苦の始まりは無明から/中道を行こう!~梵字画家と歩く仏教小径

中道とは、八つの正しい道によって得られる。その八つとは……。

【苦の始まりは無明から】

前回、苦の始まりは無明からというお話をしました。

私たちはなぜ苦しむの? 因縁と諸行無常 https://www.el-aura.com/nozakimiho20171010/?mode=all

すべてのものの実相というのは、原因である因と、条件である縁とが作用しあって現象として現れるもので、それらは関係性の中で生起し、消滅することを繰り返しているということを『諸行無常』といい、この『因縁(いんねん)=諸行無常(しょぎょうむじょう)』という真理を知ろうとしない、受け取ろうとしない心の闇を『無明(むみょう)』といい、それが苦しみの始まりなのだとブッダは説きます。

無明、これはまじでやばいです。

自分が無明であるかどうか、もしくはその人が無明であるかどうかの見分け方は、登場人物、場面、シチュエーションが違えども、毎回毎回おんなじ課題で悩み、苦しんでいるかどうか。
「こういう相手、必ず自分の人生に登場してくるよなぁ」とか「このシチュエーション、けっこうあるよなぁ」ということに遭遇しているあなた! 無明であることを選択し続けています。

誰に何回相談を持ちかけようとも、
どこの病院に行こうとも、
どんなにヒーリングに通おうとも、
目の前にあるメッセージを受け取らないまま、自身の行動を変えずにいることは、無限ループの中にいることを選び続けていることに他ならないのです。
同じような課題が、年々難易度も高く解決困難になってきているのだとしたら、届き続けているメッセージを自分が無視しているということ。

「光の中にいるのに、自分が目をつむったままでいるから暗闇にいると勘違いしている」のが無明。
目を開ければ、安らぎはそこにある。
そういうことなんです。

では、目を開けるにはどうしたらいいか。
「はいブッダ~。プリーズ答え、お願いします!」

 

【無明であることに気づくには】

「無明の人にはひたすら縁起性(えんぎせい)を説くべし。説くべし説くべし!」

なるほど。
ブッダは、そうし続けた人でした。縁起性とは、因縁のしくみのことであり、因縁とは『因縁=諸行無常』のこと。彼の人生は説法の旅でした。

が、無明の人は無明なだけに、まったくなんにも受け取ろうとしません。頑強に、無明であり続けようとします。
そんな時、目に見える奇蹟を信じる人には、ブッダは神通力を見せました。心の闇は見ようと思わなければ見えないけれど、目に見える奇蹟はわかり易く説得力がある。
また、無明に気づいた自分たち自身が苦しみから解放されていくことを徹底的にし続けました。その、苦しみから解放された姿そのものが何よりの証となったのです。

さて、無明に気づいたのちにはどうすればいいのか。その答えが『中道(ちゅうどう)』『八正道(はっしょうどう)』です。

 

【中道】

中道は、極端な考え方ややり方をしない、ということ。快楽におぼれ、欲望のままに生きる=無明はもちろんの論外ですが、それと反対に、せっせせっせと苦行に励むのは、無明と同様に執着を生む原因となると、ブッダは説きます。

「こんなに苦労したんだからきっといつかしあわせになるはず」とか「これだけストイックに苦行をしているんだから、自分はきっと解脱(げだつ)できる!」とか「苦しみの先にきっと成功がある!」とか。これまさに執着から貪欲へのコース。苦行は何も修行僧に限ったことではなく、普段の生活において苦しみを抱き続けるままにいることも、苦行のひとつであるといえます。

欲望のままに生きること、苦行をし続けること、そのどちらでもない「中道」をいきましょうよ、ということをブッダは説いているのです。

 

【八正道】

そしてこの中道とは、八つの正しい道によって得られる。その八つとは、「正見(しょうけん)、正思惟(しょうしゆい)、正語(しょうご)、正業(しょうぎょう)、正命(しょうみょう)、正精進(しょうしょうじん)、正念(しょうねん)、正定(しょうじょう)」。文字だけ目にすると、なんか超品行方正な暮らしをすることを望まれているような感覚に陥りそうですが、そういうことではありません。だって、無理に品行方正にすることは、苦行になってしまうから(笑)

この八正道を遂行しきれた時にすべての苦しみが完全に無くなり苦から解放される、というわけではなくて、中道を得ようと八正道を常に心がけ実践している歩みの途上で、苦しみがひとつひとつ消えていくのだということ。八正道を実践することそのものが、苦から解放されるプロセスなのだということです。

ブッダが目覚めた人「ブッダ」になるまでの人生も、まさに、苦からの解放のプロセスでした。

次回、八正道のひとつひとつを丁寧に見ていきます。

 

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