☆美味しい糠床の作り方とは 〜簡単本格糠床講座シリーズ ②

実は、糠床というのは、全て撹拌してしまうと美味しい糠床になりません。 それどころが欲しい乳酸菌が何時まで経っても育ちません。

前回、美味しい糠床の条件、というのをお伝えしました。
今回は具体的にどうやって管理したら良いか、というところに入って行きたいと思います。

 

☆毎日混ぜるという管理の煩わしさ

「糠床は一日一回混ぜましょう」というのは通説で、糠床を作った事が無い人でも知っている話ですね。
作った事がないのに混ぜる事は知っているので、「健康に良いのは解るんだけど、毎日混ぜないといけないなんて邪魔くさい」、とこうなってしまい、一歩目が出ない人も多いかと思います。
そういう方は是非当店の漬物を買って頂けたらと思いますが(笑)。

冗談はさておき、まさにこの管理の邪魔くささ、というのが糠床作りを躊躇する大きな要因となっています。
しかし、実際のところ家庭でしたら、混ぜる手間というのは思ったほど無い、というより、むしろ混ぜすぎたらダメ、というレベルです。

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☆混ぜない糠床

混ぜない、と言い切ってしまうとこれは間違いになってしまうのですが、ご家庭で作られる「糠床の容器」というのが混ぜるという事に関しては、最も重要な要素になります。
今どこの家庭でも「壺」なんかで糠床を管理されているところは少ないと思います。
ほとんどが管理しやすいように、冷蔵庫入るようなタッパーが主流だと思います。

さて、ここで「壺」「タッパー」の違いを良く見て頂きたいのです。
材質が違う、というのは確かにありますが、それよりも形です。
直ぐに御分りかと思いますが、薄さ、というか、底の深さ、というか。
壺は「底が深く」、タッパーは「底が浅い」。
この違いが実は管理で非常に重要な点となってきます。

イメージして頂くと簡単なのですが、壺に糠床が入っている場合「混ぜて下さい」と言われたら、ほとんどの人は良く混ぜようとしますから、手を壺の縁から入れて底まで落とし、そこから一気にひっくり返す、というような動作をします。
片やタッパーで「混ぜて下さい」というと、このような動作はせずに、「撹拌」のような恰好になります。

 

☆糠床は撹拌してはダメ

実は、糠床というのは、全て撹拌してしまうと美味しい糠床になりません。
それどころが欲しい乳酸菌が何時まで経っても育ちません。

糠床は色んな菌がいて良い、というのは当然ですが、しかし人間に都合の良い糠床というのは乳酸菌が増えている糠床です。
乳酸菌が増えると腐敗菌の入る余地も無くなりますし、管理もさらにしやすく、体に良い、という形になってきます。
そして何よりこの乳酸菌は、酸素が余り好きではありません。

さらに乳酸菌よりさらに腸内では善玉菌といわれる「ビフィズス菌」
これに至っては「偏性嫌気性菌」といわれ、酸素に当たると死滅してしまいます。
腸内細菌を考えると、ちょっと手術で開腹、というのも躊躇ってしまいますね。
そういう意味で、撹拌してしまうと、「糠床の美味しい部分」というのが何時までも出来上がらない、という格好になってしまうのです。

具体的なタッパーでの混ぜ方は当店でもお伝えしているのですが、糠床に野菜を常にいれて、常に糠漬けを作られるような方などは、野菜を入れるときに糠床は動きますので、そこからさらに混ぜる必要はほとんどありません。
酸味が出すぎた時に混ぜる、という具合です。
なので、タッパーで仕込まれる方は実はほとんど混ぜなくて良い、という形になってきます。

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野菜を入れない時間がある場合は、自分が壺に手を入れて混ぜるように、縁から手を入れて軽く上下をひっくり返すイメージで、真ん中は保つようにしてください。
完全に全てをひっくり返しても都合が悪いので、軽く両端の糠を寄せて真中に詰める、という感じです。
なので、混ぜるといっても「よいしょ」で終わりなので、数秒で終わってしまいます。
上記の通り、糠床の管理といっても、大変さというのはほとんどありません。
もし旅行に出られるというのなら、出かけられるその日に若干しっかり目に混ぜて頂いて冷蔵庫に入れて貰ったら何の心配も要りません。
是非タッパーで簡単な管理で美味しい糠床を作ってみてください。

 

京都で創業明治5年の漬物屋「井上漬物店」
http://www.inoue-tsukemono.com/

 

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