『マイク・ミルズのうつの話』

「心の風邪」に気付いたのはいつからですか?

ここまで見せてくれるのか。
マイク・ミルズ監督によるドキュメンタリー映画では、うつを発症した日本人の日常がむき出しのまま映しだされる。
自殺未遂や、失語症などぎりぎりの精神状態でありながらも、彼らの生活は淡々と続き、その合間にすがるように薬を飲み下す。うつ病患者は、ここ10年で2倍近くに膨れ上がっている。
製薬会社による「心の風邪ですか?」というCMが流れた直後からだ。出演者たちは言う「あのCMは素晴らしかった」「風邪と表現することで誰にでもなりうるものだ、という認識を広めた」と。
実際、病院に行くと簡単に薬が処方されたそうだ。減薬を試みているミカがつぶやく場面が印象的だ。「今はもう、うつとの戦いというより、抗うつ剤との戦いっていう感じ」。気分を上げてくれる薬が、いつしか自分を縛っていた。
酒浸りになりながらもサボテンを育てるダイスケ。ミカは趣味で水彩画を描く。
それぞれの方法で日常に彩りを取り戻そう、前に進もうとする姿は、誰しも同じだ。違いは鬱診断と処方箋。薬を手にした彼らは、心の風邪を治すことはできるのか?ただ、製薬会社が薬を売り続けるためには、誰かが薬を飲み続けなければならないことは明らかだ。

《監督》 マイク・ミルズ
1966年生まれ。
カリフォルニア州サンタ・バーバラ出身。高校を卒業後、ニューヨークのアート・スクールへ入り、次第にグラフィック・アーティストとして頭角を現す。
X-GirlやMarcJacobsなどにロゴやデザインを提供。
また、ソニック・ユースやビースティー・ボーイズ、チボ・マットなどのアルバム・デザインやミュージック・ビデオを制作し、90年代のNYグラフィック・シーンの中心人物となる。
やがて、ジム・ジャームッシュの影響を受け、映画を撮り始める。
90年代末、友人であったスパイク・ジョーンズとソフィア・コッポラの紹介で、ローマン・コッポラとディレクターズ・ビューロー社を設立。
ナイキやアディダスなどのCMや、エール、モービーといったミュージシャンを題材にしたドキュメンタリーを手がけながら、長編映画監督デビュー作「サムサッカー」(05)を発表、サンダンス映画祭で評価され映画監督としても注目を集める。長編2作目となる「人生はビギナーズ」(10)では、自身の父親との関係を題材にオリジナルの脚本を執筆し、インディペンデント・スピリット・アワードの監督賞と脚本賞にノミネートされ、ゴッサム・アワードの作品賞を受賞した。
「社会のアウトサイダー」が、彼の一貫したテーマである。

監督 マイク・ミルズ
出演 タケトシ、ミカ、ケン、カヨコ、ダイスケ
公開 2013年10月19日渋谷アップリンク他全国ロードショー
配給 アップリンク

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