他者に対する思いやりこそ、自分自身に幸せをもたらすことができる源。ダライ・ラマ法王講演レポート

ダライ・ラマ法王 2013年 来日講演会レポート PART.4
ダライ・ラマ法王

他の人に対する思いやりを忘れずに

「そこで、たとえ同じ問題を抱えていたとしても、その問題を克服していくためには、自分がつくり出してしまった問題なのであるということを認識したうえで、そして二次的な違いというものをあまり過度に強調することなく、すべての、この地球上に住んでいる70億の人々は同じ立場にあるということを考えていくことによって、他の人に対する思いやりを私たちは忘れずにいるべきであるということを私は常に考えているわけです。

ですから、朝起きて、その時からその日一日を幸せに過ごしたいということを誰しもが考えているわけです。朝起きた時から、今日なにかしらの問題が起きてくればよい、と考えている人は誰ひとりいません」

認識不足がゆえにつくり出される苦しみ

「ですからこのように、誰しもが問題や苦しみを望んでいないにもかかわらず、次々と私たちの身には問題や苦しみが生じてきてしまう――というのは何故かといいますと、私たちが認識の不足がゆえに自分で自分の苦しみの原因を、次から次へとつくり出してしまっているからなのです。
これはなにゆえに生じてくるかといいますと、物事を、そして現実を全体的に、ホリスティックに見るという態度が私たちの中に欠けているからなのです。あまりに過度な利己主義のために、私たちはあまりに自分のことばかりを考えすぎていることから、そのような問題が次々と起こってきてしまうわけです」

他の人のことを心から思いやる気持ちが何より大切

「ですから、たとえどのような宗教に信心をしている人であっても、そしていかなる宗教にも信心をしていない人であっても、そして裕福な方も、そして貧しい方も、教育を受けていても、受けていなくても、他の人のことを心から思いやるという気持ちを持っていることがなによりも大切なことであり、そのような他者に対する思いやりこそが自分自身の幸せをもたらすことのできる源である、これを私は皆様方にぜひお話したいと、このように思いました」

Many problems ―― obviously, which we are facing, 7 billion human beings today are facing ―― many of these problems are actually our own creation….Because we too much emphasis on secondary level of all differences. You look, I look, each one, I think 7 billion of each one, even those people who constantly faces some problems, I think, in the morning, the person logically think “I wish less problems today.” I think 7 billion human beings, I think no one wish in the morning like “Today, I want more suffering.”

So in contradiction, anyone do not want a problem, but at the same time, many problems which are our own creation. Why? Lack of a holistic view, too much egoistic self-centered attitude, it is not whether believer or non-believer, rich or poor, educated or uneducated. I think if you want less problems, you must lose extreme self-centered attitude. That means you need more sense of concern against other sentient beings. That is the real source of a happy life.

~PART.5に続く~

(2013年11月25日 東京ダライ・ラマ法王来日講演「日常の中で活かす仏教の智慧~ダライ・ラマ法王と語ろう~」より。※英文はダライ・ラマ法王がご講演で話された内容そのままを転載。)
取材協力:ダライ・ラマ日本代表部事務所 http://www.tibethouse.jp/

ダライ・ラマ法王14世(His Holiness the 14th Dalai Lama)
1935年チベット東北部にあるタクツェルという村落に生まれる。2歳の時、ダライ・ラマ13世の生まれ変わりと認められ、15歳で政治・宗教両面の国家最高指導者となる。1959年に亡命し、インドのダラムサラに亡命政権を樹立。チベット問題の平和的解決を訴え続け、1989年ノーベル平和賞受賞。2011年8月には政治的地位を主席大臣のロブサン・センゲ氏に委譲。78歳となった今もチベット人をはじめ世界の多くの人々の精神的指導者として活躍している。