話し上手は聞き上手?
話し上手は聞き上手という言葉があります。
とても良い言葉だと思います。
僕も、その言葉を知ってから聞き上手に憧れました。
もちろん、今も特に話を聴く時は意識をしています。
特に現代は忙しい人や疲れている人が多いです。
「時短」という言葉が流行っているくらいです。
そんな時代ですから、話を真剣に聴いてくれる人がいると本当に嬉しい気持ちになります。
もっともっと聴き上手な人が増えてくれたら嬉しいです。
ちょっと待って! 本当に話し上手は聞き上手なの?
聴き上手が如何に素晴らしいかは、もう充分に理解してくれていると思います。
しかし、疑問に思ったことは無いでしょうか。本当に聴き上手は話し上手なのだろうかと。
賛否両論あるとは思いますが、本音を言えば僕は、それはちょっと違うかなと思っています。
聴き上手である事は大切です。
しかし必ずしも話し上手とイコールではないと思うのです。
「私、しゃべる人。あなた聴く人」、これって本当にフェアなのかなって思いませんか。
もちろん、話をするが好きな人と聞く方が好きな人が揃えば相思相愛で問題ありません。
ただ、聞き役を求められている人は「私も、言いたい事あるんだけど……」と内心は思っている可能性だってありますよね。
相手がマシンガンのように喋っているから、間を割って話をする事が出来ないだけかもしれません。
「そんなにイヤなら、その人と関わらなければ良いじゃないですか……」という意見もあると思います。
それならそれで良いと思います。
ただ、『聴き上手神話』(傾聴神話)が独り歩きしてしまっている事が問題なのであって、本当は、話し上手は話し上手。聴き上手は聞き上手。そのバランスが大事なのではないかと思います。
聴き上手神話の背景?
「話し上手は聞き上手」。「話を聴いてあげると相手が喜ぶ」「話を聴いてあげると、相手が勝手に喋ってくれる」という言葉が流行り出した背景について考えてみましょう。
そのルーツを辿ることは僕にはできません。
ただ、おそらく心理学系、あるいはメンタルヘルス系の人たちが『聴き上手神話』を定着させてしまったのではないかと考えられます。
特にここ最近は、今でこそ『心の時代』なんて言われなくなって来ましたが、多くの人が心に興味を持ってくれるようになりました。
そう考えると、聴き上手神話が、どんどん広まっても不思議ではない気がします。
聴き上手のスキルの事を『傾聴』と言います。耳を傾けて、相手の話をじっくりと聴いてあげることです。
ぶっちゃけてしまうと、これってカウンセリングのスキルなわけです。
だってカウンセラーが「いいから、私の話を聴きなさい!」と言ったカウンセリングをしたら本末転倒だからです。
カウンセリングは、カウンセラーが自分の話をメインにする場ではありません。だからこそ、カウンセラーにとっては、傾聴は重要なのです。
それが、何故だか一般に広まりすぎて『聴き上手神話』が定着してしまったのではないかと思います。
誤解の無いように言っておくと、僕は傾聴を批判しているわけではありません。
先にも述べ増しがが、それはそれ、これはこれです。「聴く」も「話す」も大事だと思っています。
会話はキャッチボールに例えられることがあります。
交互にボールを投げ合うことで成立していることが会話に似ているからです。
でも、考えてみて下さい。
キャッチボールって、相手の投げたボールを受けて、投げ返す動作を繰り返すものですよね。
つまり、投げるのと受けるのは比率が同じなのです。
でも『聴き上手神話』を『(言葉の)キャッチボール』に当てはめるとどうなるでしょうか。
一方がひたすら喋る。一方がひたすら聴く。これってキャッチボールではありませんよね。
「俺、ピッチャー。お前、バッター」という関係は『バッテリー』です。
会話の場合、必ずしも話し手と聞き手の比率が1:1とは限りませんが、『キャッチボール』をしたいのであれば、バランス感覚はとても重要なのです。