簡単本格糠床講座 7〜糠床の菌の発酵速度における人間側の対応

糠床を持っていると季節感を菌と共に歩めて、また違った1年を経験出来ます。

前回は容器の大小について書きました。
この記事を書いているのは夏真っ盛り、という事で、糠漬けが美味しい時期ですが、今回は糠床の菌の発酵速度における人間側の対応、という事で今回書かせて頂きます。

 

☆菌のスピードに徹底的に合わせる

糠床を支配しているのは人間ではなく、様々なです。
この菌が生きる事で人はそれを「発酵」と呼んだり、「腐敗」と呼んだりします。
これらは彼らの生きた結果を言葉にしているだけで、常にそこには「ただ動き」があります。
ただ動きがそこにあって、そこに人間の都合で発酵だとか腐敗だとか、そういう事を概念や定義で決めつけているにすぎません。

しかし、糠床というのは人の都合で人が食べるのだから、当然美味しく安全でなければなりません。
そこで非常に重要なのが、菌の「動きの速度を知る」という事です。
この速度の知り、そこに身心で合わせるのが糠床の極意、と言っても過言ではありません。
現代の365日いつも同じ、というような社会的速度など彼らに一切当てはまりません。
それらを一切捨てて、美味しい糠床を作るためには彼らと共に同じ速度で歩む必要があります。

 

☆菌の速度の変化をビデオ再生で例えてみると

秋・再生
冬・スロー
春・休憩
夏・2倍速
となります。
春の休憩、というのがイマイチ解りにくいと思います。
この春、という季節は実は身体の変化も大きく、さらに野菜も芽吹いたり急に固くなったり、水分が減ったりと、非常に変化が激しい時期です。
この時期に無理するよりも、ゆっくりとした心持で過ごす方が良いのです。
糠床が上手くいかないなら、しばらく様子を見て、自分の体調や感覚を養う、という事をする方が良い、という意味の休憩です。
色んな事が活発に動く春ですが、糠床はこの時期最も慎重になりたいところです。

 

☆夏と冬では倍以上の速度の変化

私の例えでは秋を通常再生としているのは、気温も比較的安定して体調的にも過ごしやすく、そこを起点にすると解りやすいからですが、夏と冬では2倍以上の速度の開きがあります。
ここは安定を求める現代社会人では「頑張ってついて行かないといけない」、というレベルです。
今時真冬でも胡瓜や茄子が食べられる時代です。
そんな人間社会の安定感というのは菌はお構いなしです。
ですから、夏1日で漬かっていたのに冬は2日経っても漬からない、というのは当然起こりえます。
ここで無理に色々やるとバランスが崩れます。

逆に、冬2日漬けたのだから夏も2日漬けてそれで調度漬かっている、というのはそれもおかしいのです。
その場合、明らかに菌が疲弊しているか、極度の塩分不足です。

最も、冷蔵庫で管理されている方は、冷蔵庫という安定的環境にありますから、そこはある程度安定感は保たれています。
このように、糠床を持っていると季節感を菌と共に歩めて、また違った1年を経験出来ます。
世の中365日同じように動こうとしますが、菌なんか見ていると冬せかせかしないで、のんびり構えてて良いんじゃないか、と心底思いますね。

 

井上漬物店HP
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