今年ほど、健康がどんなに大切か、普通がどんなに素晴らしいかを感じた年はなかったかもしれません。
しかも1年の半分をも、新型コロナ肺炎の蔓延に恐れ、自粛し、ステイホームで閉塞感の中で過ごしてきました。
まだまだコロナとの闘いは続きますが、こんなときだからこそ、6月30日に日本全国の神社で開催される「夏越の祓」でお祓いをして、残りの半年をなんとか健康で乗り切るようにしてみたいものです。
「夏越の祓」とは
日本には「大祓(おおはらえ)」と呼ばれる神社の行事が、一年間に6月30日の「夏越の祓」と12月31日の「年越の祓(としこしのはらえ)」の二度あります。
これは半年間の心身の穢れを取り、災いの原因となる罪や過ちを祓い清めるものです。
もともとこの大祓は、イザナギノミコトが黄泉の国の穢れを祓うために行った禊祓い(みそぎはらい)が起源となり、日本全国の各神社で中世以降に行われるようになりました。
「夏越の祓」は、1年の半分が過ぎてちょうど衣替えの時期にあたります。
「夏越の祓」で身を清めたあとに、夏の清潔な衣服に着替えて疫病予防をするとともに、梅雨を乗り切るためにもこのお祓い行事を大切に考えて受け継がれてきたものです。
「夏越の祓」では、人形(ひとがた)と呼ばれる人の形に切った白い紙に、自分の名前と住所、年齢を書き、その人形で自分の身体の気になる部分を撫でて、最後に自分の息を吹きかけます。
これによって、自分の穢れをこの人形に移すことができるのです。
自分の穢れを移した人形は所定の封筒に入れ、これを事前に神社に納めて6月30日の「夏越の祓」の日にお炊き上げをしてもらうことで、半年間の穢れをぬぐうことができます。
地元の各神社に問い合わせれば、事前にこの人形を手にいれることができるはずです。
茅の輪くぐり
6月30日の「夏越の祓」の当日、神社には茅(チガヤ)と呼ばれるイネ科の植物を乾燥させたものを編んで、直径2メートルほどの輪、「茅の輪」が神殿前に据え付けられています。
人形によってぬぐった穢れを炊き上げてもらうだけでなく、この「茅の輪」をくぐることで、無病息災を願うことができるのが「夏越の祓」なのです。
この「茅の輪」のくぐり方には決まりがあります。
① 礼をしてから「茅の輪」をくぐり、左に回って正面に戻ります
② 再び一礼をしてから「茅の輪」をくぐり、こんどは右に回り正面に戻ります
③ もう一度、一礼をして「茅の輪」をくぐり、左に回り正面に戻ります
④ そして最後に正面で一礼をしてしてから、左足で「茅の輪」をまたぎ、そのまま神前に進んで参拝を終えます。
基本的には8の字を描くように3回「茅の輪」をくぐることになります。
「茅の輪」をくぐるときには「水無月の夏越の祓する人は千歳の命のぶというなり」と唱えながら3回くぐります。
この歌は、地域や神社によっては多少違うものを案内しているようです。
また、「茅の輪」くぐりには、左回りをするときは左足から、右回りのときは右足から進むという手順が書かれている神社もあるようなので、それぞれの神社の指示に従ってお参りしてください。
歌を唱えにくければ、「この半年間の穢れを祓い、ここで身を清めて健康で幸せな残りの半年を過ごせますように」という気持ちを持って、「夏越の祓」に参加すればよいと思います。
「夏越の祓」の日に食べる和菓子、「水無月」
実はこの「夏越の祓」の日に、いただく伝統的な和菓子があります。
その和菓子の名前は、6月の旧暦の呼び名でもある「水無月(みなづき)」と呼ばれています。
和菓子の「水無月」は京都発祥のお菓子で、平安時代の6月1日の節句「氷室の節句」の日に、氷を氷室から切り出して暑気払いのために食べるという貴族の風習に基づいたものです。
平安時代には庶民にとって、氷は貴重で手に入るものではなかったため、代わりに氷に似せたお菓子の「水無月」を考えだしたのです。
お菓子の「水無月」は、この氷室の氷を形どり、白色のういろうの上面に、甘く煮た小豆をのせ、三角に切り分けたものです。
なぜ三角かというと、四角を半分に切っていることから1年の半分を示しているのです。
そして小豆は鬼が嫌うものなので、魔除けになると考えられ、また小豆の赤い色自体にも、厄除けの意味があるとされています。
ようするにこの「水無月」を「夏越の祓」の時期に食べることで、体の中から悪魔を追い出すこともできると考えたのです。
そんなわけで、この「水無月」を「夏越の祓」の日に、1年の残りの半分を無病息災を祈って食べるのです。
特に関西地方では、6月に入るとこの「水無月」が和菓子屋さんの店頭に並び始め、今年も「夏越の祓」の季節が来たことを感じさせられます。
今年はぜひ「夏越の祓」に参加して「水無月」を食べ、これから半年はコロナにも負けずに無事に過ごせるようにお祈りをしてみませんか?
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