■人間を癒す薬としての植物。~9~インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』~vol. 184

植物

・「潤す」ハーブ? それとも「乾かす」ハーブ?

ハーブを薬として使う上で、重要になってくるもうひとつのことは、そのハーブが、「潤す(湿らす)」ものなのか、それとも「乾かす」ものなのか。という点です。

ちなみにヴァータドーシャの主な質は「乾燥」で、カファドーシャでは「湿り気」です。

「苦味」「辛味」「渋味」は、乾燥させるため、ヴァータを増やし、カファを減少させます。

反対に、「甘味」「塩味」「酸味」にはしっとりと潤す効果があり、カファを増やしてヴァータを減少させます。

最も乾燥させる味は「辛味」で、その次に苦味、渋味と続きます。
また、最も潤す味は「甘味」で、次に塩味、そして酸味の順です。

ところで私がインド生活時代に暮らした場所は、デカン高原のあるマハラシュトラ州(この州だけで日本全土の土地面積に匹敵する大きさです)だったのですが、

雨季以外の時期はほとんど一年を通じて乾燥と熱風がふきすさび、手洗いしたビショビショの洗濯物が数時間で乾いてしまうほどの乾燥気候です。

インド生活では、牛乳や他の乳製品がとてもおいしいこともあり、毎日チャイやギー、ヨーグルトは欠かせない食べ物でしたが、

今思えば、極度に乾燥した地域に住むためには「湿らす」効果がバッチリの乳製品の類、つまりはカファ食品が、体が健康を維持するためには必須で、体が自然にそれらの食品を欲しがったのだと思います。

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(インドの乳製品はどれもおいしい&外れナシ)

ところで、乾燥させるハーブというのは、「空気」要素で構成され、一方、湿らせるハーブは、主に「水」要素から成り立っています。

そしてハーブは、その要素が持つ効果を、そのまま私たちに与えます。

また、これはあまり重要視されていませんが、そのハーブが「軽い」か「重たい」か、つまりそのハーブは体に軽さを与えるものなのか、それとも重たくするものなのか、ということも考慮されることがあります。
この区別は、「乾燥させる」か「湿らすか」に似ています。

酸味には、熱くする効果と消化を高める力があるので、「軽くする」傾向があり、渋味には、身体組織を収縮させて固くする効果があるため、「重くする」傾向があります。

甘味は、重くする傾向が最も強く、その次が塩味、そして渋味と続きます。

また苦味は最も軽くする味で、次に辛味、その次が酸味です。

重たくする質を持つ味は、私たちの体を重くし、また硬さを促進させるといわれています。
一方、軽い味のものは、体重を減らし、消化を大いに促進する作用があります。

 

・組み合わされた味の効果

ハーブの味は、ひとつだけということはほとんどなく、2、3種類の味が組み合わされているのが普通で、通常はどれかひとつの味が優勢です。

甘味と辛味が混ざり合ったハーブの代表は、シナモン、フェンネル、生姜、タマネギなどで、こういったハーブは、ヴァータのために特に良いハーブです。

甘味と酸味が混ざり合ったオレンジ系のような様々なフルーツは、ヴァータにとってとてもよい食べ物となります。

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(オレンジはヴァータの薬)

また、甘味と渋味が混ざり合った蓮やスイレンのようなもの、甘味と苦味が混ざり合ったリコライス(甘草)のようなハーブは、特にピッタに良いとされています。

辛味と苦味が混ざり合ったヨモギのようなハーブは、特にカファに強い薬効があり、辛味と渋味のあるシナモンやセージのようなハーブも、カファに働きかけます。

ハーブの中には、3つ以上の味を持つものも多く、複数の味を持つ場合は、その効果を決定するためには、そのハーブがもつエネルギーと消化後の効果の知識が必要です。

複数の味を持つハーブの代表格はニンニクで、ニンニクには強力な、そして広範囲の治癒作用があるといわれています。

 

・味と食べ物

ハーブと同じように食べ物にも、味や支配する構成要素によって治療効果があるといわれています。

このためアーユルヴェーダでは、特定のハーブを使用した特別な食事が処方されます。

一般的には、特定のドーシャを緩和する傾向のある食事に従うように言われるはずです。

そして、アーユルヴェーダ的な食事によく登場するのが、牛乳、ハチミツ、ギー、レーズン、デーツ、アーモンドなどの食品です。

薬草学と栄養学はアーユルヴェーダでは単一の科学でありどちらか一方をおろそかにした治療法は本当に効果があるとは思われていません。
どちらかを無視してしまっては、真に効果的な治療はあり得ないと考えられています。

食品は私たちの身体の「肝となる栄養」を扱い、ハーブはより深部の身体組織と臓器に微妙な栄養と刺激を与えるものといわれています。

 

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(トップ画像/複数の味をもつニンニクは、最強のハーブ。料理にたっぷりと使いたい)