拝殿でも清々しく気持ちが良いと思ったが、
それをさらに上回る清らかさだった。
この清らかさを例えるなら、早朝の真っ新な積もりたての雪の中。
音は全て新雪に吸い込まれ、よく見れば雪は結晶が積もり重なっており、朝日を浴びて煌めいているといった感じだ。
けれど、雪がない冬の朝よりも雪がある方が暖かいように、綿に包まれているかのような優しさも感じる。
スーッと吸い込むと、吸い込んだ空気が肺から身体全体に広がって清めて一新されるようだ。
「綺麗……。」
ただ一言口からそう零れた。
雪の精霊のような美姫
零れた言葉が雪の結晶のようになり、ふわりと風に舞う。舞った言葉は本殿にスーッと吸い込まれていった。
『ありがとう。』
透き通るほど薄い氷が何層も重なって響き合わせたような清らかな声が脳内に響く。
先ほどの言葉が磐長姫神を言祝ぎとなり、磐長姫神の元へと届いたようだ。
本殿が揺らいだかと思うと、私の前に雪の精霊のような美姫が現れた。
烏の濡れ羽色のような長く豊かな髪に、雪の結晶を思わせる簪、氷の様に白藍色から月白色の衣、勿忘草色の領巾に白銀色の流水紋が描かれ、磐長姫神を引き立てており、その美しさに目を奪われる。
(磐長姫神って、超美姫じゃんっ!!)
私の心の声が聞こえたように、磐長姫神は微笑んだ。
『聖滝へも向かいなさい。そこは高天原と嘗て呼ばれた場所。
この場所へはそこより清らかな氣が流れる。貴女の助けとなりましょう。』
そう仰り、また微笑まれてダイヤモンドダストのように輝き、本殿へと戻られた。
「聖滝……。わかりました、行ってみます。ありがとうございます。」
深々と本殿に頭を下げると、軽やかな笑い声が聞こえ、風に流れて消えた。
「美人ってやっぱり男前なんだわ!」
心根の清らかさと、自分への素直さが姿形となり、スパンっとした男前さになるのかもしれないなどと考えながら、私は車に乗り、聖滝へと向かった。
続く。
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