今回は、私たちを生かしている生命力(気)と、体の経路についてお伝えしたいと思います。
★私たちを生かしている、5つのヴァユ(気)
そもそも、古代の治療伝統の中心には、生命力の概念というものがあり、これは漢方でいうところの「気」、アーユルヴェーダやヨガでいうところの「プラーナ」の概念にあたります。
アーユルヴェーダやヨガでは、私たちが食べたり飲んだりするハーブは、どのプラーナに働きかけるかによって分類されています。
・5つのプラーナとは?
アーユルヴェーダでは、プラーナには5種類あり、一般的に5つのヴァユ(「空気」や「やる気を起こさせる力」を意味します)と呼ばれています。
これら5つは、いわば私たちの生命力のことで、「神経系の活発化における機能的な区別」とでもいうべきものです。
ではその5つをそれぞれ詳しく見てみましょう。
1.プラーナ(内向きに動くエネルギー)
プラーナは脳に集中した「気」で、下向きに移動し、吸う気と嚥下(食べたものを噛み砕き、喉から飲み込んで食道から胃へ送り込むこと))を支配しています。
この気は、知性、感覚、運動能力、神経系、呼吸器に関連しています。
2.ヴィヤーナ(エネルギー循環)
心臓を中心に全身に働きかける「気」で、循環系や関節、筋肉の動きを支配しています。
3.サマナ(消化と同化)
小腸に集中してある「気」で、消化器系を支配しています。
4.ウダナ(頭と喉のエネルギー)
喉を中心に、言葉、エネルギー、意志、努力、記憶、呼気をつかさどります。
5.アパナ(外向きに動くエネルギー)
下腹部に集中した「気」で、便、尿、精液、月経液、胎児のすべての下向きの排泄、排出を支配しています。
★病気になる主な原因は、体内の経路がつまること
アーユルヴェーダでは、人間の体は無数の経路から構成されていると考えられています。
これらの経路は、さまざまな組織の代謝を維持し、また同化と排泄のプロセスを統治しています。
このため、病気の主な要因はこういった経路を通る血流の障害、つまり、過剰な流れ、不十分な流れ、間違った方向へ流れること、不適切な経路からの流れ、流れそのものの閉塞によって起きると考えられています。
この流れの閉塞は、生物学的気質を表すドーシャ、「ヴァータ」「ピッタ」「カファ」のいずれかによって、あるいは毒性物質の蓄積(アーユルヴェーダではこの毒素をアーマと呼んでいます)によって引き起こされることがあります。
ハーブは、影響を与える経路にしたがって分類されています。
これらの経路は、次の通りです。
1.プラナヴァハ・スロータ
呼吸やプラーナを運ぶ経路で、呼吸器系に似ています。
2.アナヴァハ・スロタ
食べ物を運ぶ経路で、基本的には消化器系と同じです。
3.アンブヴァハ・スロータ
水分を運んだり、水分の代謝を調節する経路で、消化器系のもう一つの側面です。
この最初の3つの経路は、体内へ物質を取り込むこと(摂取)を制御しています。
以下の7つの経路は、7つの身体組織(血漿、血液、筋肉、脂肪、骨、骨髄と神経組織、生殖組織)に供給します。
4.ラサヴァハ・スロータ
血液と組織の血漿を運ぶ経路で、特にリンパ系に関連していますが、循環系にも関連しています。
5.ラクタヴァハ・スロータ
血液を運ぶ経路で、具体的にはヘモグロビンの部分で、循環系の一部です。
6.マンサヴァハ・スロータ
筋肉組織を供給する経路です。
7.メダヴァハ・スロータ
脂肪質の新陳代謝、脂肪組織を供給する経路です。
8.アッシヴァハ・スロータ
骨、または骨格組織に供給する経路です。
9.マッジャヴァハ・スロータ
骨髄、神経、脳組織、基本的には神経系に供給する経路です。
10.シュクラヴァハ・スロータ
精液や男性の生殖器系を支配する経路です。
そして、以下の3つの経路は、身体からの廃棄物の排泄/排出
を支配しています。
11.プリシャヴァハ・スロータ
排泄物を運ぶ経路で、排泄器官のことです。
12.ムトラヴァハ・スロータ
尿を運ぶ管で、泌尿器系の経路のことです。
13.スヴェダヴァハ・スロータ
汗や皮脂を運ぶ経路です。
女性には、他に2つの、次の組織があります。
14.アルタヴァヴァハ・スロータ
月経を運ぶ経路、女性の生殖器系で、男性の生殖器系を支配する経路シュクラヴァハと同じ場所にあります。
15.スタニャヴァハ・スロータ
女性ホルモン系のもう1つの側面で、母乳を運ぶ経路です。
そして最後に、心の経路の特別な組織があります。
これらは9.の、主に神経系であるマッジャヴァハ・スロータと生殖系にも繋がっています。
16.マノヴァハ・スロータ
心を供給したり、精神的なエネルギーや心理的なものを運ぶ経路です。
例えば、骨に働きかけることがわかっているハーブの場合、そのハーブは骨格組織に作用するということです。
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・おまけ:一つの植物の中にある太陽と月(男性性と女性性)
ハーブを知る上で知っておくと面白いことは、一つの植物の中には、男の部分と女の部分があるということです。
葉の右側と上側は「プルシャ」つまり男性性があり、吸い込む太陽エネルギーを表しています。
一方、葉の左側と下側は、女性性を表す「シャヒ」があり、呼気にあたる「月」のエネルギーを表しています。
今回は、アーユルヴェーダの専門用語の連発で、ちょっと難しい感じがするかもしれませんが、知っておくとなかなか面白いのではないかと思います。
(つづく)
《村上アニーシャ さんの記事一覧はこちら》
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(トップ画像/フレッシュなスムージーにはプラーナがたっぷり)