「ゆがんだ形にも、濁った色にも、それだから魅力がある」~安西水丸さん追悼・緊急出版

“安西水丸さんは、永遠のスター・クリエーター”

追悼・緊急出版
単行本未収録の作品と親しい仲間達からの追悼文を収録

「ぼくは絵は上手い下手で評価してはいけないという考え方を持っている。
ゆがんだ形にも、濁った色にも、それだから魅力があるといえるのではないか。」

多くのファンに惜しまれながら今年3月に急逝したイラストレーターで作家の安西水丸さん。
その飄々とした独特なタッチのイラストは、誰しも一度は目にしたことがあるはずです。また、作家・村上春樹さんとの名コンビとしても多くの人に知られています。

本書は、氏の単行本未収録の作品と共に親しい仲間達からの追悼文を掲載した、安西水丸さんの作品と人物の魅力を最大限に詰め込んだ一冊です。
本書には、雑誌『クリネタ』に連載された絵、エッセー、掌編小説、雑誌『家庭画報』2013年新年号の特別付録として発表された「いろはかるた」が収録されています。

また、生前親交のあった著名人たちによる水丸さんのエピソード「安西水丸さんのこと」や、座談会を収録した「追悼 水丸カレー部座談会」、「鼎談 水丸さんのお眼鏡」からは、生涯を通して己の信念を持ち続けながら、独自の美学とセンスでさらりと粋に振舞い、多くの人に愛された「水丸流の生き方」の魅力が存分に伺えます。

まさに本書は、時を経ても色褪せない「水丸ワールド」が、コンパクトに堪能できる一冊といえるでしょう。

■本文より~
●水丸さんの絵は飄々として軽妙洒脱だが、誰にも真似のできない独創性があり、その魅力に惹かれてイラストレーターをこころざした若者も多いだろう。僕は水丸パワーに惹かれ、彼に共作を申し込んだ。
(和田誠 グラフィックデザイナー・イラストレーター)

●安西水丸さんはおしゃれな人でした。時代の新しい空気をつかんで自分の見せ方ができる人でした。(中略)体で(頭じゃなくて)時代の真ん中を泳いで生きている人しか出来ないことです。
(大橋歩 イラストレーター)

●まだ十代だった自分にとってロックスター以外でこんなにきちんと「怒り」を持っている大人を初めてみた。その驚きと格好良さは最後まで変わらなかった。その銃口の向く先は、まともに話の出来ない学生、繊細さを売りにするアーティスト、勉強していない編集者、(中略)子供じみた大人、どうしようもない酔っ払いの教え子・・・。数え上げればキリがないが、逆を言えばどんな立場であろうと一本筋の通っている人間には一瞬で気付き、理解と温かさで応えてくださっていたように思う。「これは好き。ではなくて、これだけは嫌い。というものをしっかり持っていないといけない。」(中略)誰よりも優しい人だったのではないか。
(信濃八太郎 イラストレーター)

●水丸さんは、イラストレーターという職業をまっとうにやった最初の人。(中略)自分の立ち位置であるイラストレーターの目線で世の中を見て、イラストレーターの若い人を育て、自分の言いたいことも伝えてゆく。その、最初の人だったと思いますね。
(長友啓典 アートディレクター・クリネタ編集長)

■ 目次
[水丸4コマシアター]
[水丸スピーチ]
「引き」の思考/寝業師は近くにいる/お洒落とは何か/いい人を甘く見るな/子供なんかをパーティーに連れてくるな/交通整理が出ると道が混む/「もてなし」の基本は会話である/名声と尊大な態度は比例するのか/絵は上手い下手で決めていいのか/四番力のススメ
[ぼくと東京タワー]
[裸婦と金魚]
[水丸FICTION]雪の夜/正座する女/ライト、七番/カウンター/西陽/父の顔/チューリップ/晩秋/ハーレムの夜/ユリ科の女
[追悼 水丸カレー部座談会]
[鼎談 水丸さんのお眼鏡。]
[安西水丸版 いろはかるた]
[安西水丸さんのこと]和田誠/黒田征太郎/大橋歩/南伸坊/古賀鈴鳴/井筒啓之/立川直樹/筒井ガンコ堂/矢内廣/あずみ虫/山崎杉夫/信濃八太郎/勝教彰/山岡茂/大島明子/下谷二助
[あとがき]

■安西水丸さんプロフィール
1942 年東京生まれ。日本大学芸術学部美術学科卒業。電通、ADAC( ニューヨーク)、平凡社を経てフリー。朝日広告賞、毎日広告賞、87 年日本グラフィック展年間作家優秀賞、88 年キネマ旬報読者賞受賞。著書多数(絵本、漫画、エッセイ、小説など)。TIS、JAGDA、日本文藝作家協会、日本ペンクラブ会員。2014 年3 月脳出血のため急逝。

『水丸劇場』
発売:2014年6月27日
定価:本体1,300円+税
判型:A5型
頁数:128頁
著者:安西水丸
出版:世界文化社