「世の中は多様性に満ちている」。世界から見た日本とは?中野裕弓さんインタビュー PART.1

Trinity vol.46「日本脱出」でも登場した、『世界がもし100人の村だったら』の翻訳者であり、元世界銀行人事カウンセラーの中野裕弓さん。TrinityWEBでは、本誌に掲載しきれなかった、中野さんのインタビューをご紹介します。

日本人の心は不自由? 目の前にある、幸せの種を見つけて

―日本について、「恵まれているけれど不自由な国」と仰っていました。それは、日本人の心を意味しますか?

中野さん
「世界銀行にいた頃から、外国でよく聞かれていたのは、日本では地雷が埋まっているわけでも、戦火で焼かれているわけでも、食べ物もないわけでもないのに、どうして自ら命を絶つ人がそんなに多いのか?ということ。人は満ち足りていても、心が不自由だったり、欠乏感があったら、そういう道を選ぶのかなと、矛盾を感じました。今、日本では“仕事がない”と言われますが、皆、選り好みをしているだけで、本当はたくさんあるんですよ。今の生活を幸せにできる種はいっぱいあるのに、それを見ないで、ないものだけを数えて不幸だと言っている人がいるとしたら、不自由ですよね」

世界は広く、多様性に満ちていることを理解しよう

―発展途上の国に行くと、小さな子どもが働くのが当然だったりするのに、日本に帰ると恵まれていることを忘れてしまうのでしょう。

中野さん
「それが人間だからなんでしょうね。悲しみにとらわれ過ぎていると、先に進むことができないから、切り替えも必要でしょう。世界の悲しみだけを見て、“自分だけ喜んでちゃいけない”と自戒する人もいるけれど、自分の人生を謳歌して周りを巻き込み、世界を引っ張っていく人も、両方必要だと思います。

世界銀行にいた時に、“何をもって幸せとするか?”というディスカッションをしたことがあるんです。すると、アフリカや中近東、東南アジア出身のスタッフが、“子どもが校庭で遊べることができたら幸せ”と言っていました。校庭には地雷が埋まっていて、遊べる所が制限されているそうなんですね。

そんな心配をすることなく、私たちはどこでも出かけられる。世界はとても広くて、いろんな人が同じ時代に住んでいるなって。それぞれに自分なりの正義があって、ただ単に「テロ」という言葉だけでは片づけられない何かがあるわけでしょう。それだけいろんな国があるということ知るのは必要ですよね。

『100人の村』には、3つのことが必要だと書いてあるんです。一つがアクセプタンス。あるがまま、そのまま受け入れること。それから、アンダースタンディング。理解すること。自分と違う相手を理解しようと歩み寄ること。3つ目はエデュケーション。世の中は多様性に満ちていて、いろいろな人がいるんだよということを子どもたちに教える教育。この3つは今でもすごく必要だと思う。

世界に出る時に大切なのは相手を理解しようとする心。相手を理解するには技術がいるんです。それがコミュニケーション技術。日本人は、コミュニケーションの所で引っかかっているんですね」

~続く~
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世界銀行時代の中野さん

Profile:
中野裕弓さん
『世界がもし100人の村だったら』訳者。世界銀行本部に日本人初の人事マネージャーとしてヘッドハントされる。著書に『世界でいちばん自分を愛して』(日本文芸社版)、『朝一番の、ちょこっとスピリチュアルな習慣』(メディアファクトリー)ほか多数
中野裕弓さん公式HP  http://www.romi-nakano.jp/

 


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