外国人記者の山伏体験2日目、大自然の力を目覚めさせる奥深い修験の道を体感~Japan’s ancient tradition of mountain ascetics(2)

感受性豊かな外国人記者は、この修験道の経験を「霊的な生まれ変わりの旅」と表しています。今日も一緒に出羽の山々を巡りましょう。Now the second day of mountain ascetic training kicks off. This is an experience report by a sensitive foreign journalist. Now let’s start a pilgrimage tour in Desa-sanzan.

山伏レポート第二弾です。
実は私自身、修験の世界に魅せられ、これまで出羽三山での修行に3回参加した経験があります。

意外かもしれませんが、参加者は山伏修行の内容を他人に話すことを禁じられているのです。
そうした中で、こちらの外国人記者はその禁を侵さずに修験の神髄を語ってくれています。
私たちの体の中に眠っている生命力が修験道体験で一つになっていく過程、自然界に自分をゆだねるという感覚、それらを皆様も感じてみてください。

 

私たちは次に二つ目の山頂、月山を訪れた。

標高2000メートル弱の月山の雰囲気は羽黒山とは全く異なる。
この山は「ご先祖様が眠る山」と言われているが、道中と頂上に1社ずつお社がある以外には、宗教的な建築物は何もない。
しかし、昆虫が飛び交い、高山植物が生い茂る湿地帯をゆっくりと登っているうちに、ここでは人工物よりも自然が重要なのだと理解し始めた。

頂上への道には、地面より高い位置に木道が2本並行して敷かれている。通行者が木道上を1列になって歩けば繊細な生態系を傷つけることはない。
草が木道脇を覆っているところを見ると、木道は人間による自然の侵害を防ぐ素晴らしい手法だと言える。

出典元:http://www.dewasanzan.jp/publics/index/48/

自然と一つになる感覚は、先達(山伏の先導者)たちの心を引き付ける。
山伏たちがなぜ山の中でこれほど長時間すごすのかというと、肉体に眠っている自然の力や生命力を解き放ち、問題が生じたときにうまく対処するためだ。

私たちが滞在した宿坊「大聖坊」の13代目当主で山伏の星野文紘氏は「自然の中に身を置き、心を穏やかにする。体で自然を感じ、五感を研ぎ澄ます。山伏の心の持ちようを習得すれば自分自身を取り戻し、命を活性化することができる」と語る。

全国的に山伏文化が衰退しつつあることもあり、星野先達は女性にも積極的に修行を指導している。
星野氏によると、女性はもともと思考より感覚を大事にするが、男性は見えるものに集中しがちだ。
今では、初参加者のうち半分以上は女性だという。
また、最近の傾向として、大都市からの参加者が増えているという点も挙げられる。
広告代理店を辞めて山伏体験プログラムを提供する会社、めぐるんを立ち上げた現役山伏の加藤丈晴氏にとっては、それは何の驚きにも当たらない。

加藤氏は「山伏は数世紀にわたり、人生の課題について考える空間を庶民に提供してきた。現代人は忙しくなる一方で、元気を取り戻すきっかけを探している。修行中は縛られることもなければ集中力をそがれることもない。しゃべることも時計を持つことも許されない。そのため、先達が自然界を私たちに見せてくれようとしているもの、それに自分自身を完全に委ねることができる」と説明する。

最後の山、湯殿山へ出発するときに、修験道がいまだかつて現実的な問題に直結することはなかったという話を加藤氏から聞き、考えさせられた。
湯殿山は非常に神聖な場所なので、大きな鳥居より先では写真撮影が禁止されている。

出典元:http://www.dewasanzan.jp/publics/index/49/

 

鳥居をくぐってから10分ほど道を登ると小さな建物があり、神官から形代(ヒトガタの白い紙)を渡され、素足になるように言われた。

形代で全身を撫でて災いや不純物を形代に移し、それを川に流してからでないと、特別な場所に入ることはできない。
中心には大きな赤茶色の岩がそそり立ち、そこには神様が宿っていると信じられている。
その岩の天辺からは温泉が噴出し、岩の脇の階段を流れ落ちている。

びしょぬれの岩を慎重に上ると頂上には小さなお社があり、鶴岡市内を見下ろすことができた。
そこで私たちの霊的な生まれ変わりの旅は終了した。

出典元:http://www.dewasanzan.jp/publics/index/49/

近くにある神聖な足湯で今回の修行体験を振り返ってみた。
私たちは、少なくともここに来る前より元気になったという点で意見が一致した。
雰囲気の全く異なる3つの山を巡り、山の静けさや美しさを知った。
そして、滅多に触れることのできない日本人の霊性を垣間見ることができた。
こうした経験は私たちに予想を大きく上回る印象を残してくれた。