アーユルヴェーダによれば、「病気はあらかじめ予防するにこしたことはない」とし、免疫を高めるために普段からできるさまざまなことを提案していますが、その中でも特に強調されることが多いのが、「消化力を高めて、できるだけ体に毒素が残らないようにすること」。
さて今回から数回にわたり、免疫を高めるためにできる普段の食品選びのコツや、さまざまな食品が体に与える影響などについて、ご
紹介していきたいと思います。
さて、初回の今回は、アーユルヴェーダにおいて消化力を促進するとされる「酢」と「ギー(精製バターオイル)」の消化効果についてご紹介したいと思います。
■『酢の効果』
一般的に、繊維質が多く含まれている食事をすると大きなメリットが得られるといわれていますが、その理由の一つは、私たちの腸内にある善玉菌が、食事からとったこれらの繊維質を短鎖脂肪酸(健康維持に欠かせない役割をはたす脂肪酸)に分解し、これが免疫系にプラスの効果を与え、例えば喘息、腸疾患、心臓病、糖尿病などの炎症反応を減少させる役に立つためです。
このため、繊維質の多い食事はほとんどの人によいとされています。
酢の場合、酢の主成分は酢酸(酢酸塩)のため、少量の酢や、発酵保存された食品のような、酢をいくらか含む食品類をとることもまた、炎症を減らすと考えられています。
イタリアでは伝統的に、食前にバルサミコ酢をくいっと飲みほし、食欲を増進させると同時に、これからとる食事の消化促進をはかるという習慣があるといわれていますが、これは、アーユルヴェーダ的に見た場合、どうなのでしょうか。
これについては、アーユルヴェーダでは同意しつつも、ちょっとした注意点もそえています。
それは、酸味を強く持つ酢のような食品は、基本的に「地」要素と「火」要素から構成されているため、適度な酸味は食欲と消化を改善しはするものの、過剰にとってしまった場合、体を熱くし、灼熱感や炎症状態を引き起こすことがあるというものです。
特にこれは、もともとピッタ体質の人や、ピッタのアンバランスが一時的に起きている状態の人に当てはまり、これらの人たちに対しては、一般的に酢や発酵食品は避けることを提案しています。
一方、他の体質の人は、食べ物と一緒に少量の酢や発酵食品を加えると消化が助けられ、免疫系を改善し、炎症を軽減できるというメリットがあります。
ピッタ体質あるいはピッタが悪化中の人にとっては注意が必要な酢。
イタリア風にバルサミコ酢を食前にぐいっとやることは、ピッタ体質の人に限ってはおすすめの方法ではないのです。
これはもちろん、バルサミコ酢だけでなく、一般的に健康といわれている自然酢についてもあてはまります。
さて、繊維質が豊富な食事以外に、腸内細菌を改善し、炎症を減らすための代わりになるものは他にはないのでしょうか。
それが、ギーです。
■『ギーの効果』
インドの食卓やお菓子には欠かせないほど、頻繁に使われるギー。
このギーもまた、短鎖脂肪酸(酪酸)で構成されています。
そしてこの酪酸は、酢に含まれる酢酸よりも炎症を減らす上で有益なことが判明しています。
酸味が強い酢に比べ、ギーは甘味があり、「地」要素と「水」要素から構成されています。
これは、ピッタとヴァータを緩和する効果がバツグンということです。
ギーは甘味でありながら、消化の火を起こす特別な質が備わり、これが消化力を改善し、炎症を減らしてくれるというわけです。
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今回、酢とギーのそれぞれの効果についてお伝えしましたが、どちらが優れている食べ物なのかという問題ではなく、そもそも食品を薬とする場合、体質がそれぞれに違うすべての人たちに効く、たったひとつの処方箋のようなものはないということです。
同じものを食べても、体質が違えば違う効果が現れるというわけです。
ただ、どれかひとつのドーシャ単体タイプの人はとても少なく、たいていの人は二つのドーシャの混合タイプ(例えばピッタ・カファ、カファ・ヴァータなど)のため、混乱してしまうこともよくあると思います。
そんな時はシンプルに、「すべてのものをほどほどにとる」ことがおすすめです。
サラダには酢を少し入れ、トーストにはギーを少し塗る。といった具合に、すべての味を、ほどほどの量にしましょう。
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