■人間を癒す薬としての植物。~10~インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』~vol. 185

ハーブ

さまざまなハーブに囲まれて暮らした長いインド生活は、私にとって、

「薬は病院で処方されるもの」という長年の思い込みを、いい意味で一掃してくれるものでもありました。

薬というものは本来、高いお金を出して手に入れるものなどではなく、その辺の道端に生えていてもおかしくないものなのだと……。(笑)

例えばここ数年、まつげを濃くする効果があるとかなんとかで、にわかに注目されるようになった感のあるヒマシ油ですが、原料のヒマシの植物は、インドではその辺の道端に元気よく生えていて、私はリキシャで買い物に出かけるたびに、店に辿り着くまでの途中の景色の中で普通に眺めていたものでした。カラカラに乾いた土地で、よくもこんなに元気に育つものだと……。

また、ミントなどは、日本ではおしゃれなデザートやドリンクのちょっとした飾り用として使われるだけだったり、ここ数年、タイ料理がブームになっているせいか、コリアンダーもスーパーなどで見かけられるようになりましたが、

インドでは野菜市場へ行けば、ものすごい量のミントやコリアンダーの束(最低直径5cmはあります)がどっさり売られていて、その消費量はパンパじゃありません。

葉だけを集めてミキサーで砕いてペースト状にしたものを、チャツネとして食べたりします。

そしてこのなにげないチャツネが、最高の解毒剤であり、血液浄化剤であり、解熱剤であり、消化促進剤であり……。
その薬効は、数え切れないほどです。

こんなものを日々食べていたら、そりゃあインド人は体が丈夫で免疫が強くて当たり前。

また、インド家庭にごく普通に植えてあるホリーバジルなどは、チャイに風味付けとして加えて飲んだりしますが、実はこのハーブ、医療界もビックリ仰天の抗ストレス&抗がんハーブだったりするわけです。

そんな、何かと魅力的なハーブが、普通の日常の中に溶け込んでいるのが、インドという国です。
(今はロックダウンでかなり大変なことになっているようですが)

ハーブにはいろいろなものがありますが、今回は「冷やす」ハーブと「熱くする」ハーブについてお伝えしたいと思います。

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・「冷やす」ハーブと「熱くする」ハーブ

ハーブには、冷却する効果があるハーブと熱くする効果があるハーブがあり、これらは代替ハーブと呼ばれています。

こういったハーブは、私たちの体内を洗浄あるいは掃除する効果がある血液浄化ハーブで、以前にもご紹介した「Yoga of Herbs」の本によれば、主に次のような治癒効果があるのが特徴です。

1. 血液を浄化して毒素を除去する。一般的に抗感染性と抗菌作用がある。

2. 潰瘍や腫瘍、多くの種類のがんの治癒に役立つ。

3. 血液を冷却することで発熱を抑え、肝臓を解毒する。

4. 傷口、ただれた潰瘍などに外用薬としてよく効き、抗炎症性と創傷性がある。

5. 解毒作用により、寄生虫(特に血液に侵入したもの)を殺すのに役立つ。

6. 感染症、伝染性疾患、伝染病によく効く。

代替ハーブは、インフルエンザ、高熱、のどの痛み、耳の痛みなどを治療する薬といわれ、またニキビや皮膚炎、吹き出物、炎症性皮膚疾患を治療し、ヘルペスや性病、がんなどにも使用できるということです。
また、リンパをきれいにして白血球数を増やす効果も認められています。

こういったハーブは、体内に毒性物質が蓄積するのを妨害する作用があり、利尿または下剤作用があるものもあるといわれています。

ほとんどの代替ハーブは、冷却作用と苦味または渋味があるのが特徴で、ピッタとカファを減少させますが、ヴァータを増加させます。
主に抗ピッタのハーブなので、ピッタ体質の人にとっては特に有益です。

ハーブ

(コリアンダーチャツネはピッタにとって最高の薬)

 

★冷却効果がある代表的な代替ハーブの例:

アロエベラ
ゴボウ
タンポポ
インディゴ
ニーム
オオバコ
サンダルウッド

また、辛味や刺激性の味があり、熱くする効果のあるハーブにも、血液を浄化する作用があり、血行を促進したり、血栓を解消したりする働きがあります。

こういったハーブには解毒作用があり、多くの場合、抗菌作用もあります。
また発熱の原因となっている毒素を破壊することで発熱を抑えるのを助け、冷却ハーブと同様に、抗寄生虫作用や殺虫作用もあります。

この辛味と刺激性のある加熱ハーブと、苦味のある冷却ハーブを組み合わせると、それぞれの解毒力を強化することができるといわれています。

アーユルヴェーダ薬や、アーユルヴェーダのスキンケアとヘアケア製品の多くは、大抵何種類ものハーブが原料に使われているのが一般的ですが、様々なハーブを組み合わせることで相乗効果を得るためにあえてこのように作られています。

 

★加熱効果がある代表的な代替ハーブの例:

ベイベリー(ヤマモモ)
ブラックペッパー
唐辛子類
シナモン
ニンニク、
ミルラ
ベニバナ

ハーブ

(サンダルウッドの粉は、アーユルヴェーダ伝統のフェイスパック)

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一般的には、ピッタには冷却ハーブが、ヴァータには加熱ハーブが使われることがほとんどで、カファではどちらのハーブもよく効くといわれています。

注意が必要なのは、ある種のハーブの「使い過ぎ」です。

例えば、ゴールデンシール(和名はヒドラスチス)やワイルドインディゴ(インド藍)のように、抗菌・抗生物質の効果が強いものは、過剰に使い過ぎると、体内の善玉菌だけでなく、悪玉菌をも破壊してしまい、抗生物質の薬と同じように体に有害な影響を与える可能性があるともいわれています。

その結果、免疫系が弱まり、さらなる感染症を引き起こすこともあるので注意が必要です。
特にヴァータが高い状態の人は、くれぐれも量を間違わないように注意が必要です。

代替ハーブは、春に血液浄化剤としてとられるケースが多く、適量であれば良い習慣となりますが、とり過ぎると血液を薄めてしまう可能性があるのと、また貧血や低血圧状態の人には効果がないともいわれています。

 

《村上アニーシャ さんの記事一覧はこちら》
https://www.el-aura.com/writer/%E6%9D%91%E4%B8%8A%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3/?c=73188

 

(トップ画像/インドでは普通にその辺に生えているヒマシ)