■人間を癒す薬としての植物。~8~インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』~vol. 183

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梵語で「味」を意味する「ラサ」という言葉には、様々な意味があるといわれ、それらの意味すべてが、アーユルヴェーダにおける味覚の重要性を理解するために役立ちます。

ラサのひとつめの意味は、「本質」です。
つまり味というものは、植物の本質を示すものであり、その質を理解する上で最も重要な要素となっています。

ラサの二つめの意味は、「樹液」です。
ハーブの味は、味を活性化する樹液の特性を反映するものと考えられています。

また、ラサの他の意味には、「真価を認めること(あるいは、価値・質などへの完全な理解)」、「芸術的な喜び」、「音符」、「循環」、「生き生きとした気分になる」、「踊る」など、

一見、何の関係もないようなバラバラの意味が含まれていますが、

味は、その植物の本質である「感情」を伝えるものであり、それを通して私たちは、植物の美しさやパワーを感じ取ることができ、そのすべてが「味」となって反映されているのです。

味は、口の中のプラーナ(生命力)と脳のプラーナと繋がっているため、私たちの神経に直接影響を与えます。

神経を刺激し、心と感覚を目覚めさせ、私たちを生き生きとさせるのが「味」なのです。

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(インドの暑さを癒してくれる、激甘アイス「クルフィ」)

 

このようにして、味は私たちの生命力を活発化させます。

特に胃の神経を刺激することで、味はアグニに影響を与え、適切な消化力を高めます。
そしてこのアグニを刺激しなければ、本当の意味での消化力はないと考えられています。

ビタミンやミネラルが含まれているにもかかわらず、当たり障りのない味、あるいはほとんど味のない味の食べ物は、アグニが刺激されることがないため、栄養がほとんどない場合があります。

味のない食べ物というとき私が一番はじめに思い浮かぶ野菜が、水菜です。
この野菜は、ほんとうに水がそのまま野菜の形になっただけのように、味がないですね。(サラダにして食べる分にはドレッシングの味がよくわかっていいですが……)

私たちは病気になると、味覚と食欲が失われるといわれていますが、味覚と食欲と消化力は、関係があります。

アーユルヴェーダでは、味覚がないことイコール、熱がある、何か病気がある、アグニが低下している、アマ(毒素)が蓄積していることを意味するので、アグニを改善して病気をなくすためには、味覚を改善する必要があると教えています。

このため、料理には常に、消化力を促進するような適切なスパイスが頻繁に使われます。

またアーユルヴェーダでは、甘味、酸味、塩味、辛味、苦味、渋味の6つの味を認識しています。

それぞれの味は二つの要素で構成されています。
甘味は「土」と「水」要素で構成され、酸味は「地」と「火」、塩味は「水」と「火」、辛味は「火」と「空気」、苦味は「空気」と「空間」、渋味は「地」と「空気」で構成されています。

(これら6つの味について詳しくは、バックナンバーVol.117~134「味の効用シリーズ」をご覧下さい。)

 

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