誰でもふわっと楽になる じぶんにかえる お片付け ~蕎麦屋の女将、大掃除を語る 第八回

最後におすすめの本です。
他にもご紹介したいものは沢山、本当にあれこれあるのですが、特におすすめしたいのが……

 

■世界を変えた2冊

「断捨離」やましたひでこ(マガジンハウス)
「人生がときめく片付けの魔法」近藤麻理恵(サンマーク出版)

誰もが知っているからこそ、今、改めて推薦したいのがこの2冊です。
どちらも構想に非常に時間をかけており、ある意味人生の大半をかけて辿り着いたメソッドなので説得力が違います。
もう読んだらすぐ、というか読んでいるうちに片付けたくなるエネルギーに溢れています。
各国で翻訳され、現在も部数を伸ばしているのも当然でしょう。

私は2冊とも深い感銘を受けたのですが、夫は「ときめきなんてタイトルの本を読めるかよ!」と言って近藤さんの方は読みませんでした。
もったいない。
ときめきという言葉が恥ずかしいなら、そこは「直感の」とか「グッとくる」と脳内で読み替えればいいでしょう。
確かに乙女な雰囲気はありますが、有名になった捨て方のみならず、様々な分野の収納にも細やかな知恵があってヒント満載です。
ビジュアルが多い方が親しみやすい方は全ページオールカラーの「毎日がときめく片付けの魔法」「イラストでときめく片付けの魔法」(ともにサンマーク出版)も。

断捨離はヨガの思想がベースになっており、長年実践していると部屋が澄み渡ってくる感じがたまりません。
こちらも捨てることばかりに焦点があてられがちですが、食器棚やクローゼットの使い方、品数の管理など「美しく使いやすい、しかも真似しやすい」提案が参考になります。
断捨離は様々な切り口からの関連本も多く、私は発売される度にわくわくして読んでいます。
ものは減り、心の楽しみがどんどん増えていきます。

 

■家だけでなく仕事場も片付けたいなら

今回大掃除をして家だけでなく仕事場もキレイにしたい、と思われたら
「『かたづけ思考』こそ最強の問題解決」小松易(PHP研究所)
はいかがでしょう。
会社という組織でどうしたら片付けを定着させられるのか?  様々なタイプの人が混在する空間をととのえ、生産性をあげる道筋を順を追って教えてくれる一冊です。
「片付けは新しい時間を生み出す投資」などやる気の出るキラーフレーズは、片付けは時間の無駄、と思っているあの人にもきっと効くはず。

 

■片付けたら掃除。肌にも心にも安心な掃除

ここまで読んでうすうすお気づきの方も多いと思うのですが、私は掃除は「ふつーに、ある程度こまめやればいい」と思っていて、片付けほど情熱を傾けてはいません。
とはいえ、そんな私が何度も読んだのが
「キッチンの材料でおそうじする ナチュラルクリーニング」佐光紀子 (ブロンズ新社)
洗剤で肌荒れしやすいから、という理由で読みはじめましたが、一番の収穫は汚れを化学的に捉える視点でした。汚れを種類分けしてふさわしい浄め方を知ると、掃除は驚くほど効率的になり、余分な洗剤なども買わなくてすみます。

 

■結局片付けは心の片付け

「『違うこと』をしないこと」 吉本ばなな (角川書店)

これは片付け本ではないのでは……と言われればその通りなのですが、今私が一番おすすめしたい「心の片付本」です。
今回大掃除していて気付かれた方も多いと思うのですが、部屋の散らかりの原因は

自分らしくないことをしていたから

だったりするのです。

なんとなく着る気にならない服(流行だと勧められたけど、冷静に考えると好きじゃない)
最後まで読んでないマンガ(面白いって言われたけどイマイチだった)
お金を出して買ったから捨てるのをためらうけれど、やはり「違う」んですね。
「違う」ものを取り除く作業、それが片付けとも言えます。
ではどうしたら違うことをしないのか、その具体的なアドバイスがもらえる一冊です。

本来、片付けや掃除は、自分がここちよい空間を取り戻すための作業です。
しゃかりきに頑張るというよりは、お風呂で汚れを落とすような、この本の中でいうと「泥まみれのところから土器みたいなものを取り出して」いく感じだと思うのです。
お茶を飲んですっと心が鎮まり、自分の中心を確認した時にも似ています。
ただ、自分に戻るだけ。
肩肘をはらず、時に助け合えば、心地よいから自然と継続できるし、継続することでどんどん心地よくなる……そんな静かな楽しみです。

もちろん生きていればいろいろあって、時には激しく散らかることもあります。
片付ける気力すら湧かないこともあるでしょう。
でも、それもまた良し。そこからどうするかが腕の見せどころではないですか。
散らかりの中に、人生の宝石は必ず潜んでいます。

というわけで、来年も片付け&掃除を楽しんでいきましょう。
どうぞよいお年をお迎え下さい。
さてさて、私は年越し蕎麦の準備に入ります。

おしまい

 

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