「たかが歯」なんて言えなくなる!? 歯とカラダの深い関係その④ 数ミクロンのズレが全身に影響!

身体の歪みにより腰痛やひざ痛などの症状に悩まされていた女性。その原因はなんと歯にあったのです。噛み合わせを良くしただけで、思わぬ効果が現れるのでした!

ほんの数ミリ、数ミクロンの狂いで、身体は笑ったり悲鳴をあげたりする……。歯はそれほど人間の身体と密接に関係しているんです。今回は自分ではその原因にたどり着く事が難しい「噛み合わせ不調」から脱却する鍵をお教えします。

噛み合わせが崩れてしまう原因
虫歯
虫歯を治療した際の詰め物やかぶせ物の形が合わない、抜歯したままの放置で噛み合わせが崩れてしまう等。
食事の片噛み

食事をするとき、片方の歯でばかり噛んでいると顎の発達に差が出て、噛み合わせが狂ってしまう症状が!
生活習慣

いつも頬杖をつく、口を開けっ放しにしているなど、生活習慣の悪い癖が原因にあげられます。
歯周病
歯を支えている歯茎やその下の歯槽骨などが炎症を起こす病気。歯がぐらついたり、動きやすくなるといった症状がでてきます。

歯が持つ咀嚼以外の重要な役割

スクリーンショット 2015-02-10 16.25.35歯を食いしばるという言葉をよく耳にしませんか?私たちは、何か力の入る仕事や辛さに耐えるとき、歯をグッと噛みしめます。実はこの時、歯にかかっている圧力は自分の体重と同じくらいなんです。スポーツ選手はこの食い縛る回数が私たちに比べて断然に多いため、歯が短期間でもボロボロになってしまうそうなんです。大リーガーなどがガムを噛んでいるのは、歯や顎にかかるストレスを和らげるためだとか。私たちが普段生活していく上で、そこまで歯を食い縛る機会は少ないからかもしれません。しかし、例えば普段私たちは手で開かないものを、歯を使って開けようとしたりすることもありますよね?また、硬いおせんべいなど手ではなかなか砕けないものが、口の中に入れてしまえば子どもだって用意に砕くこともできてしまいます。このことからも「噛む」という行為にどれだけの力が加わり私たちが私たちが歯を食い縛ることで身体と心の力を引き出しているのかも分かります。そして、そのために必要なのが健康な歯と正しい噛み合わせ。こうした私たちの日常生活が、顎や歯にストレスをかけて、本来の正しい位置から少しずつ狂いが生じてしまうのです。

噛み合わせが全身に与える影響

噛み合わせが狂うもう一つの大きな要因が虫歯本来の噛み合わせは上下の歯がきちんと接触し、同時にぶつかるのが正しい位置。しかし、例えば虫歯で下の一本の歯を抜いただけでも、この歯に対応する上の歯は下に歯が無いためにそれをカバーしようと下へ伸びてしまいます。そして、抜歯して空洞になった部分の隣の歯が傾き始めるという悲劇が! それは、小さな虫歯を削って少し詰め物をしただけでも、正しい処置でなければそこを支点として不具合を調整しようと様々な現象がおきます。顎も噛み合わせを正常に行うためにズレていくんです。例えば、右ひざを痛めて、それをかばうために左ばかり使っていたことで左まで痛み始めてしまったということと同じ。そうなれば、頭蓋骨頚椎に影響を与えて歪みを生じさせ、全身の骨格・筋肉へと広がっていきます。また、噛み合わせに不具合があると、それを自分では認識できていなくても、咀嚼がうまく機能しないので、唾液の分泌が抑えられます。すると、口のなかで食べ物を適切な段階にまで消化することができず、内臓にも負担をかけたり、唾液による口腔内の殺菌作用が弱まるので虫歯にもなりやすくなります。また、噛む」行為は人間の動作の中でも重要な動きの一つ。脳への刺激が行き届かなくなる上に、狂った噛み合わせが続くことによる間違った刺激は神経系に悪影響を与えてしまうことも十分に考えられるんです。

噛み合わせ調整で歪みが整った
左右のの高さが大きく違う女性。身体の歪みにより、腰痛やひざ痛などの症状に悩まされていました。それを少しずつ削る噛み合わせの調整を2週間ほど続けた際の写真が右。削る量はほんの数ミクロンというわずかなもの……にもかかわらず、これだけひどかった歪みがたった2週間で解消し、悩まされていた症状が改善されたのです。歯の当たる位置がほんの少し違うだけで、身体はかなりのストレスを請け負うことになります。
歯の歪み

 

噛み合わせを治す矯正措置

いくら歯が微力で動くものだといっても、自分で正しい位置に戻すことは不可能に近いといえます。そこで、頼るのが矯正措置! 少し前まで、矯正は子どもがするものというイメージが強かったはず。しかし、今は大人でも歯列矯正に取り組む人が殖えているんです。矯正器具として一般的なのは「ブラケット」と呼ばれるもの。気になる治療費も、自由診療なので患者の状態や医師の考え方によって大幅に異なるが、検査・装着・通院などトータルで何十万円とかかるそう……気になる矯正期間は矯正の複雑さにもよるが少なくとも2年くらいは必要。目立たない素材を着けたいなら費用はさらに高くなります。食事や歯磨きに人一倍注意をしなければいけないなどもあるので、始める時には覚悟が必要かもしれません。「続けられる自身が無い」という人には、取り外し可能な床矯正がオススメ! 入れ歯のように土台があり、そこにワイヤーがついていて、移動が必要な一本一本の歯に引っかけて矯正していくという方法なんです。調整もその都度でき、治療費も軽症のものなら10万くらいから始めることができます。取り外しが可能なので始めるには気が楽だが、食事の後に面倒だから着けないなど患者が治療を怠るとその分期間は延びていきます。自己管理が問われるというわけです。
本当に正しい噛み合わせとは、歯並びがキレイな状態ではなく正しい身体を保つという役割をもったもの……ほんの数ミクロン歯の当たる位置がズレるだけでも、いろいろな不具合が起きてしまいます。「今のところ異常はないから」と安心せずに、一度しっかりと診てもらっては如何でしょうか。

矯正の種類
ブラケット
スクリーンショット 2015-02-10 16.24.20一つの歯に金属を接着しワイヤーでつなぐ矯正法。メタルが一般的だが、セラミックなども使用します。さらに歯の裏側にブラケットをつけるリンガル矯正もあるが、装置が舌に当たって痛いなどの欠点もあります。
床矯正

床矯正歯がきちんと並ばないのは顎の広さが足りないということで、入れ歯のような土台で顎を広げながら歯を移動させていく方法。装置にはネジがついていて、状態をみながら調整できます。
スプリント

マウスピースのようなもので、上の歯にはめて噛み合わせの位置を調整していくもの。寝る時にいびき予防などにつけるスリープスプリントもあり。

 

TRINITY 18号[女の歯学]より

藤井先生

■Special thanks:藤井佳朗先生
新神戸歯科院長。歯が全身に与える影響を追及している。
Oリング治療の第一人者。