世界の国際映画祭で数々の最高賞を受賞したドキュメンタリー映画『みつばちの大地』

世界の国際映画祭で数々の最高賞を受賞したドキュメンタリー映画『みつばちの大地』

緑豊かな大地と多くの生命を支えるミツバチを描き、
人の暮らしのありかたを考える。

本作「みつばちの大地」は、ミツバチと人間の深い関係と、その懸念すべき今日の状況を、最新の撮影技術で描いて、世界の国際映画祭で数々の最高賞を受賞したドキュメンタリー映画の傑作である。
大昔からミツバチは、植物の花粉を運び、地球上の生命を育んできた。人間もその恩恵を受けており、毎日の食卓を彩る野菜や果物など、私たちが口にしている食物の三分の一は、ミツバチが受粉している。しかし、ここ15年ほどの間に、ミツバチが大量に死んだり、失踪したりする現象が世界中で起きている。日本もその例外ではない。国や地域により異なるが、在来種全体の50%から90%までもが消滅したとも言われている。
アメリカでは、27の州で150万に上るコロニーが消失し、これは全体の約60%にあたるという。この国では「蜂群崩壊症候群」(CCD)という名称がつけられた。ドイツでは全体の25%のコロニーが消失、養蜂場によっては80%ものコロニーを失った。イギリスではこの現象を、1872年に乗組員が失踪した船舶にちなんで「メアリー・セレスト号現象」と呼んでいる。
植物の8割はミツバチが受粉し、受粉されなければ、果物も野菜もこの地上から姿を消してしまう。ミツバチは人類より300万年も早い500万年前に出現したといわれ、人間の生存にとって欠かすことのできない存在である。物理学者のアインシュタインは、地上からミツバチが絶滅したら人類も4年で滅びるといった、といわれている。
ミツバチはなぜ消えてしまったのか? その原因はどこにあるのか? 抗生物質などの薬物投与、農薬、ミツバチへギイタダニなどの寄生虫、長距離移動などのストレス、現代社会がもたらす電磁波など、さまざまな要因があげられるが、現象は環境によって異なり、はっきりと解明されてはいない。本作では、人間の文明が作り出したこれらの要因が複合的に作用して、ミツバチを死に追いやったと語っている。
祖父の代からミツバチに親しんできたスイスのマークス・イムホーフ監督は、アメリカ、ドイツ、中国、オーストラリアなど世界各地をめぐり、その実情を丁寧に取材した。そして祖父との記憶やミツバチへの愛情を織り交ぜながら、人間の活動が、ミツバチだけではなく地球の多様な生命、ひいては自らの存在をも脅かしている現実を紡ぎだしてゆく。それらは鋭い文明批評でもあり、小さな「いのち」を通して自然と人間の持続可能な関係を、静かに問いかけている。

おじさん

最新の撮影技術を駆使した、
ミツバチの知られざる生態に迫る驚異的なマクロ映像。

このドキュメンタリーの大きな魅力は、ミツバチの驚くべき生態を見事にとらえた、実写のマクロ映像にある。イムホーフ監督は、本作の主役ともいえるミツバチの撮影のために、専用のスタジオを用意した。本来は真っ暗闇の巣箱内に、黄金色に輝くミツバチの世界を作り出し、女王蜂誕生の瞬間やミツバチのダンスなど、普段は目に触れない巣箱内の様子を捉えた。そしてコロニーが一つの生命体として機能するミツバチの驚くべき知能と社会性を映像で明らかにした。また、ミニヘリコプターや無人偵察機に小型カメラを設置して、飛行中に行われる女王蜂の交尾を撮影。生命のダイナミズムを感じさせる映像は映画のハイライトの1つとなっている。

●ストーリー●
マークス・イムホーフ監督は、世界中でミツバチが大量に死んだり、失踪している事実を知り、その原因を求めて旅にでる。
その旅は、スイスの山岳地方に住む養蜂家にはじまり、世界中へと広がっていく。アメリカでは、ミツバチが受粉のために全米を農園から農園へと長距離輸送されてゆく姿を取材し、オーストリアでは、女王蜂を育て世界中へ発送している一家に会う。中国の一地方では、文化大革命の時にミツバチを退治したため、花の受粉を人間の手で行っている姿をとらえ、米・アリゾナ州では、キラービーの養蜂家に会う。そしてミツバチの驚くべき知能と社会的な共同生活について、ドイツの研究者にインタビューする。
旅の最後の地は、イムホーフ監督の娘家族のベア=イムホーフ夫妻が研究をすすめるオーストラリアである。ここでは、ミツバチの大量死がまだ始まっていない。彼らは太平洋に浮かぶ孤島に人工交配させたミツバチを放っている。果たしてこの島は、ミツバチにとってノアの方舟になるのだろうか?

みつばち
●ミツバチの撮影について●
ドキュメンタリー映画「みつばちの大地」の最大の魅力は、ミツバチの生態を見事にとらえた実写のマクロ撮影にある。このように撮影されたミツバチをスクリーンで見ることは、前代未聞と言っても過言ではない。撮影は、ミツバチの活動が活発になる春に行われ、2年にわたって合計105時間の映像が収められた。

イムホーフ監督は、本作の主役ともいえるミツバチの撮影のために、古い工場に専用のスタジオを用意した。撮影にあたり用意されたミツバチは、35日間の撮影で合計15コロニーにも及び、一匹のミツバチを撮影するために10人のスタッフがついたこともあったという。撮影スタッフたちは、内視鏡カメラやマクロ撮影を用い、女王蜂誕生の瞬間やミツバチのダンスなど、普段、我々が目にすることができない巣箱内の様子を捉えた。そして、本来は真っ暗闇である巣箱内に黄金色に輝くミツバチの世界を作りだし、コロニーが一つの生命体として機能するミツバチの驚くべき知能と社会性を明らかにした。

通常の撮影では、ミツバチの羽や触角、舌などの動きは早すぎて人間には知覚できないので、今回はハイスピード撮影を駆使し、巣箱内の様子は秒速70コマ、飛行中は秒速300コマで撮影された。イムホーフ監督が特に頭を悩ませたのは、ハイスピード撮影は強い明かりを必要とするので、そのために生じる熱の問題だった。蜜蝋を溶かさず、ミツバチが弱らないよう、太陽の光を鏡に反射し撮影に臨んだ。

また、飛行中のミツバチを撮影するにあたり、ミニヘリコプターや無人偵察機に小型カメラを設置した。飛行中に行われる女王蜂の交尾をなど、生命のダイナミズムを感じさせる映像は、映画のハイライトの一つとなっている。

こうした撮影は、チーフカメラマンのアッティラ・ボアだけでなく、ミツバチのスペシャリストとも言うべき養蜂家たちの協力無しでは出来なかった。

『みつばちの大地』
5月31日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー
(C)2012 zero one film / allegro film / Thelma Film & Ormenis Film
www.cine.co.jp

<スタッフ>
監督・脚本 マークス・イムホーフ MARKUS IMHOOF
編集:アンネ・ファビーニ ANNE FABINI
撮影:ヨーク・イェシェル JÖRG JESHEL (BVK)
アッティラ・ボア ATTILA BOA
音声:ディーター・マイヤー DIETER MEYER
サウンドデザイン:ニルス・キルヒホーフ NILS KIRCHHOFF
音楽:ペーター・シェーラー PETER SCHERER
ナレーター:ロベルト・フンガー−ビューラー ROBERT HUNGER-BÜHLER
プロデューサー:トーマス・クーフス THOMAS KUFUS
ヘルムート・グラッサー HELMUT GRASSER
ピエール-アラン・マイアー PIERRE-ALAIN MEIER
マークス・イムホーフ MARKUS IMHOOF
<出演者>
フレッド・ヤギー FRED JAGGI
ジョン・ミラー JOHN MILLER
ランドルフ・メンツェル教授  PROFESSOR RANDOLF MENZEL
ハイドルン・ジンガーと娘のライネ HEIDRUN AND LIANE SINGER
チャン・チャオ・スー  ZHANG ZHAO SU
フレッド・テリー  FRED TERRY
ボリス・ベア教授とバーバラ・イムホーフ博士 BORIS BAER AND BARBARA IMHOOF

<日本語版>
制作:Passo Passo
翻訳:坂田雅子
字幕:赤松立太
台本:尾崎順子
字幕監修:中村純(玉川大学学術研究所ミツバチ科学研究センター)
みつばこ
イムホーフ監督の声:佐々木梅治