだけでなく、「医学や犯罪学」も学びます。そもそも、世界的にエクソシストを知らしめた映画『エクソシスト』の原作である長編小説『エクソシスト』でも、「悪魔憑きを主張する人の半分が精神疾患」だという記載があるほどです。

こういったことから、きちんとした認可を得ているエクソシストは、エクソシスムを行う前には、「対象者に必ず医者の診察を受けてもらう」ことが義務づけられており、なおかつ「医師がエクソシスムの現場に立ち会う必要がある」という決まりがあるのです。つまり、「精神的および肉体的な不具合ではない」と、厳重に判断した上で悪魔払いを行っているのです。

これだけ悪魔払いが注目されている現在ですが、現在でも「ヴァチカン及びカトリックの中にも悪魔払い自体を疑問視する勢力が存在」しています。悪魔払いの原因は必ずしも、本当に霊的な存在によるものとは限らないのが事実ですが、実際に数万件というレベルで困っている人がいるというのも事実ですので、それを癒し救いをもたらすためにも、これからどんどんと「エクソシストの需要は高まっていく」ことでしょう。中世のようにすべてを悪魔のせいにするわけでもなく、20世紀のようにすべてを迷信にするのでもなく、本当に人を癒し助けることのできる「霊的でありながら、現実的なアプローチ」を今後も続けていって欲しいものです。