■体に備わる自己治癒力を高める〈9〉 ~さまざまな断食で、脂肪燃焼力をリセット&解毒 part.6~インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol.112

前回では、「浄化目的のケチャリは、脂肪代謝のスイッチを早く入れるためにノンオイルで作るのが効果的。ギーを使う場合は少なければ少ないほどいい」ということをお伝えしてきました。

さて今回は、アーユルヴェーダにおいて効果的な解毒方法として何千年もの間実践されてきた、「ギー(精製バターオイル)を使った浄化方法」についてご紹介していきたいと思います。

これは一見、前回までの「オイルを最小限に使った方がメリットが得られる」という内容とはかなり矛盾しているように思えます。

ましてや解毒とは程遠いような印象のある、消化の重たい乳製品類(チーズ、ヨーグルト、ミルク、アイスクリームなど)のひとつで、しかもオイルのギーを使って解毒?……これは一体どういうことなのでしょうか。

アーユルヴェーダの方法は、ある意味とてもユニークで、アーユルヴェーダの解毒はギーなしには語れないほどです。

そもそもギーがなぜ、浄化するための最適なオイルとして選ばれ、伝統的に使われてきたのでしょうか。

実際の解毒方法をお伝えする前に、まずはそのあたりのところに触れておきたいと思います。

 

■腸内では、ギーの主成分「酪酸」が自然に作られている

(気温が上がると液状化するギー)

ギーは、無塩バターから乳固形分を加熱によって取り除いたオイルで、室温では固形になり、気温が暑くなると溶けて液体になります。

引火点が高いため、調理に使うには最適なオイルのひとつで、インドでは一般的な料理にはもちろん、アーユルヴェーダでもかなりの頻度で使われているオイルです。

さて、このギーの主成分は、バターよりも濃縮された酪酸です。
実はこの酪酸、腸の中でも自動的に作られていて、私たちが良質な繊維を食べるたびに、腸内の微生物によってその食べた繊維は、ギーと同じ成分、酪酸に作り変えられているのです。

この酪酸は腸壁を保護する役割を担っているので、腸内に酪酸が十分にある状態を維持することは、体全体の健康維持にとても重要です。

このため、ストレスや不健康な食品を食べているなどの原因により、消化器官がうまく機能しなくなると、腸内の微生物へ影響を及ぼし、この酪酸をうまく作ることができなくなります。
その結果、腸内には質の悪い脂肪酸ができあがってしまいます。

これがアーユルヴェーダが教えるところの「すべての病気は胃腸から始まる」のいわんとする部分だと思います。

アーユルヴェーダでは、腸関連の不調の治療のために、ギーを使った浣腸や他の治療法が一般的によく用いられています。

 

■ギーは良質オイル類が持つ特徴をほとんど兼ねそろえている!

(ギーは、内服と外用のどちらにも使われる)

ギーは、酪酸(短鎖脂肪酸)の最高の源となるひとつですが、酪酸以外にもさらに、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の両方のオメガ3とオメガ9必須脂肪酸、さらにはビタミンA、D、E、Kが詰まった、栄養たっぷりのオイルです。

また、ギーの酪酸のような短鎖脂肪酸は、中鎖脂肪酸や長鎖脂肪酸のように最小限の消化力や肝臓と胆嚢による多くの消化力を必要とする脂肪酸とは質が違い、胆汁によって分解される必要がないので、体や結腸の細胞はすぐにエネルギーとして利用することができる、体にとても優しいオイルです。

……このようにギーは、良いオイル類が持つ質をほとんど兼ねそろえている稀なオイルとして、アーユルヴェーダでは何千年もの間重宝され、ギーを摂取し、また外側から使う方法が実践され、腸の健康と機能をサポートするための治療法として成功をおさめてきたというわけです。

◎次回では「ギーを使った浄化から得られるメリット」をお伝えしたいと思います。

 

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(トップ画像/繊維質は腸内で酪酸に変わる)