☆美味しい糠床の作り方とは〜簡単本格糠床講座シリーズ ③

先ず重要な事は、「美味しいと思う頃の糠床の塩気を充分覚えておく」という事です。

前回、糠床管理の「混ぜる」という事に注目して書かせて頂きました。
補足させて頂くと、一切混ぜなくても良い、というわけではなく、容器によって適切な混ぜ方、混ぜ具合がある、という事です。
この部分は是非色々と試して頂きたいと思います。

 

☆糠床も漬物も重要な水(塩)加減

何回か野菜を糠床に投入して、糠漬けを作っていると気になってくるのが「水分量」です。
糠床がべちゃべちゃしてきた。
糠床に水が溜まってきた。
こういう状態になると思います。
こういった時に基本的な管理方法としては、

・水そのものを抜く
・クッキングペーパー等で水を含ませて捨てる
・新しい糠を入れて調節する。

という形がベーシックな方法だと思います。

水そのものを抜くに関しては、そこに旨味がある場合があるので、そこまで水が溜まる前に糠を入れて調節しておきたいところです。
ここで重要視して頂きたいのは、水分量と共に「塩分濃度」です。

水分量、というのは、べちゃべちゃしている、水が浮いている、という目視の世界になりますが、塩分濃度は見ただけで判別できません。
後で書きますが、「糠床の味見はとても重要です」

糠漬けに限らず、浅漬けでもなんでもそうですが、この「塩分濃度」というのは非常に重要に要素です。

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☆水分と塩分の関係性

糠床の水分が増えますと不都合が生じてきます。

・塩分濃度が下がる。
・水気を好む菌が繁殖する。

この二つは糠床の味や糠床そのものを左右する重要な要素です。
大抵この二つは同時で進行します。
菌の性質、というのは、ある一定の環境で安定すれば環境が変わらない限りは、その環境で最も繁殖する菌が大多数を占めるようになります。

凄く酸味のある糠床なら、乳酸菌一杯、という事になり、この状態だと他の菌が入り込む余地がなくなります。
ここに環境を変える、例えば空気を入れる等によって、乳酸菌の活動を抑えると、その分だけ菌の勢いが抑えられたところには「他の菌が繁殖する余地が与えられる」、というわけです。
水分が増える、という事は、そこに菌が繁殖する余地が水分として与えられるわけです。

そこに塩分濃度が減ってきますので、水分が増えるという事は大変な変化が糠床の菌にはある、と見ていいかと思います。
それに、塩分の少ない水気が容器の縁などに付きますと、相当早くにカビが来ます。
これをほっとくと色付きのカビが繁殖して、糠床そのものが危うくなります。

容器にカビが生えてしまった時の対処、防止するのに効果的な方法は、酢を含ませた物で拭くのが効果的です。仕上げはティッシュペーパーなどで水分は綺麗にふき取って下さい。

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☆糠を足す、水分を抜いたら必ず味見を

先ず重要な事は、「美味しいと思う頃の糠床の塩気を充分覚えておく」という事です。

塩分濃度というのは、特殊な計器があるなら別ですが、基本的には味見で無ければ見た目では解りません。
水を抜いた、糠を足した後は必ず味見をして、塩気を確認しておく必要があります。

ですから、糠床管理というのは「常に糠の味を確かめる」というのが実は基本となります。
出来上がった漬物よりも、糠床その物の味がどうであるか、というのが非常に重要です。

そして人間が塩気を感じる特性として、「温かい物は柔らかく、冷たい物は鋭敏に感じる」ようになっていますので、糠床そのものの温度、というのも加味して頂き塩気の確認をして頂きたいと思います。

当然、塩気が足りないなら塩を足して調節していく、という事になります。

※まとめ

・水が増えてきたら早い目に糠を足す。余りにも多い場合は水を捨てる。
・糠床は出来るだけ糠そのものを味見して「美味しい時の塩気」を覚えおく。
・塩気は温かい物は柔らかく、冷たい物は鋭く感じる、という味覚の特性を加味する。
・糠床に糠を足して水分を調節していく。
・味見をして塩気が足りないなら塩を足して調節していく。
・容器のカビは酢を含ませた物でふき取り、さらに水分は良く拭っておく。

 

京都で創業明治5年の漬物屋「井上漬物店」
http://www.inoue-tsukemono.com/

 

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