『手の内の気づき ~ ④癒しの源泉 ~ ツボの向こうに蠢く世界』

ツボの奥底からはね返ってきたそのアタリは、 また親指に跳ね返されて、またツボへと戻る。

「ツボは古代の鍼医からの伝言」

ツボとは何か?

ツボは経絡人形や経絡図に書かれている治療点。

経絡人形や経絡図には漢字でツボの名前が書かれ、

ツボの位置が点で刻印されている。

だけど実際の生身の身体を見ても、

ツボらしいものは、どこにも見つからない。

では経絡図とは何なのか?

かつて2000年以上前の中国の鍼医たちは、

ハッキリとツボが目で見えていたのか?

3500年以上前の中国大陸の80%は

大森林だった。

そこではゾウやトラも普通に歩いていた。

森の吐き出す濃密なフィトンチッドの霊気に満ちた大気。

その清冽な霊気を呼吸していた当時の鍼医たちは、

その霊気のお蔭でツボが見えたのか。

やがて冶金や製鉄の技術が開花すると、

中国大陸の大森林は木材資源として

斧やノコギリでことごとく伐採された。

丸裸になった大地から黄土が流出し川を染めた。

それと時を同じくして鍼医たちはツボを見る

能力を失ったのか。

真実は闇の中だが、そのツボが見えた記憶が

経絡人形や経絡図に遺されたのかもしれない。

ツボは古代の鍼医からの伝言。

 

「ツボの世界の扉が開く」

わたしたち現代の鍼医はもちろんツボを見ることは

できない。

私の独断だが恐らく現代人の遺伝子の

イントロン領域98%部分にツボを見る遺伝子は眠っている。

そのツボを見る遺伝子が再起動すればツボを

見ることは可能だろう。

実際にツボを見ることができた少女の実話がこの日本に

存在する。

だがその少女のツボを見る能力はその少女の病気が

改善すると消えた。

少女の病気が何だったのかは定かではないが、

体調の変化がツボを見る遺伝子をエピゲノムに

活性化したのだろう。

わたしたちはツボを見ることは最早できないが、

古代の鍼医からの伝言として

ツボを探すことはできる。

それはツボを見るのではなく、

ツボを触れることを通して。

ツボを見つけるためにはまずツボを触ること。

これが最速でツボを見つける現代における

もっとも最良の方法。

そうしてツボに触れているうちに、

ツボにおのずと手が止まるようになる。

そこからツボの世界の扉が開く。

 

「ツボの向こうに蠢く世界」

ツボにおのずと手が止まり、

ツボの世界の扉が開く。

いよいよツボ・ワンダーランドの冒険が幕を開ける!

指圧の親指にツボの奥底からアタリが来る。

コツン、ドスン、ドカン。

ツボの奥底からはね返ってきたそのアタリは、

また親指に跳ね返されて、またツボへと戻る。

まるでピンボールだ。

ツボのアタリのボールはやがて指とツボの往復に

飽きると、そこを抜け出す。

ツボから抜け出したアタリは体表のグラウンドに駆け出す。

体表は狭いツボと違って自由に動ける。

ツボの中から出て来たアタリ、いやツーボ君は

喜び勇んで体表を走り出す。

肩から手先、足先へ。

腰から肩へ、手先、足先へ。

足の三里から顔面頭部へ、胃腸へ。

体表だけではない。

そうツボから出たツーボ君は

体表のみならず内臓にまで飛び込んでいく。

ツボの化身ツーボ君は縦横無尽、

変幻自在に体表も内臓も自由に動き回る。

このツボの動き、

ツボの向こうに蠢く世界があるから、

わたしは鍼灸指圧をツールとして

癒しの治療が出来るのだ。

ツボの向こうに蠢く世界、

それこそが癒しの源泉だ。

 

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