八十神の試練は魂の成長を促す天の計らい!? 再生と復活の地☆赤猪岩神社3

赤猪岩神社

音無き異空間で具現化した小さな蛇の様な形をした念。

チロリチロリと焔のような舌を出してこちらを威嚇し、絡め取ろうとしてきます。

脳裏に浮かぶのは過去の失敗。
あの時どうしてあんな事をしてしまったのだろう、あの決断は間違いではなかったのか、そもそも私は誰からも求められてはおらず、本当は私は嫌われているのではなかろうか……と、負の思考が渦巻き、段々と力を奪われ、地面に跪きたくなります。

(屈してはいけない……。)

そう思う心をあざ笑うかのように念は大きな口を開け、グルグルと私の意識を取り囲み、さらに自分は駄目な人間なのだと自身で追い詰めていきました。

赤猪岩神社

ふと、胸の奥に向かって一筋の清涼な風が吹き抜けるのを感じました。
視上げれば、そこには背の高く後ろ姿からも美丈夫だろうなと容易に想像できるみずらの男性が立っていました。

『それは本当に現在起こっている事なのか?
そなたの友はそんな事を思うような人間なのか?
今一度考え、思い出せ。そしてそれは本当にそなたの思考であるのかを思い出せ。』

 

能に直接響き渡る声が振動となって念を取り祓います。

祓われた念は悲鳴を上げながら散りじりと消え去り、まだ消えぬ念がその男性をじっと視据えて威嚇しています。

「………いいえ、私はそこを乗り越えてきた。
私の友はそんな事は思わないし、言わない。
むしろ、こんな状況に陥ったとしたら、私を叱咤激励する。場合によってはグーで殴ると思うわ。私が目を覚ますまで。
だって、そうお願いもしているもの。
私も人間、時に間違う事もある。だからその時はグーで殴って目を覚まさせてくれって。
それだけ信頼できる友がいるの。私が迷った時に手を差し伸べてくれる友がいる。
私は、こんな思考に陥らない。
そりゃそっちへ足を突っ込む時もあるけど、それは私が私を検証する為にわざと入るだけ。
一通り考えて、考え尽くしたら光が視える。
私は私の真実をみつける為に、私が本当にやりたい事や行きたい世界へ昇る為に、ただ顕在化して教えてくれる念と向き合うの。」

真っ暗などこまでも落ちれる足元から、ぐっと上を見上げると北極星の様な眩い光が視えました。
そこが私の目標であり、私が生きる意味を知る場所、そして本当に私がいたい場所。
ならば、念に負けてくじけるくらいなら、ここから去ればいい。私には合わなかったという事なのだから。

「ありがとうございます、大国主様。そして、私を追い詰めて教えてくださる八十神にも感謝を。」

その声に、ふっと微笑む気配を漂わせ、美丈夫な男性は異空間を切り裂き、その瞬間眩い光が満ち、目を閉じて再び開けると、そこは雨降る赤猪岩神社の境内でした。

赤猪岩神社

「……さっきより綺麗にクリアに見える。」

見渡す境内の緑の鮮やかさに目を奪われます。

「気持ち1つで世界は変わる。
世界を変えなくても、私が変われば私の世界は変わる……。」

鮮やかさはフィルターを1枚外したようにクリアで、細部まで繊細に見え、そこの生きる全ての息吹が全身を通して伝わってくるかのようでした。

「きっとこれから大きな方向転換をする時がくるんだな。それも過去挫折した事に改めてチャレンジするような……。」

胸の奥が疼き、何かとても大切であったはずなのに忘れてしまった事があるはずだと教えてくれます。

「何かは分からないけど……ま、機会があればチャレンジするかな。」

ふふっと微笑み、再び神社へと向かい参拝した後、次なる目的地へと向かったのでした。

 

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