■人間を癒す薬としての植物。~11~インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』~vol. 186

ハーブ

インド生活では、カレーの匂い、お香の匂い、空気中を舞う埃っぽい匂いや灰になったゴミの匂い(道路のそちこちに大きなゴミ捨て場があり、ゴミをその場で燃やしたもの)、排気ガスの匂い(リキシャで数分走っただけで鼻の穴が真っ黒になります)、道路を堂々と散歩するバッファローの群れの匂いなど、さまざまな匂いに囲まれ暮らしていましたが、

イスラム教徒が営む香水屋(さまざまな香水はもちろん、ローズウォーターやお香、フランキンセンスやミルラ、ベンゾインなどの樹脂なども売っています)をたずね、そこが醸し出す香りを嗅ぐときは、いつも至福の時でした。

鼻の穴は脳の入り口ともいいますが、鼻から吸い込むハーブのさまざまな匂いは、即効でヴァータをリフレッシュさせる効果があるので、日本の常識が全く通用せず、物事が予定どおりにいかずに何かとストレスをためがちだった重い時期も、こういった香りアイテムにだいぶ助けられたと思っています。

さて今回は、芳香性のハーブの効用についてお伝えしたいと思います。

 

★ヴァータを癒す、芳香性ハーブ
(神経を鎮静させ、けいれんを止めるハーブ)

神経を鎮静させるハーブは、過剰になったあるいは欠乏した神経機能を調整するために用いられる刺激薬、あるいは鎮静薬で、神経系の機能を強化するために使われるハーブと考えられています。

こういったハーブは、心へ強く働きかけ、精神の健康と明瞭さを促進し、心理的なアンバランスや精神疾患の治療にも役立つと考えられ、駆風作用や健胃作用をもち、痙攣を和らげ、震えを止めるハーブが多いのが特徴です。

これらのハーブは、芳香性のアロマハーブであることが多く、ミントやセイヨウカノコソウ(バレリアン)のような香りのよいアロマハーブがこれにあたります。

アロマハーブは神経系の主要なエネルギー「プラーナ」(空気要素からなる生命エネルギーで、気とも呼ばれるもの)を多く含むため、直接的な効き目があり、私たちの心と感覚器官をオープンにし、身体経路の詰まりを緩和して通りをよくし、痛みを食い止め、心身のエネルギーの流れをスムーズになるよう促し、元気を回復させます。

アロマハーブはまた、呼吸器系の疾患に効果があることも証明されていて、他にも月経痛や頭痛を和らげるのに役立つといわれています。

ハーブ

(ニンニクたっぷり、インドのガーリックナン)

 

・神経質さはヴァータのサイン

一般的にアーユルヴェーダでは、神経系を司るドーシャはヴァータで、神経質な状態はをヴァータ体質やヴァータ乱れの証と考えられています。

ヴァータは神経反応を支配し、空気や風のような性質を持ち、衝動的で波乱万丈、過敏な性質があります。

ヴァータは、栄養素や神経系と骨組織を維持するための脂肪分の同化が起こる場所・大腸(結腸)に蓄積します。

このため、大腸部分のヴァータを治療することが、神経系のヴァータ疾患を治療するための根本的な治療法となることが多く、ヴァータを緩和できるハーブは、大腸と神経系の両方を治療することができるということです。

神経系の病気のほとんどはヴァータの病気で、神経痛、腰痛、坐骨神経痛、麻痺、変性神経疾患の多くは、ヴァータの病気です。

ただ、感情的あるいは神経的な障害は、ピッタに起因する怒りのように、他のドーシャが絡んで引き起こされるケースもあります。
ピッタやカファが過剰なためにヴァータが悪化している場合は、ヴァータではなくピッタやカファに働きかける必要があります。

恐怖や不安などのヴァータ的な感情は、腎臓や副腎を弱らせ、神経にダメージを与え、私たちに不眠や精神状態の不安定、神経痛、けいれん、しびれなどの典型的なヴァータの症状を引き起こし、最終的には神経系の衰弱に繋がる可能性があるので、注意が必要です。

ほとんどの芳香性のある神経強化ハーブは、ヴァータを動かすことができるので、これらの障害の背後にある閉塞したヴァータや生命エネルギーの淀みを取り除くために役立ちます。

これらのハーブのいくつかは、芳香性だけでなく、重たく鈍いタマス的な特性を持っています。
その特性は、地に足が着かない落ち着きのない不安定なヴァータにちょうどよいものになります。
このようなハーブには、アギ(アサフォエティダ)、ニンニクなどがあります。

ハーブ

(インドではヒングと呼ばれるアギ〈アサフォエティダ〉は、腸のヴァータを癒すハーブのひとつ)

ただし、ジャンクフードや栄養のない食べ物を食べることが習慣になっていたりするなど、栄養不足が原因で神経組織が損なわれてしまっている場合は、アシュワガンダやリコライス(甘草)といった栄養がたっぷり入ったハーブが必要になります。

また、芳香性の神経ハーブを過剰な使用すると、それらのハーブがもつ乾燥作用と過剰刺激により、神経をさらに弱める可能性もあるので、あくまでも使いすぎないことが大事です。

 

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(トップ画像/ミントのような芳香ハーブは神経強壮剤)