何を求めて自らを極限状態へと追い込むのか? 荒行の秘密

戦後「70年あまりで13人しか達成していない」という、「比叡山延暦寺」の荒行。挑戦する僧侶は、いくつもの「死の準備をして挑んでいる」のをご存じでしょうか?

戦後「70年あまりで13人しか達成していない」という、「比叡山延暦寺」の荒行。挑戦する僧侶は、いくつもの「死の準備をして挑んでいる」のをご存じでしょうか?

 

【8年ぶりの荒行達成者】

10月21日、天台宗の総本山である「比叡山延暦寺」に古くから伝わる荒行である「千日回峰行」の達成者が誕生しました。

戦後の「70年あまりで13人しか達成していない」という、最高難易度の荒行であり、今回は8年ぶりの達成となりました。

 

【9日間飲まず食わずで行う命がけの修行】

この修行は「7年間かけて、4万キロを歩きながら礼拝をする」というものであり、最後には、9日間「食事はもちろん、水さえ飲まずに、不眠不休でひたすら真言を唱え続ける」という「堂入り」が行われます。

人間は水さえ飲んでいれば1週間以上生存可能ですが、その水すら飲まずに9日間過ごすというのは、まさに命がけの修行であり、この段階での「達成率は5割程度」といわれています。

4万キロを歩くというと、桁が違って想像しにくいと思いますが、比叡山が雪に閉ざされていない5月から9月の間、「毎日往復40キロ近くある山道を歩き続ける」ことになります。簡単にいうと、「毎日山を使ったマラソンをしている」ようなものです。

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【途中棄権は許されない】

マラソンと違うのは、「一度行をはじめたからには、やめることができない」ということ。スポーツは体調や怪我で棄権することが可能ですが、行には棄権は存在しません。

もし、そんな状態になってしまったならば、どうするのか? その場合は「自らの命を絶つ」という暗黙のルールがあるのだそうです。

動けなくなり、行が出来なくなるようだったら、命を絶つ。そのために、常に「懐に小刀を収めて行を行う」わけです。とはいえ人間ですから、自らを刃物で刺すのが怖くなることもあるでしょうし、なんらかのアクシデントで手が使えないこともあるかもしれません。

そんなときには腰に巻いた「死出紐」という、紐をほどいて「首を吊る」のです。それすらも出来ないぐらい体力が所望している場合には、自らの顔に布を載せて、そのまま死を迎えるとされています。

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つまり、いくつもの「死の準備をして挑んでいる」わけです。