男女の脳はまったく違う、という話をどこかで聞いたことはないでしょうか。確かに、いろいろな得手不得手は男女で違います。空間認知能力を計るテストでは男性が良い結果が出ますし、人の感情を読み取るテストでは女性の方が良い結果が出ます。これは脳が生まれつき違うためなのでしょうか、環境のせいなのでしょうか、はたまた単なる思い込み……？　今回は、よく言われる男女脳の違いについて、その理由を探ってみたいと思います。

疑問1
男性は1つのことに集中するのに、女性は複数のことを同時にこなせるのはなぜ？

解説
これは、男女で左脳と右脳の神経結合が違うからです。米国フィラデルフィアの研究チームが、8~22才までの男女900名の脳をスキャンし、神経結合を比べました。すると、女性の方がはるかに強く左脳と右脳が連携する頻度が高く、左右両方使うことにたけていることが判明しました。ちなみに左脳は言葉を使ったり、分析するときに使われ、右脳は空間や感情を扱うときに使います。脳内の異なる領域を結合できれば、いくつかの作業を同時に進められるのです。

疑問2
男性は決断が早く、女性はああでもないこうでもないと迷いがちなのはなぜ？

解説
左右の脳を同時に使うのが苦手な男性ですが、その代わりと言っては何ですけれど、男性の神経経路は前後の結合が強いのです。脳の後ろの部分は情報を処理し前に送り、前ではその情報を集約してどう対応するか決めます。つまり、男性は情報を集め、分析し、自分の考えを行動に移すのが得意なのです。もちろん、決断が苦手な男性や決断が早い女性もいますけれどね。

疑問3
どうして洋の東西問わず男の子は車が好きで、女の子は人形遊びが好きなの？

解説
固定観念にとらわれない結果を得るために、2002年にサルを使った実験が行われました。結果、オスのサルはトラックや車のおもちゃを好み、メスのサルは人形のおもちゃを好みました。これは、胎児の時に、子宮内の「テストステロン」というホルモンの濃度が高ければ高いほど男性脳に近付くためです。子宮内のテストステロンの濃度が高ければ高いほど、社会性の発達が遅いので、男の子は人形ごっこやおままごとなどに興味がなくなります。その代わり、分解して遊んだりする「システムを分析したい本能」が出て来る訳です。

疑問4
男性は理数系、女性は文系が得意なのも脳のせい？

解説
実は、13才未満の子供の脳に、教科の得手不得手の違いは全く見られません。男の子で国語が得意な子も、女の子で算数が得意な子もたくさん見受けられるのです。でも、だんだん「博士＝男性」といったイメージや諸々の社会的影響を受け始めると、この経験が脳の特性を変えます。これは「自己成就預言(じこしょうじゅうよげん)」と呼ばれるものです。これは男女間だけでなく、人種に対する思い込みにも現れます。例えば、スタンフォード大学の白人の男子学生に「数学は、どの民族もアジア人には適わない」と告げると、白人男子学生の成績が大きく低下することが分かっています。これは、色々な「期待」には「ステレオタイプ(固定観念・思い込み)」が、無意識にせよ悪影響を及ぼしてしまうためです。

いかがでしたでしょうか？　男女の脳は生まれつきホルモンの影響で違いが生じる部分もあれば、神経経路の結合が違っていたり、更には自分の思い込みが影響している部分もあるのですね。脳の特性の違いを知ることが、異性を理解する一歩になるのかもしれません。

参照：英BBCドキュメンタリー “Is your brain male or female”
『「期待」の科学』クリス・バーディック 阪急コミュニケーションズ

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