前回「不眠の本当の原因」で、かつて誰かに言われ、そして今ではセルフイメージとして信じ込んでしまったあなた自身の「自分は間違っている」「今の自分ではダメだ」という囁きが常に聞こえていることが不眠の原因であるとご説明しました。
精神的な原因で長引く不眠は、何をしても否定されるのではないかという恐れから生まれる緊張状態を緩めてリラックスする、眠る、ということができなくなってしまったせいなのです。
今回は、不眠を続けるメリット、不眠によって身体(魂)が実現したいこと、そして薬や道具を使わずに不眠を改善する方法についてお話いたします。
【不眠のメリット】
考え事をしながら歯を磨いていたら、知らぬ間に20分以上経っていた。というような経験があると思います。
こんな時は、過去の後悔や未来の不安、起きていない問題への処理などを思って歯に注意を向けていない。
つまり「全く今を生きることが出来ていない」時です。
家事や仕事をしていても同じ。
機械的にお皿を洗いながら、まだAさんにお礼のメールをしていなかったな、そういえばこの前Aさんに会った時にどうしてすぐにあの事を言わなかったのだろう、もし言っていたとしたら、Aさんはこう答えただろうし、それについてこう言っておけば……と理想のシナリオを妄想することに一生懸命になり、皿洗いはいつの間にか終了しているのではないでしょうか?
もっとも無防備な睡眠という行為は、昼間に莫大なエネルギーを消費する器官、脳を最大限に活用する「覚醒」を支えるための身体活動の休止であると言われています。
つまり、寝なければ必然的に覚醒という興奮状態を持続し続けることになり、不眠が長引けば、エネルギー不足で十分な覚醒状態でいられなくなるため常に朦朧(もうろう)と過ごすことになってしまうのです。
実は、不眠は現実を否定したい人にとっては「現実(今)を明らかに見ないで済む」というメリット、そして24時間興奮状態が続くことで生命を危険にさらしたくない身体(魂)にとっても、脳を働かせないことで「べき」「ねばならない」思考を外す状態を作ることが出来るというメリットがあるのです。
【今、大丈夫だと確認できれば眠ることが出来る】
誰も監視していない布団の中でも、眠れない人は襲われる危険に怯え、意識を過去や未来に飛ばし、眠らなければという強迫観念に追われ、興奮状態が収まらないままでいます。
これが眠れない条件ですから、逆のこと、つまり安心して意識を今に集中し、眠らなければというこだわりを捨てれば眠ることができます。
難しいと思われるかもしれませんが、大丈夫。
今まで無条件に信じてきた事を覆すのですから練習は必要ですが、思ったより早く慣れることが出来ると思います。
布団に入ったらまず、眠ることより今の自分の状態に意識を集中します。
頭の角度は? 顔の筋肉は緩んでいる? 手は冷たい?
これで良いのかな? と正解が欲しくなったら、スマホで探そうとせずに、自分が心地良い位置を見つける事に集中します。
首は辛くない? 肩は凝っている?
治すことではなく、どんな状態かを感じます。
理由や原因も探さないで。
胸、心臓の鼓動、呼吸、お腹、腿、ふくらはぎ、足首。
今の自分の状態を感じてください。
明日の予定や、片付いていない用事を思い出したら、何度でも今の身体の状態に意識を戻します。
初めのうちは、何十回も戻さなければならなくなりますが、慣れてくれば集中できるようになります。
たった今、あなたを否定する人は居ますか? あなたを襲うライオンや災害が迫っていますか?
昼間や昨日や明日のことではありません。
明日ライオンが襲ってくるとしても、たった今は安心である事を確認してください。
布団の中は温かく、大の字になっても襲われないし批判する人もいません。
安心な状態です。
大丈夫だという事が確認できたら、ゆっくりと上下する胸やお腹の動きと温かさだけを感じて下さい。
気が散りそうになったら、何度でも何度でも戻って集中して下さい。
温かさと身体の状態にだけ集中出来たら、いつの間にか眠りに落ちているはずです。
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