季節の薬膳 自然に寄り添う養生法 Vol.1〜中医学の理論〜食べ物はみな薬

【季節の薬膳 はじめに】

皆さん、こんにちは。
国際中医師、国際中医薬膳師の吉田 美枝子です。
食べるだけの薬膳教室を主催しています。

薬膳というと漢字が多くて難しい、苦い生薬を入れなければいけない……と思い込んでいませんか。
そんなことはありません。

薬膳とは中国で数千年前から続く中医学の理論に基づいた食事のことです。
中医学の理論?? さらに難しいイメージを抱かれるかもしれませんが、その理論はとてもシンプルな2つのメッセージから成り立ちます。

 

【中医学の理論 その1 整体観念】

整体観念とは体を整える考え方の事です。
人間は宇宙の一部であり、その人間もまた1つの宇宙である……という考えは、文字にすると哲学的で分かりづらいかもしれません。

簡単に説明するとこうです。
宇宙の中で人間だけが物を考えることができて偉い! ということはありません。
人間は自然の中の一部として季節の変化や天体の変化に寄り添ってバランスをとりながら健康を維持していく。

さらに人間の体の中でも同じように物を考えることができるから脳が1番偉い! というのでなく、脳も心臓も皮膚も粘膜も全て有機的に結びつき、バランスを取りながらより良い方向に身体を整えていく……。

これが整体観念の考え方です。

 

【中医学の理論 その2 弁証論治】

もう1つの理論は弁証論治。

中国から来た医学なので漢語読みしてみてください。
証を弁じて治法を論じる……。
一人一人、顔や性格が違うように病気もそれぞれ違います。
その人の病気の状態を正しく判断して治し方を論じる。
一人一人病気の状態が違えば治し方も違うという考え方です。

4文字漢字を見ただけで難しい! と決めつけてしまいがちですが、割とシンプルなメッセージではありませんか?

この2つの中医学理論を取り入れていれば、生薬を使わなくても、薬膳レストランに行かなくても、ご自宅の食卓で薬膳を楽しむことが出来ますよ。

 

【食べ物はみな薬】

薬膳では食べ物は食薬と言って全て薬と考えます。
薬食同源、日本では医食同源として広まりましたが、食べ物も薬も全て同じ源から出来ていると考えます。

化学的な薬と違い食べられるものですので、その時の症状や量を間違えなければ毒となって体を攻撃することはあまりないのが少し気を楽にしてくれますね。

 

【食べ物のもつ味の性質  五味】

簡単に口に出来る食べる薬……食材は味と性質という2つのベクトルを持っています。

まず味は酸、苦、甘、辛、鹹の5つに分類され、それぞれの性質を持っています。
例えば春に関連のあると言われる酸味……梅干しを食べた時を想像してみてください。
酸っぱい梅干しを食べた時はほっぺがキューっとすぼまりますね。
酸味には収斂と言って体の中からだらだら出ている汗などをキューっと体内に閉じ込める力があります。

酸味のいい面はだらだらと出る汗や尿などをキュっと身体にとじこめてくれるところです。
ただ風邪の引きはじめなどで邪気を外に出したい時は、その収斂作用で邪気を体内に閉じ込めてしまう事もありますので、酸味をとるタイミングには注意しましょう。

同じように他の味にもいい面、悪い面があります。
これら5つの味の事を五味と言います。

 

【食べ物のもつ温めたり冷やしたりする性質  五性】

食べ物には味……とは違う働きがあります。
それは身体を温めたり冷やしたりする働きです。
熱 温 平 涼 寒 と熱が一番からだを温め、寒が一番からだを冷やします。
簡単に言えば、身体が熱ければ冷ます食材、冷えていれば温める食材をとるのが良いです。

体質として冷えやすい、暑がりなどはありますが、人間の体は常に一定ではありません。
環境や体内の状態により日々変化しますので、その時の状況で判断して食べる食材を決めて行きましょう。

この身体を温めたり冷やしたりする性質を四性(五性)と言います。

中医学理論に基づいて身の回りにある食材の性質を考えながら食事を組み立てていく……楽しい薬膳生活を少しずつ取り入れてみませんか。

次回からは季節に取るべき食材、養生のお話をして行きたいと思います。