マジックで再現できるからと言って、それが死後の世界や超能力を否定するものではありません

あなたの回りにもし頑固な超常現象否定派がいたら、結論が最初にある間違った三段論法をしないように、と言ってあげてください。

皆さんはスプーンを曲げたことはありますか?
私は曲げたことがあり、念力を測る機械を動かしてみたこともあり、そうした超能力が存在することを知っています。

しかし世の中には、「マジックでできるなら、きっとあの現象もトリックに決まっている」、という言い方をする人がいます。
でも実は、マジックは超能力の後を追うように発展してきたのです。

 

ブックテスト

メンタルマジックの金字塔と呼ばれる、ブックテストという有名なマジックがあります。
有名なだけに、たくさんのバリエーションとトリックがありますが、一番単純なのはこんな感じです。

1) 2冊の本を用意し、観客の1人にどちらでも好きな方を選んでもらう。
2) もう片方の本を持ち、ページをめくりながらどこかでストップと言ってもらう。
3) ストップと言われたときに開いていたページ数を観客に告げ、先程選んだ本のそのページを開いてもらい、最初の数文字を覚えてもらう。
4) 観客に本を閉じて、覚えた数文字を念じてもらう。
5) マジシャンがその文字を当てる。

あなたはこれを超能力としてやられたら、信じますか? でも、これくらいだと、ちょっと考えればすぐにトリックを思いつくかもしれませんね。
私はそのトリックを知っていますが、種明かしはしないでおきましょう。

ブックテストのマジックはかなり起源が古いようで、とりあえず出版物として残っているものだと、イタリアのマジシャン、ヴァンニ・ボッシが1607年に出版したブックテストトリックがあります。
これが今の形に近づいたのが、1865年〜1875年頃。
ただ、このときのトリックには大変面倒な準備が必要で、しかも助手も必要だったそうです。
次にこれが1920年頃、助手の要らない形に進化し、今回紹介したような形になってきたのは、1900年代になってからです。

一方、1910年頃、死後の世界から似たようなことを行った人がいます。

 

マイヤースのブックテスト

1882年、イギリスでSPRという、学者たちがそろって心霊現象を研究しようという協会ができました。
SPRは会としての結論は出さない方針なので、個人的に結論の出た会員は会を去ります。
設立時のメンバーは全員、調査の末に死後の世界はあると結論を出し、SPRを辞めていきました。

そんな中の1人であるフレデリック・マイヤースは、1901年に亡くなると、自分がまだあの世に存在している証拠を示すために、この世の霊媒を通じて、いろいろな手法を仕掛けてきました。
その中のひとつが、彼なりのブックテストです。

ある日彼は現存のSPR会員、物理学教授のウィリアム・バレットにこう伝えてきました。

「右手の方に数冊の本がある、デヴォンシャー州にある君の家の2階の部屋だ。その2番目の棚、下から約4フィート、左から数えて4番目の本の78ページ最初にある言葉を、私が死んでから君がやっている研究に関する答えとして受け取ってくれ」

バレットが家に戻り本棚の指定された位置を見ると、そこには現代でも読み継がれているジョージ・エリオットの『ミドルマーチ』がありました。その78ページ の最初の文章は「Ay, ay, I remember — you’ll see I’ve remembered ’em all.(そうそう、覚えている、私が全部覚えているのを分かってもらえるだろう)」とありました。
実は、バレットはマイヤースが亡くなってから、人の記憶は死んだあとも残るのかどうかを調べていたのです。
つまりこれは、マイヤースが死んだあともすべて覚えていることを示す、バレットだけに通じる特別の言葉でした!

 

マジックでできるからと言って……

こうした心霊現象が、マジックのブックテストに影響を与えたことに間違いはありません。
なぜならSPRは、すべての心霊現象を可能な限り、死後の世界はないという観点から研究するからです。
その中には当然、トリックとしてこの現象を行うならどうするか、という研究も含まれます。

マイヤースの場合、霊媒が事前にバレットの研究内容を知る機会があって、また彼の書斎に忍び込んで色々調べられる機会もあれば、このトリックを行うことができます。
しかし、そうした可能性を見つければ、SPRは次回の実験まで、私立探偵を雇って霊媒の周辺を見張ったりと、そこまで行う団体なのです。
それにもかかわらず、ここに紹介した以上の心霊現象がどんどん起きていきます。

それなりの知識人がよく、「そういう風にすればできる」、というのと「実際にそうした」というのを同じに考えてしまう理由は、その手の人たちには最初に結論があるからです。

「死後の世界や超能力はない」←結論

「この現象はこうしたマジックで可能だ」

「だから、きっとあの現象もトリックに決まっている」

本当の知識人なら、このように間違った考え方をせず、こうした現象を調べれば調べるほど、死後の世界や超能力の存在を認め始めます。
あなたの回りにもし頑固な否定派がいたら、結論が最初にある間違った三段論法をしないように、と言ってあげてください。

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