アルツハイマー型認知症は、ドイツの精神医学者アロイス・アルツハイマーが、嫉妬妄想、記憶力の低下などにお悩みの患者さんを診察し、その症状を1906年ドイツの精神医学会で発表することによって広く世界に知られるようになった病気です。
脳が次第に萎縮し、症状が進行するとともに、記憶力の低下や被害妄想、徘徊などを引き起こすアルツハイマー型認知症は、今後、高齢化が進む日本が真剣に向かい合わなければいけない病のひとつです。
脳はたくさんの神経細胞からできていますが、神経細胞内には軸索という神経細胞の興奮を他の神経細胞や筋細胞などに伝えるための細い突起部分があります。軸索内ではタンパク合成などは行われず、必要なものは核の存在する細胞体からの輸送に依存しています。
このしくみは軸索輸送と呼ばれ、エネルギーを作り出すミトコンドリアという細胞小器官も軸索輸送によって運ばれ、軸索内でのエネルギーの供給を行っています。軸索輸送は貨物列車のようなしくみで、物質を運ぶためには微小管というレールの役割をするものを必要とします。
微小管は直径25 nm(ナノメートル)の中空状の繊維で、いくつも連なることによってレールとしての機能を果たしていますが、微小管が連結する上で大切な働きをしているのがタウタンパク質です。
通常、タウタンパク質が必要に応じて微小管を連結したり、切り離したりすることによって円滑な軸索輸送が行われているのですが、アルツハイマー型認知症に罹患した脳では、このしくみがうまく働かず、タウタンパク質の異常凝集が生じます。
このようにタウタンパク質の異常凝集が原因となる疾患を総称してタウオパチーと呼びますが、現在のところアルツハイマー型認知症もタウオパチーの一種であると考えられています。
アルツハイマー型認知症の特徴のひとつとして神経原線維変化と呼ばれるものがあります。
前述したようにタウタンパク質は微小管を連結する作用を持ちますが、リン酸化されることによって結合する力を失い、微小管から分離してタウタンパク質同士の結合(異常凝集)が生じ、神経原線維変化が起きると考えられています。
神経原線維変化が起きると、レールの役割をする微小管の連結が崩壊し、ミトコンドリアの輸送にも障害が生じるため、エネルギー供給が不足し、やがては細胞死に至ります。
これによって記憶力の低下や被害妄想、徘徊などといった症状が引き起こされるのではないかと考えられます。
現在のところ予防法・治療法が確立されていないといわれるアルツハイマー型認知症に対して、非常に高い有効性を示す物質として注目を集めているのがノビレチンです。
ノビレチンの有効性を示す実験は数多く報告されていますが、その中のひとつにノビレチンがタウタンパク質に与える影響を調べた実験があります。
この実験では生後5~7ヶ月のSAMP8という老化促進マウスが使用されました。
一般に、アルツハイマー型認知症に罹患した脳では、タウタンパク質のSer202部位とThr231部位でのリン酸化が見られますが、実験前には、この老化促進マウスの海馬(記憶に大きな関係を持つ脳)のSer202部位とThr231部位でも、タウタンパク質のリン酸化レベルが上昇していることが確認されています。
そこで、このマウスにノビレチンを使用したところ、これらの部位で明らかにタウタンパク質のリン酸化が減少したことが確認されたといいます。
ノビレチンは、漢方薬のチンピやアロマオイルのマンダリンに豊富に含有しているといわれる成分です。
私たちのサロンでは、重度のアルツハイマー型認知症と診断されたお客様がチンピやマンダリンを使用した漢方薬アロマタッチを行うことによって、日常生活が可能なレベルにまで回復された経験を持ちます。はじめは歩くこともままならず、お二人に抱えられて来店されたのですが、3回目で自立歩行が可能となり、やがてテレビドラマのストーリーの理解と記憶ができるようになり、さらに日常会話などもごく普通に交わすことができるようになりました。
最終的には、パソコンのワープロソフトを使って当店宛の手紙をお書きいただけるほどの回復を見せ、私たちを驚かせてくれました。
このような私たちの実体験やさまざまな実験に照らし合わせて考えてみると、ノビレチンはアルツハイマー型認知症に対して、飛躍的な回復が期待できる有効な物質のひとつといえるのではないでしょうか?