令和6年8月メッセージ — “生”と“死”が交錯する真夏に私たちは、懐かしき“たった一つの表情”を見せ合う運命の再会に身震いする

8月

米大統領選をめぐる動揺とパリオリンピックの熱狂のはざまで — 八白土星8月は、自身の人生が新たなステージに入る“産声”を感じる時

8月を迎えました。連日、全国的に35℃を超える猛暑が続いていますが、読者の皆様は体調など崩されてはおられませんでしょうか。先月26日より開催されているパリ五輪では、連日、日本代表チームの奮闘が報じられています。今回の五輪で金メダル第1号となった、柔道女子の角田夏実さんが表彰台で涙を流した姿には、テレビの前で拍手を贈った方も多かったでしょう。柔道男子では、阿部一二三選手が2回戦で敗退した妹・詩選手の無念を晴らす金メダルを獲得しました。今後もメダルラッシュが期待されますが、まずは大会が無事に終わり、代表チームが怪我もなく帰って来られることを祈りたいものです。

政治に目を遣ると、先月はアメリカ大統領選をめぐって、トランプ前大統領の暗殺未遂にバイデン現大統領の退陣表明と、驚天動地の出来事が世界を震撼させました。イギリスでは保守党から労働党に政権が移り、フランスでは大統領の所属政党と議会の多数党が異なる“宙吊り議会”が出現。日本では、秋の自民党総裁選をめぐって、既に“ポスト岸田”へと関心が移っています。

今年は三碧木星・甲辰の年ですが、正月にこの『TRINITY』誌上で述べた通り、“甲”の年は、為政者の交代が多く起きている年です(『三碧木星甲辰・令和6年のスタートにあたって — 目の前の世界全てが革まる“雷鳴”に、私たちは恐怖を覚えつつもその閃光に一縷の希望を託す』https://www.el-aura.com/hatta20240101/ 参照)。この夏以降も、世界的に政変に繋がる大きな事件が起こるかもしれません。国内外とも明るいニュースに乏しい状況ですが、未来への希望を失わぬ夏としたいものです。

立秋を迎える8月7日、月運が九紫火星から八白土星に移ります。八白には “交代、曲がり角、断絶、廃業、終止”といった象意があります。また“改革、連絡、再起、復活”といった面も強調されます。八白は、“山”を表す星です。山の天候は変わりやすいという意味から、今月は皆の気分がコロコロ変わりやすく、周囲に迷惑を掛けやすくなるかもしれません。

運気も急変しやすいので、特に問題もなく好調だった案件が突然、ストップや延期になるという事態となる可能性があります。“廃業”や“終止”の象意があるように、今月は資金ショートで中小企業が破綻したり、また自営業が不景気に持ちこたえられず廃業を余儀なくされるなど、経済は復活の糸口を見出しにくい状況でしょう。

天井知らずの物価高への対応で、最低賃金の議論が進んでいますが、中小企業の存立に関わる問題でもあり、雇用の不安定化や企業の倒産増加を、後押ししてしまう危険性も孕んでいると言えそうです。このような状況下、生活苦に喘ぐ市井の人々が、学費や生活費などを賄う為に、投資や副業などで二次収入をつくる動きも活発となりそうです。

8月の月運の干支は、“壬申(みずのえさる)”。秋を迎えた、澄んだ大海のイメージです。今月は精神状態が比較的安定し、特に資格や免許の取得に向けての受験勉強は成果が表れそうです。大学受験を目指している受験生は、夏期講習等で得た知識が偏差値の上昇に繋がるでしょう。“申”の字は器用さ、臨機応変さも意味します。ミュージシャン、コピーライター、デザイナーなど時流を読む仕事をしている方は、出世の足掛かりに繋がる代表作に恵まれるかもしれません。

“壬”の字は織機に巻き付けられた糸を指し、“母親=羊水”が語源です。 女+羊=“妊”で、妊娠の暗示もあります。 この夏、恋人や配偶者がいる方は、子供を宿す可能性があるかもしれません。 ムスヒ=結びの力が強まる時です。子宝を望んでおられる方には良い時ですが、まだ成人していない男女のカップルは、望まない妊娠には十分注意をしましょう。

二十八宿は“虚宿”。今月は、誰もがプライドが高くなり、和合精神をよりも自身の信念や主張を優先しがちな傾向になるため、孤立する場面が多そうな気配です。SNSでメッセージを送るより手紙を書いたり、ネット検索より読書をして目的の言葉について調べるなど、“手”を使う作業にツキがありそうです。習い事や読書など、研鑽を積んだことは今後、大きな財産となってゆくようです。

重要な契約や勝負事に関しては、大安の8日、14日、20日、26日、百事吉、よろづよしの12日、14日、一粒万倍日の1日、16日、28日、そして天赦日の12日に設定すると良いでしょう。特に12日はよろづよし、天赦日の強運デーです。デートや告白、プロポーズを考えている方は、上記の日を選びましょう。なお、今月の暗剣殺は東北ですが、1日から12日までの間は、天一天上となります。月初は家の掃除さえしっかりしておけば、方位に障りはありません。

入れ替わる目の前の世界に新しい希望を見出す8月 — 数かぎりなき、たったひとつの表情を最愛の人と見せ合う夏に

西洋占星術の観点で言えば、先月は海王星が魚座で最後の逆行を始めました。この夏から年末に掛けては、豪雨や津波などの水害の発生が懸念されます。7月は山形県、秋田県で記録的な大雨が発生し、救助に向かっていた警察官が殉職するなど、大きな爪痕を残す事態となりました。今月も、台風による土砂災害の発生には、十分注意したいところです。また、この時期は再び拡大しつつあるコロナ感染や食中毒にも、細心の注意を払いましょう。

4日20時12分には、獅子座で新月を迎えます。これまで趣味にとどめていたことや特技、余芸を収入化するフェーズに入ります。また、この時期は友人とのドライブや音楽フェスに足を運んだり、自分の趣味にお金をかけるなど、とにかく自分にとって“楽しい”と思えることを徹底してやりましょう。日々の生活を楽しむことに集中することで、運が開ける時です。

5日は、乙女座の水星が逆行を始めます(~8/29)。この時期は、メールの不達やコミュニケーションの行き違い、交通機関の遅延等に注意しましょう。15日からは逆行する余り、獅子座まで戻ります。昔叶えたかった、いつの間にか諦めた夢への情熱が蘇り、純粋な気持ちで再び取り組む方もいるかもしれません。また、かつての恋人や友人から突然の連絡があったり、復縁や復活のチャンスに恵まれる人も多いでしょう。

また同日、恋愛や金運を表す金星は、乙女座に入ります(~8/29)。この時期は周囲との人間関係の構築、調整に腐心する姿勢が求められる時です。 初夏に絆が深まった友人、知人との楽しい間柄を発展させ、一肌脱ぐことで確固たる関係にしてゆくと、新たな善き出逢いに恵まれそうです。健康診断など、身体のメンテナンスにも気を遣うと良いでしょう。

火星は今月、双子座に滞在しています。夏休みを利用してネット上で知り合った人に会いに遠方へ足を運んだりすると、将来、一緒に仕事をする仲間や恋人になる存在との絆が深まるでしょう。この時期、社会では戦争や対立など、大小の諍いが頻発する気配ですが、他人への攻撃や誹謗中傷は、返り血を浴びるので距離を取るのが得策です。

そして20日3時25分には、水瓶座で満月を迎えます(スタージェンムーン)。この時期は人間関係が整理され、これから進む新しいステージを共に生きる、自分にとって必要な人が絞られる時です。独立や転職を決意する人も増えるでしょう。これまで蓋がされていた出来事が露見したり、隠していた気持ちが表に出たりと、社会面、個人面ともに大きな変化が起きるかもしれません。

これまでご縁のなかったようなタイプの人との新たな交流の中で、価値観をアップデートし、新たな人生の基盤を築くチャンスの時です。それぞれに“夏”を楽しみながら、秋以降に自分の進むべき道について、純粋な気持ちで未来予想図を描いてみましょう。

最後に、今月は例年同様、相聞歌(互いに安否を問って消息を通じ合う歌)の名手であった歌人・小野茂樹(1936~70)が遺した第一歌集『羊雲離散』から、彼の代表作である夏の一首を引きましょう。

あの夏の

数かぎりなき そしてまた

たつた一つの 表情をせよ

小野茂樹は、17歳にして既に短歌を七百首詠む、早熟の天才でした。小野には青山雅子という初恋の女性がいましたが、彼が早稲田大学に進んだ年に雅子は別の男性と結婚。その大きな喪失感に、彼は煩悶します。時が経ち、27歳になった小野は別の女性と結婚しますが、早くも翌年、夫婦生活は破綻。そして、同じタイミングで離婚をしていた雅子と彼は、運命に導かれるように再会を果たします。小野の初恋は、お互いの再婚という形で、成就されたのでした。

冒頭に挙げた歌は、小野茂樹が雅子と運命の再会を果たした際に、お互いを純粋に愛していたあの頃に還ろうという、彼なりの決意と、最大限の愛情表現であったのかもしれません。小野はその5年後、33歳の若さで、不慮の自動車事故によりこの世を去ります。雅子との夫婦生活は僅か5年程度でしたが、最愛の女性と一緒に暮らすことができたその早すぎる晩年は、何物にも代え難い、宝石のような時間だったのではないでしょうか。

人生は、いつ終わるかわかりません。ある日突然、心臓が止まるかもしれませんし、川や海で溺れ、そこであっという間に命を落とす可能性も、ゼロではありません。

真夏は、“生”と“死”が、交錯する季節です。こうして何気なく過ごしている間にも、刻一刻と、私たちは“死”に向かって、進んでいます。小野と雅子がかつて過ごした輝かしい夏、ふたりはお互いに、数かぎりない愛に溢れた、唯一の表情を見せ合ったことでしょう。たとえ肉体は滅ぼうとも、真実の愛を受け取ることができたその喜びは、魂にしっかりと刻まれ、永遠に生き続けるのです。この8月が、TRINITY読者の皆様にとって、最愛の存在との魂の再会に恵まれ、その人にだけ見せる“たった一つの表情”を見せることができる夏となりますよう、祈念しております。






(了)

 

 

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