幸せの基準って何?? 『世界一幸せな国の97%幸せになる生き方~心が軽くなる ブータン108の教え~』

「“あなたは今幸せですか?”と聞かれても、即答はできないなあ……」というのが、本書のタイトル読んだ一番の感想。
正直言って、「そもそも、私にとって幸せって何?」という、自分への問い掛けからのスタートです。

仕事は忙しくて毎日へとへと、緊張でいつも気持ちが折れそう。でも、素晴らしい人たちとの出会いや、ここでしか経験出来ない機会を与えていただいている。しっかりとお返しできていると自信を持って言えないのに、毎月お給料をいただいている。プライベートは劇的に楽しいことはないけれど、穏やかに進行中。家族や友達とはあまり会えないけれど、関係は良好。恋愛は順調ではないけれど、どん底というほど絶望してはいない。
20秒ぐらいマイナス面とプラス面を総合的・相対的にぐずぐずと考えた末にやっと、「私は多分不幸ではない……」、こんな答えしか出すことができませんでした。

不幸ではないことが、イコール幸せなのか、その判断も正直つきません。全部に対して、「でも」や「けれど」という前提が付いてしまうことに自分でもびっくりです。自分が今いる環境や、状況の判断材料がないと、「不幸せではない」という答えすら導き出せないとは……。「幸せ」って一体何なのでしょう?

ブータンで実践する「国民総幸福度(Gross National Happiness)」とは、1972年に当時16歳で即位した第4第ブータン国王ジグミシンゲ・ワンチュクが提唱した「国民全体の幸福度」を示す尺度とのこと。金銭的や物質的な豊かさを目指すのではなく、精神的な豊かさをを目指すべき、という考えに基づいているとのこと。

国民総幸福度を測る項目は、国教としているチベット仏教を軸として考えられていて、心理的幸福、健康、教育、文化、環境、コミュニティー、良い統治、生活水準、自分の時間の使い方の9つの要素から成り立っています。
2005年に初めて行われたブータン政府による国政調査では、「あなたは今幸せですか?」という問いに対し、45.1%が「とても幸福」、51.6%が「幸福」と回答し、約97%もの人が幸福を感じていることが分かりました。
なぜブータンの人々は幸福度が高いのか? 本書では、ブータン王国首相最高顧問の著者が感じた、幸福度の108の秘訣が紹介されています。
そのうちのいくつかをご紹介します。

「永遠という幻想から目覚める」

「人間性とは忍耐である」

「息をしている限り希望はある」

「幸せの基準を決める」

「頑張りの無駄使いをしない」

「悩み、迷い、無明が苦しみを増産する」

「嫌いな人と決めつけない」

「幸福になれる場所を保つ」

「一人ぼっちは何よりも悲しいこと」

「本当に大切なものは形を持たない」

読み進めながら感じたのは、人生は決して公平ではないし、永遠でもない、誰もが順風満帆に人生を過ごせるわけではなく、辛いことも多い……。言葉の裏には、そんな前提が見え隠れしていること。それが、人生の真理なのかもしれません。

ブータンの人々の幸福度が高い理由は、決して人生を楽観視しているからではありませんでした。人生の厳しさを知っているからこそ、厳しいながらも穏やかな視点がありました。手放しで幸せを喜んでいるわけではなかったのです。
欲を出すと高くなりがちな幸せの水準を下げ、そして幸せの面積も広くすること。少しでも間口を広くすれば、自分が幸せの中に包まれる可能性も高くなります。
そう考えれば、自分自身に「今幸せですか?」と問い掛けた時に、ネガティブポイントとポジティブポイントを相殺して、結果「幸せ」という答えが出ることも、決して誤った方法ではありませんでした。
結局のところ、もっとも大切なのは、上にもあるように「幸せの基準を決めること」。

人生においてさまざまな選択肢があるなかで、忙しいけれどやりがいがある仕事を続けるのか、田舎で時間に追われずのんびり暮らすのか、結婚するのか、しないのか。自分が歩む道を大きく方向転換するのも一つの方法ですし、進むべき道を決めた後に、例えば自分のお気に入りの趣味や友人との時間を大切にするなど、ささやかな出来事のなかで自分の幸せの基準を決めていくことも、きっと幸せへの一歩。

「人生万事OK!」という幻想を捨て、「幸せかは分からないけれど、不幸でもない……」。そう思えるだけで、ある意味「幸せ」なのかもしれません。

『世界一幸せな国の97%幸せになる生き方~心が軽くなる ブータン108の教え~』
ペマ・ギャルポ 著

ワニブックス
2012年5月25日発売
1,365円(税込)