■人間を癒す薬としての植物。~1~インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』~vol. 176

植物

■人間を癒す薬としての植物

世界中で経済が停滞し、緊張モードが続く中、春の山々や植物たちはまるでそんなことはおかまいなしといわんばかりに、次々と新しい葉を成長させ、色鮮やかな花をそちこちで咲かせては、お祝いモードの春シーズン真っ只中ですね。

一年中ほとんど気候が変わらない暑い国で長い間暮らしていたせいで、日本の四季の移り変わりとその美しさをすっかり忘れていた感がありましたが、今回の自粛モードでお店も施設もほとんど閉まっているおかげで、(最近になって再開しはじめたお店もちらほら見られるようになりましたが)、

近くにある自然に足を伸ばす機会が増えたという人も、結構多いのではないでしょうか。

実は私もそんな中のひとりで、ラッキーなことにすぐ近所には、自然に恵まれた山々があり、この1ヶ月は特に、日本独特の自然の美しさ(みごとな桜吹雪など)に魅入られていたところなのですが。

日本の春は、気候がほとんど一年中変わらない暑い国の春と比べると、その辺に何気なく生えている雑草であっても、すごくバラエティが豊かで、しかもピンクからオレンジ、はたまたブルーから紫色まで、それぞれが鮮やかかつユニークな花のオンパレードでイキイキしてるわけです。

これはおそらく、日本独特の温暖気候ゆえなのだと思いますが、中には、アーユルヴェーダのハーブが何気に道端に生えていたり(インドでは超有名な脳強壮ハーブで、アルツハイマーに効くといわれているツボクサなど)、あるときはアヘンそっくりな植物と出くわし、しかも公園やその辺の道端に束になって生えていたりするので、これを初めて見たときは、どうしてこんな危険なものがこんな風に野放しになっているのか、ハラハラドキドキしたこともありました……。(あとからわかったことですが、この植物はアヘンではなくその親戚で、繁殖力の強い外来種の植物でした)

というわけで、春の今の時期はとにかく、植物たちの成長する様が私たちにとってある種の癒しのようになっているのが特によく感じられる季節ですが、太陽の光を栄養にして天に向かって上へ上へと茎や葉を悠々と伸ばし、この地球をお祝いしているとしか思えない生命溢れるこれらの植物を眺めていると、植物には完全に、しかもはっきりとした意識があることを実感させられます。

それもそのはず。植物というものは、この地球に生きる人間たちを癒すために存在しているともいえる生き物なのですから。

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(ハーブ薬のアーユルヴェーダガイド本「The Yoga of Herbs」)

アーユルヴェーダでは、これら植物を、人間のバランスをとる治療薬として、何千年もの間使用してきました。

今回から、植物が私たち人間にもたらす効果や、アーユルヴェーダにおける薬としてのバックグラウンドなどについて、ご紹介していきたいと思います。

 

■植物には意識が宿っている

種の中には木が含まれ、木の中には森があるように、進化というものは、潜在的な可能性の現われであり、それぞれのものの中にはすべてのものが含まれているという考え方があります。

知性というものは、私たちが住む人間中心の世界だけでなく、自然界の多くの世界にも息づいていて、それは暗黙のうちに含まれているのです。

そもそも生命は互いに依存しあって結びついていて、肉体的にだけでなく、心理的にも霊的にも、相互に栄養を与え合い、世話をし合う体系です。

意識というものは、「生きている」という感覚であり、単に思考や知性や理性ではなく、すべての生命と関係しているという感覚であり、植物や岩の中にも、純粋な感情としての意識が存在し、原子そのものの中に隠されている。と、アーユルヴェーダの著名な医師、ドクター・ヴァサントラッドとドクター・デーヴィット・フローリーは、その書著、「The Yoga of Herbs」(ハーブ薬についてかなり詳しく書かれた本)の中で語っています。

そして植物や動物には、生きている中である種の感覚に凝り固まってしまった孤立した人間たちよりもずっと、思いやりの感覚をもち、それを私たちに示すことがあるといいます。

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(植物にははっきりと意識がある)

その思いやりゆえに私たちは実際、植物や動物に癒されながら生きているのでしょう。

インド古代の見識者たちは、これを当たり前のように理解し、すべての生き物には、意識があるという意味で人間であることを理解していたといわれています。

そして、すべてのものを人間として見るようになって初めて、私たちは真に人間らしい存在になれる、と考えられていました。

それを私たちに実際に教えてくれるのが、自然との一体感の中に存在する植物やハーブです。

そして今、困難に面している私たちは、自分自身をよりよく理解するために、改めてこれらに戻っていく必要があるようです。

 

(つづく)

 

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