伽座守珊瑚の開運『狼語り狐語り』第27話~狐眷族『甚六』。後輩眷族に語る“良縁成就”の秘策~

所は現代の東京、前回までの狼眷族『グラウ』と狐眷族『甚六』の自分たちの失くしていた過去の記憶を手繰る旅は、実に平安時代から江戸時代を経て現代に戻るといった長い物語でした。いよいよ今回から【セカンドシーズン】の始まり始まり。

 

現代の東京、下町の片隅に、町稲荷の狐眷族、瑞穂甚豊銀毛六尾之霊狐(みずほじんほうぎんもうろくびのれいこ)は居る、通名は甚六(じんろく)。
天狼霞隠雷之蔵雨(てんろうかすみかくしいかづちのぐらう)通名グラウは秩父三峯神社の眷族狼だが、役目上この界隈を住処としていて狐の甚六とも仲が良い。
甚六は稲荷の祠に、
グラウは人=依り代(よりしろ)の側が居場所。
たいていの狼眷族は依り代個人を守るのではなく付近の霊的治安を護るのが役割。昔の人は山の神社の神様から狼眷族を貸してもらって盗難避けにしていたが、その名残らしい。
原則、眷属は祠や依り代から、一定範距離内に居る。この範囲は眷属に霊格・霊力があるほど広範囲だが、普段勝手に祠や依り代から離れることは無い。

この二匹、迷い猫霊、後の見習い眷属の『ちゃ』に関わった事をきっかけに、自分たちの失くしていた過去の記憶を知った。
それは平安時代に平将門さまを守るために働き、朝廷側の呪詛で封印されるも、江戸時代に徳川家康に仕えた天海僧正によって封印を解かれ、復活したと言う事だった。
が、それを知ったからと言って次の日からの日常が様変わりするわけではない。人間とは感覚や感情が違う。慢心する事無く、元々の眷族の役目を続けているだけだ。

これは、その狐と狼の気ままな言い草を記した《狐語り、狼語り》。

前回の集会以降、甚六の居る稲荷の祠では引き続き、夜に自然発生的な眷族の集りが開かれるようになっていた。

今宵の参加者は界隈の龍・狐・蛇など眷族たちと『ちゃ』を含めた数匹の猫霊。グラウたち狼眷属は隣区の祭りの警護に加勢していて欠席だ。

今回の課題は『幸せな結婚を望んだ人々に何をできるか』

昨今、あちこちの有名な神社仏閣、名も無い旅先の道祖神にまで何年か越しで「今年は結婚できますように。」と手を合わせてきた女性たちが、御朱印ブームで浅草寺や今戸神社だけでなく、下谷神社や小野照崎神社、果てはたまたま通りかかった近隣の稲荷にもそれを願うようになってきた。眷属は人間の願いの助けに働くから、良縁を祈願されてしまうとその成就を助けなければいけない。

「無理 無理 自分が人間だったらあんな人たちと暮らしたいなんて思わない。おみくじが末吉だっただけでおいらの居所を蹴飛ばしたんだ。」
湯島の嬬恋神社の狐が顔を顰めると、西浅草の矢先稲荷の狐が「子供連れに聞こえよがしにウルサイって独り言いう人とか居るよね。」と、口を挟む。祠の周囲あちこちで同じような声が上がっている。良縁祈願の人たちは、ずいぶん広範囲に評判が悪そうだ。小野照崎神社の狐は「そうなの?。うちの境内の猫さん達には優しく声をかける人多いんだけど。」と言ったが。
祠の観衆がこの課題のせいで一気に暗くなってしまった。

 

【 狐眷族『甚六』。良縁成就を大いに語る】

「まあ。みんな、神様のお使いなんだからさ、良縁祈願した人たちが幸せになれるよう協力しよう。簡単さ。私たちが関わるからは、もう幸せなんだ。」
声をあげたのは甚六だ。

「簡単? 」「もう幸せ?」
甚六の言葉を、観衆の狐達は無意識にオウム返ししてきた。甚六は言う、

良縁成就の秘策は、結婚の因縁の良い人の波動を真似ればいいだけさ。
私たちはそれを人間に気付かせ、導く。うまくやれよ。これから言う事をさせれば良い。
人が幸せな結婚を望むなら、実在する好きな同性の『幸せな家庭人』を一人、参考にして、その人の話し方、仕草を徹底コピーした気分になればいい。
笑顔や話し方も真似るんだ。人前でやったら「変な人」扱いされるなら、プライベートな時間にイメージの中だけでも、一日5分でいい。
まねするお手本は、癒し系なタレントさんや家庭円満な知人とか。

それを10日も続けるうちに、街での買い物でおまけしてもらえるとかラッキーな事が起きてくる。

早くて20日、遅くても100日もすれば本当に良縁な相手とめぐり合う。まぁ、地域や年代によっては出会いの会社やお見合いサイトのお世話になるのが近道だろうけど、本当に幸せになる運に乗れる。

魂はバイブレーションだから、幸せな人の波動をまねすれば幸せが寄ってくる。
今まで縁を逃したり悪縁に振り回されて良縁成就しなかった人たちは、過去の悲恋の傷とか、幼い頃の家庭環境とか、苦労の波動に染まったまま、苦労を選ぶ魂の癖が有る。

幸せな人のまねをする事で、苦労な波動を幸せな波動に染め直せる。
一番難しそうなことは一番簡単なことなんだよ。

言葉の出だしが優しいとか、語尾が柔らかい。いつも微笑んで居るような表情は人を幸せな気持ちにする。そういう波動が身に付くのさ。

おみくじが末吉でも笑顔で未来に期待できて、はしゃぐ子供に元気でいいなと喜べる心になる。そういう人と、人は幸せになりたいと思うからさ。

集まった眷属たちは甚六の独演会状態に「そーかー。」と素直に共感して夜が更けた。
正神界の眷属は無邪気で素直だ。猫の『ちゃ』はそちらの方に感嘆した。

 

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