【自分を不幸にする感情】を育てていませんか?〜感情美人への道Vol.86

私たちを悩ますのは、出来事そのものというより「出来事への自分の反応」です。 そしてその反応の仕方は、マインドフルネスの実践などの訓練で鍛え、改善する事が可能です。

皆様こんにちは。
今回は「自分が心に思い浮かべる感情」が「自分の脳の特性を変える」という事をお話します。

具体的には、寛容の気持ちを持てば「寛容さ」が、優しさの気持ちを意識すれば「優しさ」が育ち、いつも怒っている人は「怒り」を、悶々と不安にさいなまれてばかりいる人は「不安」が脳の中に育つという事です。

 

キーワードは「神経の可塑性(かそせい)」です。

スピリチュアル好きの方は「いい事を引き寄せたければ、感謝の念を持ちなさい」というフレーズを聞いたことがあると思いますが、それを脳科学の立場から見るイメージです。

1990年代まで、私たちの脳は退化する以外に、神経経路の接続は一生変わらないと考えられていました。
しかしfMRIなどの発達によって、私たちの脳は、大人になっても「意識する事によって変わる」のが分かったのです。

ロンドンのタクシー運転手を対象に行われた、有名な実験があります。
ロンドンで「ブラック・キャブ」と呼ばれる資格を取るには、ドライバーは数百の通りの名前、何十もの主要ルート、無数の近道を記憶する必要があります。非常に難しい試験で、数年の準備期間があっても落ちる人も多いそうです。
そしてこの試験に合格した運転手の脳には、ある共通の特徴がありました。
それは「海馬の灰白質(記憶と空間認識に関する部位)が、人よりはるかに厚い」こと。

他にもヴァイオリン奏者の場合、弦をネックに押し付ける動作に使われる左手の運動機能に関する部位が、一般人よりかなり発達しています。
これらの研究で、私たちが日常で意識を向けた部分の能力が、強化される事が証明されたのです。

集中に関する脳の部位を使えば使うほど「集中」することは楽になり、「思いやり」の部分を使えば使うほど、他者への愛や慈しみはより強くなります(専門的な言葉を使うと、「皮質」という部分が厚くなります)。

脳の特性は自分で変える事ができるのですから、神経の可塑性を味方につけると豊かな人生を生きるのにとても有益ですね。

 

一方、この特性を敵に回すとどうなってしまうでしょうか。

アイツに復讐してやろう!
アイツを引きずり降ろしてやる!

という気持ちを持ち続ける事は、世の中に自分の正当性や正義を振りかざし、相手を攻撃してストレスを解消しているように見えますが、自分の脳の配線をマイナスの感情につなぎ続けているのと同じ。

私たちが過去の嫌なできごとをくよくよ思い出したり、仕返しを考えたりネガティブな感情に反応していると、こうした配線が時間と共にだんたんと強化されます。
結果、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールレベルも増え、自分自身の心と体を傷付けることになります。

私たちが考え、思考することは、それが良くも悪くも心の傾向となり、現実の世界に影響してきます。

私たちを悩ますのは、出来事そのものというより「出来事への自分の反応」です。
そしてその反応の仕方は、マインドフルネスの実践などの訓練で鍛え、改善する事が可能です。

自分の感情は、「それが幸せにつながるものでも不幸を呼ぶものでも、自分自身が育てている」という感覚を持つ事が大切です。
そうすれば、毎日の行動がより慈愛・思いやりに満ちたものになり、自分の心が変わると同時に、現状も良い方向に少しずつ変わってくるでしょう。

参考文献:
『マインドフル・ワーク』NHK出版 デイヴィッド・ゲレス
『脳はいかに治療をもたらすか 神経可塑性の最前線』紀伊国屋書店 ノーマン・ドイジ

 

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