空き神社を守っていたお人好しなカエルの神 — 神社巡りこぼれ話

今まで訪れた神社の中から、お教えしても差し支えないようなエピソードと、スピリチュアルにまつわる大切な事柄をお伝えしている神社巡りシリーズですが、実はこれが最初に書いた文章です。
このシリーズは地味な人気があるようで、楽しみにしていてくださる方もあり、とてもありがたいです。

過去記事についてはわたもり記事一覧からお読みくださいませ。

今回はその中で出会った、神社にお仕えする見えない世界のカエルについて書かせていただこうと思います。

 

空き神社にいたカエル

(写真はイメージです)

時々通りかかると、何故か気になる神社がありました。
特別なご神気があるわけでもないのに、何故か立ち寄って欲しそうにしている気がしてしまうのです。
けれどそれは小さな集落にあり、その集落の人々を守る神社でしたので、まるで知らない人様のお家へ上がりこむようなものだと思い、気にかかりながらも、いつも通り過ぎていました。

ある時、はっきり脳裏にその神社が浮かび、やっぱり行った方が良いと感じ、行ってみました。

それは小さな神社ながら、社も参道や草木もきれいに整えられています。
駐車場に車を止めると神社から強い視線を感じ、そちらへ見えない世界を見る目を向けると、
「え? カエル?」
社の中にカエルがいます。

「何故、社の中にカエルがいるの?
え? あれ、本物?
そんなわけないよね。袴姿だし」

神社だからと言って、神がいるとは限りません。
神がいない神社も多く、中には見えない世界の動物が神使として神変わりをしている神社もあります。
神社の鎮守の森に見えない世界のカエルがいるのを見たことはありますが、袴姿のカエルは初めてでした。

参道を歩きながらも凝視しているとカエルは冷や汗を流す風情で、逃げ出したそうにしています。
お賽銭をあげ、二礼二拍手一礼して手を合わせつつカエルに話しかけてみました。

「あなたは、だあれ?」

 

カエルの語った話

「私はおそらくこの辺りにいた普通のカエルでした。
ここに長くいたので元がどうだったのかよく思い出せません。
気が付いたら私はこの社の中にいました。
中には神様がいらっしゃらなかったのですが、人々が来ては手を合わせ、お参りしていきます。
私は誰にも聞いてもらえないのは気の毒だと思うと動くに動けず、願い事を聞かせていただき、私からも神社の丸鏡に向かってその人の願いを聞いてもらえるように一緒にお祈りしたりしていました。
帰ろうにもどこへどうやって帰れば良いのか判らず、住まわしてもらっているお礼にと神社の中や周囲を整えるお手伝いをさせていただいていました」

そのカエルはきっと真面目な性格だったのでしょう。
だから華美ではないけれど、細やかに手入れされた神社だったのだと思います。
社の神の、あるいは神代理の心がけは、神主や神社を守る氏子たちにも伝わります。
逆に、神主や氏子の心がけが神社の様子に反映されます。
そこは、その集落の名前の付いた農産物が全国的に有名になり、農村地帯として栄えていて、神社の気もそれ程悪くはなく、そのカエルは神代理がちゃんとできていると思いました。

どうしたいかを尋ねると、
「もうあまりに長くいて、私の一族ももうこの世にはいないでしょうし、……と言いますか、この考え方ももう人間のようで、でも、人間ではないし、もし良ければ、これからもここに居させて欲しいです。
それが無理だとしたら……、ああ、でも、もうすぐ秋祭りですし、せめてそれを見届けてから……」

話を聞きながら、随分お人好しのカエルだなあと思いました。
仕事を放棄して逃げ出す神もいるのに、このカエルは人々からお願いされて、せめて出来る事をと頑張ってきたのだと。

(写真はイメージです)

 

その後のカエル

その社には、今は新しい神が降り立たれ、カエルは神にお仕えする神使となったようです。

時々前を通りかかると二人で手を振ってくれるので、私も車の中からではありますが会釈させていただきます。
もう一人で頑張らなくて良くなったんだなと、ちょっと安心しています。

いつとはお約束できませんが、次回の神社巡りこぼれ話もお楽しみに。

 

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