淋しさと愚かさと…… ~心の中に哀れなコールガールはいませんか?~

— 幽霊に愛された女性 —

昔々の実話だそうです。

ある国に不思議な力を持つ人がいました。

その人を「彼」とします。

彼が窓の外を眺めていると、一台のロールスロイスが入ってきました。

運転手が降りてきてドアを開けると、優雅に盛装した貴婦人が現れ、ドアベルを鳴らしました。

家には彼しかいなかったので、彼がドアを開けました。

婦人は自己紹介し、「私と私的な話ができるでしょうか?」と彼に尋ねました。

緊急を要する事柄のようだったので、彼は彼女を招き入れました。

彼女は単刀直入に、自分は大成功した高級コールガールだと打ち明けました。

彼女は最高の社会的立場にある人々—貴族、政治家、実業家など何百名もの男性と性的交渉を持ち、巨万の富をつくっていたのです。

半年前

彼女が誰よりも愛していた愛人中の愛人が死亡しました。

すべてのことを事実そのまま、大変冷静に彼女は話しました。

ある夕方、彼女は家の暖炉の前に一人で座っていました。

焔を見つめながら、軽い気持ちで前の恋人の霊魂を心の中で呼びだそうとしました。

すると

驚いたことに幽霊が以前の恋人の形で火の中から姿を現したのです。

彼女はその幽霊とセックスをしたと語りました。

そのことは彼女をすっかり興奮させ楽しませました。

次の夜からも同じことが起きました。

しかし、そういうことが起きるのは彼女が一人だけの時でした。

同じ状態が何ヶ月も続きました。

ところが幽霊はだんだん強力になり、彼女を支配しはじめたのです。

その幽霊の欲望は日増しに強くなり、次に会う時間までも正確に命令するようになったのです。

彼女は幽霊にとりつかれ、それは彼女の日常にも影響しだしました。

彼女はすべてのことがらを終わらせようとしましたが、良い方法が見つかりません。

彼女はこのことを心理学者や司祭やその他のプロには相談したくなかったので、以前から噂で知っていた彼の元を訪ねてきたのでした。

なので、彼女がこの話をしたのは彼だけでした。

彼女は明らかに深い苦痛に打ちひしがれて、この話をした時、目には涙でいっぱいでした。

彼は彼女が正確に自分のいうことを守るという条件で彼女を助けることに同意しました。

彼女はもちろん約束します。

 

— 霊から解放された女性 —

その条件は彼女のはめている指輪のひとつを外して三日後に返すまでここに置いていくこと

その三日間はセックスをしないこと

夜間は幽霊が彼女に近づけないように一人で家の中にいないことでした。

その約束をして彼女は帰っていきました。

彼は彼女のダイヤの指輪を暖炉のマントルピースにのせました。

指輪は三日間そこに置かれ、彼はそれに触れもしませんでした。

三日後、彼女はロールスロイスでやってきました。

彼は指輪を返し、それをずっとはめてるように言い、今まで通りの生活をはじめて、何が起こるか見てご覧なさいと言いました。

一週間後、彼女は彼を訪れました。

すっかり喜んでいた彼女

幽霊は追い払われ、夜たった一人で火の前にいるときですら、幽霊は姿を現さなくなりました。

もう絶対に訪れてくることはなくなったように見えました。

彼女は深く感謝しました。

 

— その後、女性は —

数ヵ月後、彼はレストランで食事をしていました。

すると彼女が友達と別のテーブルについていました。

彼女は彼を見て、遠くから挨拶をしました。

彼がちょっとの間、一人になったとき、彼女は急いでやってきて、重大なことを話したいと言いました。

彼の時間をわずらわせるのをひどく謝りながら、この前ひどい目にあっている時に助けてもらったお礼を繰り返したあと、彼女はこう言いました。

その後、時間が経つにつれ、すっかり毎日が空虚で淋しくなってしまい、一ヶ月ほど前にまた戯れに幽霊を呼び出したと……

そして今はすっかり元の黙阿弥になってしまっているんだと……。

 

— 人の心 —

これを読んで皆さんはきっと

怒り、疑念、不信さからおかしさなどを感じられたかと思います。

彼は不思議な力を持っていたかもしれませんが、何もしていません。

すべては彼女の心が起こしたこと

けど、もし自分が苦しみの中にいたら、誰かにすがり、できれば魔法で、自分では何の努力もせず、スルリとそこから脱したい……とは思っていませんか?

少しでもそう思うなら……

決してこのコールガールのようにはならないとは言えないのでしょう。

自分の心は自分で扱い、それをしっかり見なければ結局おなじことを繰り返す。

まるで、薬物やアルコール中毒患者になってしまったかのように……

さて……

それから彼女はどうなったのでしょうね。

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