カオスからコスモスを引き出す実践的養生法論~その参・トールライクレセプターを知っていますか?

免疫がある、免疫力がある、はイコール病気にならないこと、病気にかかりにくいこと、すなわち健康であること、の意味です。 さて、ではどうしたら、病気にならないで健康でいられるのでしょうか?

このように、ヒトのマクロファージの10種類は、それぞれが得意とする異物の抗原分子に特異的に反応することで、異物を処理し弁別し、獲得免疫の司令塔であるT細胞へと異物である侵入者の個人情報を伝達して、免疫システム全体を駆動します。

ちなみに、獲得免疫系のT細胞はマクロファージから抗原提示という情報伝達が成されない限り、単独では機能しません。

自然免疫系の最前線で働くマクロファージが抗原をつかまえて、抗原の情報を提示して、はじめてT細胞は機能するのです。

ここから導かれる結論が、「マクロファージが免疫システム全体を駆動するすべてのカギを握っている」です!

マクロファージのトールライクレセプターに抗原分子が受容されて、ヒットすること。

これこそが免疫を駆動するコツだったのです!

 

「質素な食事でもマクロファージを活性化できる」

ここのところ乳酸菌をはじめとした発酵食品が一大ブームです。発酵食品とは、乳酸菌や麹菌などの微生物がその食品のなかで繁殖することで、それらがかもしだす特有の香りや粘りにより生成される食品です。日本人が古来より食してきた味噌、醤油、酢、漬けもの、などには発酵を促した菌類がたくさん棲んでいます。

白いご飯に、お味噌汁に、昆布の佃煮に、お漬けもの。
こんな一汁一菜のレシピでは随分と質素で、いささか淋しい気分になるかもしれません。
しかし、お味噌汁や、お漬けもの、のなかには発酵菌の細胞壁成分であるペプチドグリカンやリポポリサッカライドがもれなく大量についてきます。

すでに指摘したように、乳酸菌などの発酵菌の細胞壁成分であるペプチドグリカンはヒトの腸管内に棲む粘膜マクロファージのトールライクレセプターのTLR2にヒットします。また発酵食品や野菜や果物や海藻に共生しているパントエア菌などの細胞壁成分であるリポポリサッカライドはTLR4にヒットします。

一汁一菜の粗末な食事がこのようにマクロファージのトールライクレセプターにヒットする分子を豊富に含み、マクロファージを活性化する非常に優れた免疫活性化の効能があることには、まことに恐れ入ります。

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「ヒートショックプロテインはマクロファージの味方」

体温を上げるとヒトの細胞核遺伝子はセントラルドグマを起動して、生体防御タンパク質のヒートショックプロテインを産生します。このヒートショックプロテインがマクロファージのトールライクレセプターのTLR4にヒットすることで、マクロファージの細胞膜は花が開いたような活性型に変化します。

つまり体温を上げるようなエクササイズや、ヒートショックプロテインの産生を押し上げる鍼灸指圧のような養生医療は、ヒートショックプロテインを通じてマクロファージをよく活性化し、免疫力を上げるといえます。

ヒートショックプロテインはマクロファージの味方、サポーターだったのです。

 

「免疫を上げるコツはマクロファージのプライミングにある」

なぜ身体を温めると免疫がアップするのか? なぜこの食材を食べると免疫力が上がるのか?

本講の初めに提示されたクエスチョンはマクロファージのトールライクレセプターの機能を解読することで答えが出ました。

身体を温めるとヒートショックプロテインがマクロファージのトールライクレセプターにヒットするからマクロファージが活性型に変化して免疫がアップするのです。

発酵食品を食べると発酵食品に含まれる菌類の細胞壁成分であるペプチドグリカンやリポポリサッカライドがマクロファージのトールライクレセプターにヒットするからマクロファージが活性型に変化して免疫力が上がるのです。

このマクロファージが活性型に変化することをプライミングと呼びます。

そしてマクロファージのトールライクレセプターのナンバーにひとつの分子だけが反応するよりも、TLR2とTLR4が同時に刺激されるような養生法が、よりマクロファージを劇的にプライミングすることまでわかってきました。

発酵食品を食べて、エクササイズに励み、鍼灸指圧を受ける。そんなTLR2とTLR4の同時ヒットなライフスタイルが貴方のマクロファージをバラエティー豊かに劇的にプライミングします。

免疫を上げるコツは、マクロファージのプライミングにありました!

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「マクロファージをプライミングするライフスタイルの提案」

いま考えられるマクロファージをプライミングできるだろう養生法を以下に列挙してみます。

①発酵食品を豊富に含む和食の励行。

②リポポリサッカライドを豊富に含むイネ、コムギ、ライ麦、ソバ、レンコン、ジャガイモ、サツマイモ、シイタケ、キャベツ、レタス、ハクサイ、コマツナ、ツルムラサキ、ホウレンソウ、ニンジン、ダイコン、リンゴ、ナシ、バナナ、緑茶、海藻などの自然な摂取。

③ヒートショックプロテインの分泌を促す身体が温まるヨーガや気功や筋トレやストレッチなどの各種エクササイズ。

④ヒートショックプロテインを旺盛に誘導する鍼灸指圧を受ける習慣。

こんな①から④までのマクロファージ・プライミングなライフスタイルを参考にしながら、皆様も自分なりの免疫アップ術を組み立てて励行し、免疫力が豊かな病気にかからない健康な一生をゲットしてください。

 

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